ハーバード大などの研究チーム、2025年までの感染シナリオを検討
<科学論文> Curated by 瀧澤美奈子
Stephen M. Kissler et al., 14th April 2020, Science
※2020年4月14日時点での見解ですので、引用の際には最新情報にあたってください。
Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period
SARS-CoV-2の伝染動態をパンデミック後の期間を通して予測
新型コロナ感染症対策として、物理的距離の確保により社会活動が大幅に制限されているなか、今後の出口戦略を考える上で重要な示唆を与える論文です。ハーバード大学公衆衛生学院のStephen M. Kisslerらが14日にサイエンス誌に発表しました。
隔離政策をきつくしたりゆるめたり、数年単位の長期戦になりそうですが、私たちの社会の知恵と協力をもってすれば必ずウイルスを手なずけられるはずです。
<研究結果のポイント(仮訳)>※引用の前に原文にあたってください。
SARS-CoV-2(COVID-19) について、2025年までにありうる感染シナリオを検討し、現在発生しているパンデミックを緩和できる非製薬的介入を評価しています。
・SARS-CoV-2の蔓延を抑制するためには、早期に強い社会的距離の確保が不可欠であり、新しい治療法や予防策が開発されていない段階においては、これが集団免疫を獲得する前の医療崩壊を回避する唯一の方法であると思われます。
・新しい治療法、ワクチン、積極的疫学調査や検疫などの介入は、現段階では多くの国で非実用的です。今後感染者数が減った際に検査が拡大されれば、社会的距離確保の程度を軽減するのに役立ちます。
・そのような(新しい治療法、ワクチン、積極的疫学調査や検疫などの)介入がない場合、医療崩壊を起こさないために社会的距離をとる対策を2022年まで継続するか、あるいは断続的に行いつづける必要があり、これは社会的、経済的に大きな負担となるでしょう。
・流行を短縮させ、重症患者に対するケア能力を確保するために、医療体制の向上と追加の介入(新しい治療法、ワクチンなど)の開発が緊急の優先事項です。
・現在世界中が見舞われている感染の第一波を抑制した後には、COVID-19は季節的に再燃する感染症となると予測します。
・免疫が永続的でない場合も定期的に再燃する可能性があります。他のコロナウイルス(HCoV-OC43およびHCoV-HKU1)と同様の短期免疫(40週間程度)の場合には毎年のアウトブレイクが予想され、長期免疫(2年間)の場合は隔年のアウトブレイクが予想されます。
・免疫が永続的である場合、ウイルスは大規模な発生を引き起こした後、5年以上消滅する可能性があります。
・免疫の範囲と期間を理解するには、長期にわたる血清学的検査をすぐに開始する必要があります。これは、パンデミック後の感染の動態を見極めるのに役立ちます。
・効果的な治療法が開発されれば集団免疫の獲得を促進しますが、2024年までの再発の可能性に備えて、サーベイランス(監視)を継続する必要があります。