webアンケートの作成と調査の実施~spssによる統計解析までの手順④SPSS読込後に行う分析前の処理
SPSSにデータを読み込んだものの、「どこを見ればいいの?」「データの整理はどうすればいいの?」と迷っていませんか?
統計分析を正しく行うためには、SPSSでのデータ確認と適切な前処理が欠かせません。特に、欠損値の設定や尺度の作成といった処理を行わないと、分析結果の信頼性が大きく低下してしまいます。
本記事では、SPSSの画面構成の理解から、読み込んだデータの確認、欠損値の設定、尺度の作成まで、分析前の必須ステップをわかりやすく解説します。SPSS初心者の方でも迷わずに進められるよう、具体的な手順を詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。これを読めば、SPSSの操作に自信が持てるようになり、スムーズに統計分析へ進めるようになります!
※より詳細な説明は、公式の概要ガイドを参照してください。
SPSSの画面構成と基本操作(SPSS Ver.29)
SPSSは、データを分析するためのソフトウェアで、主に 「メニューバー」、「データ・エディタ」、「ビュアー」 の3つの画面で構成されています。各画面の役割を理解し、適切に操作することで、スムーズなデータ分析が可能になります。
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1.メニューバー
画面の上部にある メニューバー には、SPSSのさまざまな機能が集約されています。データ・エディタ(データビュー・変数ビュー)とビュアー(分析結果)画面のどちらでも同じ位置に表示されます。メニューバーには、データ編集に必要なメニューが配置されています。SPSSの主要な機能にアクセスするための重要な部分であり、データの編集や分析を効率的に行うために活用します。主なメニューと役割は以下のとおりです。
メニューバーの構成
メニューバーには以下の項目が含まれています。
・ファイル
データセットの新規作成、開く、保存、エクスポートを行う。データを他の形式(ExcelやCSVなど)で保存することも可能。
・編集
元に戻すややり直し、コピー・貼り付け、検索・置換機能を利用できる。特定の変数やデータを素早く探す際に便利。
・表示
画面のレイアウトやズームなど、表示に関する設定を行う。特定のビュー(ナビゲーションペインやツールバー)を表示または非表示にできる。
・データ
データの並べ替え、フィルタリング、分割、統合など、データセット全体に影響を与える操作を行う。欠損値の設定やケース選択もここで操作できる。
・変数変換
新しい変数・尺度の作成やデータの変換(例:数値をカテゴリに変換)を行う。計算式の適用や条件付きのデータ変換が可能です。
・分析
SPSSの主要機能である統計分析を実行する。記述統計、クロス集計、回帰分析、因子分析など、様々な分析手法にアクセスできる。
・グラフ
データを視覚化するためのグラフを作成する。棒グラフ、折れ線グラフ、散布図などを簡単に生成できる。
・ユーティリティ
データセットや変数に関する情報を表示する。変数リストやデータ構造の確認、ファイル構成の調整を行う。
・ウィンドウ
開いているSPSSのウィンドウ(データエディタ、ビューアなど)を切り替える。作業中のウィンドウを整理する際に便利。
・ヘルプ
ソフトウェアに関するヘルプを表示する。操作方法やトラブルシューティングについての情報を確認できる。
2.データ・エディタ
データ・エディタは、データの入力や編集、確認を行う主要な画面です。この画面は、「①概要ビュー」「②データビュー」「③変数ビュー」の3つのタブに分かれており、目的に合わせ選択します。
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①概要
データの概要が確認できます。「概要」には 2 つのセクションがあります。 上部のセクションには、データ・セットまたはファイル全体に関する情報、下部のセクションには、選択した変数に関する基本情報が表示されます。詳細はspss公式を確認してください。
②データビュー
データビューは、Excelのように、表形式(ケース(行)と変数(列))で構成されています。ケースは調査対象の個々の回答を指し、変数は調査で使用した個々の質問への回答を指します。データビューでは、データの追加・削除・修正などを行うことができます。
(1) 行(ケース)
各行は1つの「ケース」(観測単位、例えば1人のデータ)を表す。 データが記録されたサンプル数を確認できる。
(2) 列(変数)
各列は1つの「変数」(属性や項目)を表す。 例:性別、年齢、点数など。
(3) セル
行と列が交差する部分は「セル」で、各ケースの変数値を記録。 数値データ、文字データ、日付データなどが入力される。
(4) ツールバー
データ編集に便利なボタンが配置されている。 保存:現在のデータを保存。 元に戻す/やり直し:編集操作を取り消す。 フィルター:データを絞り込む機能。
(5) ステータスバー
画面下部に位置し、現在の編集状態(データ変更済みや未保存の状態)を確認できる。
③変数ビュー
欠損値の設定など、データ構造(変数の属性)を設定・編集するタブです。
(1) 行(変数)
各行は1つの変数を表す。データビューの各列と対応している。
(2) 列(属性)
変数の属性(プロパティ)を設定するための以下の項目が並ぶ。
名前:変数の名前を設定。英数字のみ使用可能。
型:変数のデータ型(数値、文字列、日付など)を設定。
幅:データの最大桁数(文字数)を指定。
小数点:小数点以下の桁数を指定。
ラベル:変数の説明や詳細を記述可能。
値ラベル:数値データに対応するカテゴリ名を設定(例:1=男性、2=女性)。
欠損値:欠損値として扱うデータ(例:999など)を指定。
測定水準:スケールの種類を指定(名義、順序、間隔/比率)。
(3) ツールバー
データビューと同様のボタンが配置されており、編集操作に便利。
(4) ステータスバー
編集状態やエラーメッセージを確認可能。
3.ビュアー(分析結果)
データの分析結果や操作ログを表示・確認するための画面です。その構成は、大きく以下の3つの要素で成り立っています。左セクションでは、結果を簡単に移動できるため、特定の出力に素早くアクセスすることができます。右セクションに表示された出力内容は、右クリックメニューを使って編集(フォント変更や不要部分の削除)することができます。また、「表示」メニューを使用すると、必要な情報だけを画面に表示することが可能です。
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①ナビゲーションウィンドウ(左セクション:図赤部分)
出力結果の目次(記述統計、クロス集計表など)が階層的に表示される。 各分析結果(例:記述統計、クロス集計表など)やグラフがツリー形式で表示され、クリックすることで特定の結果にジャンプできる。
②出力ウィンドウ(右セクション:図青部分)
実際の出力結果が表示されるメインエリア。表、グラフ、操作ログなどが時系列順に記載される。表示内容はコピーやエクスポートが可能。
③ステータスバー
画面の最下部にあり、現在の操作状況やエラーなどの情報が表示される。
4.読み込みデータの確認・欠損値の設定
①SPSSに読み込んだデータの確認
1)SPSSにデータを読み込む
データをインポート後、データビュー で適切に表示されているか確認。
Excelの書式設定(関数・色・マーカーなど)が影響し、データが崩れる
場合があるため注意。
②欠損値を設定する
欠損値の設定は、変数ビューで行う。欠損値を設定したい変数の行を確認し、設定したい変数の【欠損値】のセルをクリックすると、設定用のダイアログボックスが表示される。ダイアログボックスにて、欠損値の種類を選択する。欠損値の設定には以下のオプションがある。欠損値を入力したら、ダイアログボックスで【OK]をクリックし、設定が反映されたことを確認する。なお、欠損値の設定は変数ごとに行う必要がある。
欠損値の設定のオプション
「なし」:欠損値を特に設定しない(デフォルト)
「個別の値」:特定の値を欠損値として指定する。
例:数値変数の場合、「999」を欠損値として設定する場合は「個別の値」に「999」を入力する。
「範囲と1つの個別値」:範囲内の値と特定の値を欠損値として指定する。
例:範囲を「90~99」、さらに「-1」を欠損値に指定する。
「範囲」:範囲内の値を欠損値として指定する。
例:範囲を「0~10」に設定し、この範囲内の値を欠損値として扱う。
③尺度の作成
SPSSでは、複数の変数を組み合わせて 合計スコア や 平均スコア などの新しい尺度を作成できます。変数を合成して、尺度得点を求めるためには、【変数の計算】を利用します。
手順
①メニューバーから【変換】→【計算式の作成】を選択する。
②【ターゲット変数】に新しく作成する変数名を入力する。
例:total_score(合計スコア)やaverage_score(平均スコア)など。
③「数式」**エリアに計算式を入力する。
例1複数の変数を合計する場合
score1 + score2 + score3
例2複数の変数の平均を算出する場合
(score1 + score2 + score3) / 3
④必要に応じて条件を指定する場合は、【式に条件を加える】を
クリックし、条件を設定する。
⑤設定が完了したら「OK」**をクリックする。
⑥データエディタのデータビューや【分析】内の「記述統計」で、新しく
作成した変数(尺度)が正しく計算されていることを確認する。
5.まとめ
✔ SPSSの画面構成を理解する
メニューバー、データ・エディタ、ビュアーの役割を把握する
✔ SPSSに読み込んだデータを確認する
データビューで適切にデータが表示されているかチェック
書式設定の影響でデータが崩れていないか確認
✔ 欠損値の設定を行う
欠損値の種類(個別の値・範囲指定など)を理解し、適切に設定する
✔ 尺度を作成する
変数を合成し、新しい指標(合計スコア・平均スコアなど)を作成する
計算式を活用し、分析に必要なデータを整える
SPSSの前処理を適切に行うことで、正確な統計分析の準備が整います。次の記事では、SPSSを活用した具体的な統計分析の方法について解説していきます。お楽しみに!
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