全部、ドラマ。
聞いた話や聞こえてくる話が面白くて、考えさせられて、共感も学びも多い一日があると、とても幸せだなと思う。
またそんなチャンスに出会うために、今日も外へ出てみようかなと。
人の話を聞くって難しい。特にお酒を沢山飲んでいるときには。
とにかく、どんな話を聞いたのか、自分がそれに対して何を話したか、忘れてしまう。
なのでなるべく私はテキストメモに残したり、話題にした内容をネット検索してSafariブラウザのタブやスクショ画像でiPhoneをいっぱいにしている。
翌朝、きちんとお会計を払っただろうか、ごちそうになったんだろうか、なんて財布を確認しながら思い出すわけだ。。
なんで愛したくて死にたくなるのか
アンティークに囲まれた喫茶店。
何やら隣のテーブルではミュージカルの打ち合わせをしているようで、つい聞き耳を立ててしまった。
演劇業界や作品作りのプロセスにあまり詳しくないのだが、どうやら原作となる小説の作家と、脚本家、劇中で使われる曲の作詞家… ミュージカルの全体のストーリーと”言葉”の演出をになう人達のようだ。
ミュージカルの題材は、アンドロイドと人間。
演出されたものでありながら、リアルな背景にあるストーリー、ドラマが必要だ。自分がミュージカルや演劇を見るときに、そのつながりが感じられない表現には違和感があると。
だから劇中に登場する主人公の母親のワンシーンにも、背景のドラマを持たせたいと作家は語る。
今の世の中は、ずいぶんと人間がコントロールできることが増えた。
「Hey, Siri」と話しかければ何でも検索してくれるし、「OK, Google」で家電の操作ができるようにもなった。きっとその幅はもっと広くなっていくだろう。
だけど人間はコントロールができない。
特に赤ちゃんは、まだ相互のコミュニケーションができないために、育てる人がくみ取っていかないといけない。
身の回りのコントロールできることに慣れてしまったから、それができない・伝わらない子育てに感じるストレスも大きくなってきているのだろう。
ネグレクト、育児放棄などのニュースが増えてきているのもそのせいなのかなと思いながら…
人間と触れ合ううちに、本当のところコントロールできない「感情」を持ちたいと思う、さらには愛するという感情に触れ、同じ時を過ごしたい「死にたい」と思うに至るアンドロイドとの対極も表現できたら、という話に
なんで愛したくなるんだろうな、
「なんで」ってなんで…
つい、思考停止してしまいそうになる自分がいた。
それが人間なんだよ、とアンティーク人形の声が聞こえた気がした。
生に想いが乗るから惹かれる
いい話を聞いたなぁ……
今夜はゆっくり白ワインを飲みたい気分だ。
そう決めて馴染みのBarに行くと、「ロマンスドール」という映画に出演されている女優さんと話す機会があった。
お互いその店の常連で、お会いすると”感性”や”ドラマ”の話で盛り上がる。またお酒が進みそうだ。
予告編をYouTubeで見て以来ずっと気になっていた映画だったので、彼女が出演しているのだったらと、観に行くことを決めた。
繊細に丁寧に描写された愛情表現は予告編だけでも胸がキュッとなる。
本当にいい現場、素敵な監督なんだと、いつも彼女は出演する度に話すので、きっと「引きがいい」んだなと勝手に思って期待をしている。(そしてその期待は大概当たってくる。)
(余談だが、ラブドールの胸を揉むピエール瀧さんの演技が秀逸なんだと彼女は嬉々と語っていた。笑)
映画って頻繁に観ることはないのだけど、いい作品に出合うとしばらく続けて何か観たくなるものだ。
最近観た映画の中で、彼女に勧めた映画「フォードvsフェラーリ」はよかった。
「フォードvsフェラーリ」というタイトルながら、「フォードvsフォード」とも言えるくらい、カーレースを取り巻く人間模様の描写が面白い。
たまたま週末の昼時の映画館だったこともありほぼ満席。最前列に座ることになったのだが、これがよかった。地面スレスレの画角で撮られたレースシーンではまるで自分も運転しているような感覚にさせられて興奮した。
1人だけ、メインドライバーの奥さんが女性キャストとしてフォーカスされるのだが、彼女が本当にいい差し色となって、この映画がよりヒューマンストーリーであると魅せてくれる。
なんでもCGで撮れる時代になったからこその原点回帰。リアルな感情表現や人間の不確実さ、その場その場の空気感をとらえようとする映画が増えた気がする。
「フォードvsフェラーリ」もリアルに車を走らせているし、「1917 命をかけた伝令」は戦争映画ながら<ワンシーンワンカット>の長回しで制作されている。危険なシーンもスタントマンでリアルに撮る。
ヨーロッパ人はもともと狩猟民族。
だから本当に緊迫したシーンでは目の動き、息づかい、肩の促し方で全部表現できるんだとか。
「リアルを撮りたいんです。」ってどこかのインタビュー記事にありそうな台詞なんだけど、そうまでして撮りたい「リアル」って普段の毎日、生活、日常。
毎日、全部、ドラマ。
良い日も悪い日も、そう感じる波のあるメンタルも、切り取って映画にしたら、本にしたら、絶対面白い。そんな毎日を過ごしたい。
台詞に想いが乗るように、目の前に起こる全てのことに自分の感性を乗せて伝えたい。