革靴:ラバーソールか、ハーフラバーか、トゥスチールか
ラバーソールか、レザーソールか
初めて自分で購入した革靴は、ラバーソールのREGAL 2504NA。大学時代はMEN'S CLUBを愛読し、トラッドに心酔。紺無地、3つボタン段返りのJ.PRESSのサックスーツに白のレギュラーカラーとレジメンタルタイを合わせ、黒の外羽根式プレーントゥを履いて就職活動に臨んだのでした。
20代の終わりになって、レザーソールを履いてみたくなり、何足か買ったものの、やはり雨を気にするのが億劫で、それからはほとんどラバーソールを履いていました。多くはメーカーのオリジナルですが、ときどきダイナイトソールやリッジウェイソールもありました。ラバーソールはやはり楽です。
レザーソールとの付き合い方
40代も半ばになった頃、もう一度、レザーソールを履こうと思い立ち、あまり登板機会もなく眠っていたレザーソールを再度先発組に復帰させることにしました。トップリフトの交換のために靴修理店に持ち込んだところ、ソールもそれなりに痛んでいるとのことで、ハーフラバーによる補修を勧められました。
せっかくのレザーソールにラバーを貼ることに抵抗を覚えていたものの、ヒール側の端を薄く梳いたり、コバの部分は目立たないように内側に面取りしたり、とても丁寧に仕上げてもらいました。レザーソールだと小さな水たまりも気になりますし、ましてや、公衆トイレはなるべく入りたくないと思うのですが、ハーフラバーしていればまだ耐えられます。これはイイ!ということで、それ以降に購入したレザーソールには、プレメンテ段階でハーフラバーをしていました。
しかし、50代半ばにもなり、手持ちの革靴を生きているうちに履き尽くせるのだろうか、もう革靴を買うのは辞めるべきだろうと思う一方で、自分の足で歩いていられるのも永遠ではないだろう、と思うようになり、無性にレザーソールをそのまま履きたくなりました。
ソールで真っ先に逝かれてしまうのはヒールですが、トップリフトは交換できるように作られているので問題ありません。その次はトゥで、こちらは厄介です。ハーフラバーをしても削れてしまい、追加のトゥラバーで補修してもらったこともあります。それがイヤで、最初からトゥがラバーで補強されたレザーソールを買うようにはしていますが、自分が気に入った革靴のソールが必ずしもそのようなソールであるとも限りません。
そんな時に買ってしまったのが、ソールに栃木レザーを使ったREGAL 01ELDD。もうハーフラバーはしないと決心したので、このまま削れるままに履くか、それともプレメンテで何らかの形でトゥの補強をするか。
横浜マイスター ハドソン靴店
思い悩んだ末に、未経験のトゥスチールをつけてみようと横浜の名工ハドソン靴店へ。思い悩んでいたときにYouTubeで見つけ、革靴に対して真摯な想いや丁寧な仕事に感銘したので、横浜マイスターである村上氏のお店にお願いすることに。
こちらが横浜市神奈川区にあるハドソン靴店。隣の酒屋もとても渋い店構え。栄えているとは言い難いが趣のある通り(商店街とまで言ってよいのか、迷うところ)に面しています。
グッドイヤーウェルテッド製法の革靴を履くとは
ハドソン靴店は修理内容のコンサルテーションが前提で、受付は予約制。店では、店主の村上氏が待ち構えて迎えてくださいます。超困難な修理のために全国から靴が持ち込まれる店に、たかがプレメンテのトゥスチールのために時間を取ってもらうのも心苦しいですが、ピンポイントにトゥスチールの話だけではなく、なぜトゥスチールなのか、他の補強とのメリデメも含めてじっくりと説明をしていただき、楽しい時間を過ごすことができました。
マイスターの話を正しく理解できたかどうかはわかりませんが、自分の今までの知識と合わせて、グッドイヤーウェルテッド製法の革靴を履くことに関しては、自分なりには次のように理解しました。
グッドイヤーウェルテッド製法は、使用とともに摩耗するソールを交換しやすいように工夫された製法。ウェルトとソールを頑丈に縫い合わせている糸を切ればソールを剥がして交換ができる。そのときに、アッパーやインソールに負担をかけることがない。すなわち、ソールは消耗品だが、アッパー、インソール、ウェルトは長く大切に使うもの。
道のアスファルト舗装が進み、レザーソールは削れやすい。ソールが摩耗して劣化すると交換(オールソール)が必要となるが、修理にかかる費用は決して安くはない。そのため、ソールが長持ちするように、ハーフラバーで保護したり、削れに強いラバーをソールに利用する。
足は一日でコップ一杯の汗をかく。その汗はインソールが吸収し、履き終わった後で発散する。レザーソールであれば(アウトソールがレザーであれば)、アウトソールからも水分を発散することができるが、ハーフラバーを貼っていたり、ラバーソールだとアウトソールからの発散ができす、インソールから水分が抜けづらいために、大切に守るべきインソールに負担をかけることになる。
トゥが削れが進行してしまう場合、大事なウェルトを保護するためにトゥをゴムで補修することも可能。ただし、ゴムに相応の厚みが必要なため、トゥでウェルトとソールを縫い合わせている大事な糸を切らざるを得ない。
インソールやウェルトを保護する上で、レザーソールのトゥスチールは有効ではあるが、歩くときに滑る、音がする、床を傷つけるなどのデメリットもある。ただし、トゥスチールを付けるときに糸を切らないことが前提。
あちらを立てると、こちらが立たない感じですね。いろいろとお話を伺って、理解、納得した上でトゥスチールの取り付けをお願いしました。
初めてのトゥースチール
こうして出来上がったハドソン靴店による私の初めてのトゥースチール。
ネジの頭がトゥスチールの接地面よりも沈んでいる、トゥスチールの接地面がソールの接地面よりも飛び出ている、などマニアックな話については、ハドソン靴店のYouTubeをご覧になるとわかります。さて、プレメンテして、ガシガシ履きましょう。