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30歳差。体外受精に至るまで。夫の職場復帰。

精液の検査結果は圧倒的に悪くなっていた。
運動率、前進運動率、総運動精子数が前回の10分の1程度に減っていたのだ。

急性B型大動脈解離の発症から、身体に負担がかかる運動は控えるようにしている。
夫婦生活も激減したため、新鮮な精液を採取することができないのも当然だ。

現段階で子宮に特に異常はないが、体外受精(IVF)にステップアップすることに。
半年ほど前におこなった人工受精も選択肢の一つだったが、体外受精の方がより成功率は上がる。
体外受精の中でも、顕微授精法(ICSI)をとることにした。

(体外受精と顕微授精の違い・・体外受精は、精子を卵子が入っている培養液に加え、受精を待つ方法。顕微授精は、培養士によって卵子の中に直接精子を注入する方法。こちらの方が妊娠率は上がるが、金額が高くなる)

今回の胚移植までは、精子凍結→採卵→子宮鏡検査→凍結胚移植という流れだ。

1月半ばにステップアップの相談をし、胚移植までは2つき半という長い道のりだ。
薬剤を投与しながらの毎日は、副作用との闘いだった。
考えていた以上に、日常生活に支障が出る。

排卵誘発剤、排卵抑制剤、ホルモン補充剤によって、さまざまな症状が現れた。眠気や、むくみ、体重の増加、お腹の張りなどなど…

日中が特に辛かった。
買い物中に歩けなくなり、しばしばベンチで休んだり途中で帰宅する。
食事が作れず床に座り込み、そのままベッドで休むことも。

夫は治らない病、妻は副作用で生活がままならない。
「このまま老老介護のような状態になるのでは?」と不安にかられることもあった。


しかしそれは、私の取り越し苦労に過ぎなかったのかもしれない。

3月、夫の復職が決まった
緊急入院をするまでに勤めていた職場はストレスの多い環境だったため、落ち着いて仕事ができる部署に異動になった。

ひとまず、2日出勤し2日休むというシフトを組んでもらったようだ。
体調を見ながらという点では、このシフトは安心だ。

仙人のように伸びていた髭を切り、スーツに腕を通す。
久々の出勤に、顔は晴れやかだ。
コルセットをしていれば、腰痛の心配はなさそうだ。

気温も上がってくる時季だったので、血圧は冬場よりも安定しやすい。
それでも、長時間目の届かない場所にいるというのは心配だったので、スマートウォッチを身に着けてもらうことにした。

5か月振りの出勤。やはり身体は慣れないようだったが、内容は以前よりは難しくないようだ。
休みながらの仕事に、徐々に体力も追いついていった。

4月に入った。
胚移植をおこなえる周期がようやく訪れた。
夫の年齢や病気のこともあり、気持ちは急く。
「今度こそ…」そう、毎日願わずにはいられなかった。



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