「汚い言葉」へのアンチテーゼ
私はこれまで何度か、朝、布団から出られなくなった経験があります。
目が覚めて、今すぐ起き上がって会社に行く準備をしなければいけない時間なのに、あーだこーだ考えてると、怖くなってなかなか身体を起こせない。
そんな経験が何度かありました。
会社に体調不良で休む連絡を入れ、少し時間が経った後、カップラーメンを食べて、DVD・ドラマを見て、夕方になって、お風呂に入って、さて、そろそろ寝るかな?
…いや、何してるんだろう、俺。
上司や同僚からの心配メールにも適当に返信して…さて、寝るか。
いや、全然寝れないな…何してるんだろう、俺。
今考えれば、もしかしたら鬱の症状だったのかもしれませんね。
私が布団から出られなくなってしまったその理由は、決まってその前日に「汚い言葉」を浴びたからということでした。
今でこそ、パワハラとかモラハラとかいう言葉ができて、怒鳴るとか人格否定をする言葉などは、厳しく罰せられるようになったのですが、とにかくそういったものと出会ってしまうと、すぐ調子が悪くなっちゃうんですね。
これ仮病とかじゃなくって、ほんとに熱とか出ちゃうんです。
本当に素直で困った身体だなと思いますが、その汚い言葉は自分に浴びせられた場合でも、自分の仲間に浴びせられた場合でも一緒。
決まって発熱してしまうのでした。
そしてその汚い言葉というものは、怒鳴るとか勢い付きの場合もあれば、とてもスローに発せられる時もある。
そんなシーンを自宅で思い出しては、私の感情はゆくゆく怒りへと変わっていくのです。
おそらくですけど、その怒りが、熱を自家発電して、体調が悪くなっていくという仕組みだったのではないかと考えています。
全然根拠はないですが。
「なんでこうなっちゃうの?」
この言葉は私が以前勤めていたスープストックトーキョーの創業者、遠山さんの言葉です。
あらゆる社会のおかしいなと思うことに、「なんでこうなっちゃうの?」と問い、それを解決する事業をスープストックトーキョー以外にもたくさん生み出されました。
まさに私も、「なんで言葉で人を傷つけちゃうの?それは育成でもなんでもない、ただの言葉の暴力だよ。」そんな疑問と戦っていました。
そしてその疑問が、まさにアンチテーゼとなっていくのです。
スープストックトーキョーを退職後、私は株式会社良品計画に入社しました。
無印良品を運営している会社です。
無印良品の始まりは、バブル期のブランドに対する消費が繰り返されることへの違和感から生まれました。
消費社会へのアンチテーゼと謳っていますが、私個人で考えると、提唱している「コトバドリブンメソッド」は、まさに汚い言葉へのアンチテーゼとなります。
汚い言葉をこの世からなくすことは難しいかもしれない。たぶん無理だと思う。
でも、そこから発電した熱を使って、自分や自分の大切な人だけでも前向きにワクワク生きていくことができればいいな。
そういった想いが「コトバドリブンメソッド」には詰まっています。
私はこれまで4社で仕事をしてきました。
その中でも特に、スープストックトーキョー・良品計画という会社は、怒りから始まった会社と言えます。
そんな会社で働くことで得た体験や、得ることができた気付きから独自のノウハウを詰め込んだ、言葉で心を前に引っ張る方法を見つけ出しました。
皆さんにとって少しでも意味のあるモノになれば本当に嬉しいです。
私自身、もともと人とコミュニケーションを取ることが好きだったし得意でした。
しかし、どの会社でも強烈で攻撃的な言葉を使う人に出くわしてしまった。
大体それが上司とかだったりするのですが、その強烈な言葉を使う方たちに傷つけられた経験があります。
もちろん色々な方に相談しながらですが、深く要因を考えてみた時に、別にその人自体が苦手なわけではなかった。
その人が放つ言葉に拒否反応を起こしているのだと気付いたのです。
思考、コミュニケーション、どちらも「言葉」を主に置いて行われるものです。
自分の使う言葉を大事に丁寧に扱う人を増やすことで、言葉による攻撃を少しでも減らしていきたい。
人間の身体は、自身が食べたもので形成されています。
脂っこいものばかりを食べていれば、もちろん太るし、次の日は顔の油がとんでもないことになる。
分かりやすいですよね。
そして、人間の思考は自身の使った言葉で形成されていくのです。
でもこれは分かりにくい。
見た目で測ることはできない。
自分の発した言葉は自分の耳に戻ってきて海馬さんに蓄積される。
それを基に思考が進んでいくのですが、それは目に見えないから分かりづらいんです。
だから年齢を重ねても汚い言葉を使ってしまうオッサンがたくさんいるのです。
自分がそんなオッサンにならないように、そしてそんなオッサンと縁を切って素敵な人生を歩むために、自分から放たれる言葉は汚くはないか、一度確認をしてみましょう。