【エッジクラウドとは?】ITインフラは集約と分散の歴史
AWSがエッジクラウドのロードマップを発表
同社が発表したプレスリリース「AWS Announces Global Expansion of AWS Local Zones」で、構築が完了した米国内の16のAWS Local Zonesの成功を受けて、今後2年間のあいだに新規に全世界に32カ所のAWS Local Zonesを構築することを明らかにしました。
エッジクラウドとは?なぜ必要?
そもそもエッジクラウドとは、これまで大規模データセンターに集約されていたクラウドインフラを、中小規模のデータセンターに地理的に分散させるという考え方です。
エッジクラウドが必要な理由は、上記プレスリリースでも触れられているとおり、レイテンシを低減するためです。(レイテンシは遅延とも呼ばれ、ITインフラの性能を示す重要な指標です)
なぜ従来の大規模データセンターで構築されたインフラではレイテンシの増加に対応できないのでしょうか?
理由としてはIoTが進むことによるデバイスの増加とそれに伴うトラフィックの増加にあります。
下図は総務省が発表する情報通信白書より抜粋した世界のIoTデバイス数の推移と推計です。毎年10%程度の増加率で増え続け、2023年には340億台に達する想定です。特にコンシューマー(家庭用)のデバイスが全体の30%を占めており、一家に数個のIoTデバイスが存在していることが全く珍しくないことを示しています。
日本全国のあらゆるデバイスがデータセンターとのやり取りを実行する状況はもう始まっており、処理を分散させパフォーマンス低下を防ぐために今後日本でもエッジクラウドが構築されるでしょう。
ITインフラの集約と分散の歴史
ITインフラの分散はこれが初めてではなく、これまで何度か集約と分散を繰り返しています。
1960年代頃(集約)
この頃ITインフラはメインフレームなどと呼ばれており、特定の研究機関や大企業にしか存在しない非常に高価なもので、全ての処理を一台で処理していました。
1970年代から1990年代頃(分散)
徐々にパソコンが普及・高機能化するにつれ、これまでサーバが集約して処理していた作業をパソコンが処理する様になり、一部の処理をパソコン(クライアント)から要求があった時のみサーバで処理するというクライアントサーバモデル、いわゆるクラサバの時代となりました。
1990年代後半から2000年代頃(集約と仮想化)
インターネットの普及に伴い、物理サーバ台数が増加しました。サーバは大規模データセンターで管理されるようになり、集中管理を高度化するための仮想化技術も広く利用されるようになりました。
2010年代頃(さらなる集約とクラウド化)
クラウドコンピューティングが普及し、ITインフラはクラウドサービス事業者に集約され、それ以外の企業や個人はITインフラを意識することなく、IaaSやSaaSと行った形で機能のみを利用する形が一般的となりました。
2020年代(分散?)
2010年代から急進していたIoTやAIが一般化しつつあります。エッジデバイスは急増し、それに伴いクラウドは大規模データセンターで集中処理するモデルから、分散処理するエッジクラウドへと変遷していくとみられます。
最後に
これから数年のトレンドは『分散』となりそうですが、10年後にはどうなっているのでしょうか?
私の予想としては、今後スマホは高機能化が収まり、処理は集約化されて手元のデバイスは処理結果のみ表示されるゼロクライアントに近づくと想定しています!