北海道での第3波は「Go toトラベル」で本土から持ち込んだ株が寄与(遺伝子データ解析結果)
<科学論文> 17th Dec. 2021 Curated by 瀧澤美奈子
※2021年12月17日時点での見解です。引用の際は最新情報にあたってください。
1年前(2020年)の秋に政府が行ったGo toトラベルは旅行業界を中心に一定の経済効果をもたらした反面、とくに北海道で目立ったように国内における第3波の蔓延を助長したことが強く疑われました。北海道では2020年10月に突然、首都圏で先行して急増していたB.1.1.214系統を主とする第3波の流行が始まり、第1波、第2波と比べて非常に多い、感染者数1万人を超える大きな波となりました。
最近公開されたこの論文では、首都圏および札幌の医療機関から入手したSARS-CoV-2ゲノム配列データ、国際的なゲノムデータベースであるGISAIDのゲノム配列データに加え、観光庁による首都圏から北海道への人泊数データ(旅行者数に滞在日数かけたデータ)、航空便データ、携帯電話の移動データから、北海道で発生した第3波の原因について分析しています。
今後、経済対策のために「Go toキャンペーン」のような施策が必要になる可能性も否定できません。政策のバージョンアップのために留意すべきヒントがデータで示されていると思いますので紹介いたします。(瀧澤美奈子)
主な結論は以下の通りです。
2020年7月下旬から11月にかけて、本土から北海道にB.1.1.214系統は少なくとも8つの個別ルートで持ち込まれた。そのうち5種類は首都圏由来のものであった。
観光庁発表のデータから、とくに2020年10月は、政府による旅行プロモーションが、北海道への観光客誘致に成功したことが裏付けられた。
Go toトラベルとの因果関係を確定することは難しいが、この施策が本土から北海道へのB.1.1.214系統株の導入に寄与し、北海道での第3波を牽引したと考えるのは無理からぬことである。
また付随して、今後の教訓として活かせそうな考察や注目に値する点は以下の通りです。
感染者数の増加に先行して、人々の移動度の増加が見られた。移動データをリアルタイムで監視することが、今後、政府関係者が旅行促進プログラムを中止する最適なタイミングを決定するのに役立つかもしれない。
北海道はとくに離島であることから、航空機の搭乗前の抗原スクリーニングや乗客のPCRスクリーニングが有効な予防策である。
レストランやバーなどのリクリエーションの増加は、ウイルスの超拡散につながるという報告があるが、分析の結果、夏休みや9月の4連休の移動の増加が既存株の復活に寄与していなかった。Go toキャンペーンの直前までは、社会的距離を保つための対策が比較的有効だったと考えられる。
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