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30歳差。人工授精、夫の緊急搬送。

3月に水子供養をおこなった後、傷を治癒させるために妊活をひと月休んだ。
その後すぐに不妊治療を再開することも考えたが、夫の体調不良などもあり、更に数か月はクリニックに通うことはなかった。

丁度コロナの第6波が落ち着いてきたので、実家に帰省したり、デートやライブイベントに足を運ぶなど、好きなことをして身体と心に癒しを与えた。

夏に入り、ようやく治療をリスタート。人工授精から始めようということになった。理由としては、

  • 夫婦生活の回数が減少してきたため、タイミング法を取りにくい

  • 精液検査の結果、数や運動率に問題がある


子宮卵管造影をおこなった結果、子宮内腔の形は異常なし。

(子宮卵管造影・・X線とヨード剤を用いた検査。卵管の通りが良くなり、検査の後6か月は妊娠しやすくなる。子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあることが分かる場合もある)

問題なく人工授精に進むことができた。
施術の2日後に排卵の状態を確認した後、HCG注射やホルモン剤の内服が続く。

およそ2週間後の妊娠判定を待ち、今か今かと祈りながら日々を過ごした。


10月に入り、自治会のイベントがあったので 焼き鳥や焼きそばを二人でつついて楽しんだ。

青空の下、穏やかな日常が続いていくものと思っていた。
数日後。
急転直下、その日は突然やってきた。

夕方。ヨガ後の入浴を楽しみ、浴室から出てスマホをチェックしたところ、10分ほど前に無数の着信履歴が。
仕事中であるはずの夫からだけでなく、知らない番号からもかかってきている。

夫に折り返すと、聞いたことのない弱々しい声で囁いてきた。
「救急車で運ばれた…これから検査。〇〇病院まで来てほしい」

どのような症状なのかこの時は全く分からず、骨折くらいに考えていた(健康診断で、骨密度の低下が指摘されていた)
しかし、電話越しの様子から大病である可能性も否定できない。
超特急で髪の毛を乾かし、身支度をして家を出た。

病院に着き、救急外来の待合室に案内される。
しばらくして、検査を終えた医師が出てきた。
医師の硬い表情に、事の重大さを察知した。

『旦那さんは大動脈解離です。
これからICUに移ります』

そう言い、医師は足早に室内に戻っていった。

目の前が真っ暗になった。
それ以上の情報がないため、すぐにスマホで検索した。
トップに出てくる、“即死”“助からない”“余命”といった絶望的な文字。

現実を受け止めることができず、
「こうして人は突然亡くなってしまうんだ」
とまるで他人事のようなフワフワした心地だった。

ICUに移動する前に、夫と対面できた。
ギラギラと灯る蛍光灯の下、青白い顔の夫。

一気に現実味を帯び、事態が明らかとなってきた。





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