30歳差。2度目の胚移植、不育症検査。
音楽ライブは青空の下、和やかなムードで開催された。
長年応援しているアーティストは、夫と同年代。生きるパワーに満ち満ちている。
一方、夫は病気によって何歳か年をとってしまったように見え、少し沈鬱な気持ちになった。
採卵直後だったので、下腹部痛が襲ってくる。
鎮痛剤が効くまでにも時間がかかったが、演奏によってリラックスすることができた。
コロナが「5類感染症」に変わってから、このようにイベントが各地で催されるようになっていた。
感染を以前よりは気にせずに外出できるようになることは、音楽好きの夫婦二人にとって良いストレス解消になる。
病気や治療のことを忘れる時間は、例え一時(いっとき)であっても大事なようだ。
6月半ば、2回目の胚移植をおこなった。
前回は1つの胚を移植したが、今回は2つ。
2つ移植するということは、双子になるリスクがあるということだ。
確率を上げるための方法として院長から勧められたので、二つ返事で応じた。
処置を終え判定を待っている期間に、夫がコロナ感染をした。
熱はそれほど上がらず他の症状もなかったが、なんとしてでも家庭内感染は避けたい。
ホテルに移ることも考えたが、私に一切症状が出ていなかったので自宅療養を選択した。
除菌や洗浄を徹底し、生活空間を別にした。どうやら私は感染を免れたようだ。
夫の体調もすぐに回復した。陽性になってから6日後、会社に復帰することができた。
復帰の前日、移植後のホルモン値を検査した。
着床はしていたが、前回同様に数値がかんばしくない。
それから何日かホルモン補充を続けたが、妊娠は失敗に終わった。
化学流産が続いた(反復流産)ので、不育症の検査をおこなうことになった。
(不育症・・2回以上流産や死産をした場合、男性側だけではなく女性側に問題がある場合が多い。要因としては、抗リン脂質、抗体陽性、子宮形態異常、染色体異常)
子宮形態異常は特にないため、他に原因がありそうだ。
結果、『自己免疫疾患』との判定が出た。
抗カルジオリピン(抗脂質抗体の一つ)の数値が異常だった。
また、キラーT細胞が活発過ぎるらしい。移植した胚を異物とみなし、攻撃してしまうのだ。
このように免疫因子を発見したことで、反復流産を理解することができた。
男性経験が多く、前の夫との夫婦生活も順風満帆だったが、一度も妊娠をしたことがない。
排卵日を避けたり避妊をしていたからというだけではなく、疾患によるものだと納得ができた。
自己免疫疾患の特効薬など、この世には存在しない。
「今後妊娠は不可能なのではないか」と、しばらく絶望感に打ちひしがれていた。
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