お茶漬けの味 (1952) 松竹
小津安二郎監督
佐分利信さんと小暮実千代さんの顔合わせ。
小暮実千代さんの 女学校時代の友人として
上原葉子さんが出演されてますが
この方は上原謙さんの奥様で 加山雄三さんのお母上ですね。
北原三枝さんも喫茶店のウェイトレスで ちょこっと登場。
また、後楽園球場での野球観戦、パチンコ、競輪といった
昭和20年代の 庶民の娯楽の様子が伺えて面白い。
パチンコは立ってやる方式。
パチンコ屋のオヤジは笠智衆さん。
「こんなもんが流行るようでは、イカンです」
と言ってます。
いつもながら 小津作品は
台詞にコクとキレと 味わいがある
上手いビールみたいな映画です。
〇
見合い結婚をした
茂吉(佐分利信)と 妙子(小暮実千代)は
育って来た環境のせいか 趣味や習慣がことごとく違う。
例えば茂吉は 煙草は安い「朝日」を吸い
汽車は三等に乗り ご飯にお汁をかけて食べたりする。
しかし 上流社会で育った妙子は
そういう茂吉の習慣ひとつひとつが嫌で
特に「ご飯にお汁」は 我慢が出来ず
再三、止めてくれるよう 茂吉に注意するが・・・
茂吉は
「そうかなあ、上手いんだがなあ」
妙子は暇を 持て余しているので
(夫婦ふたりきりだが、女中さんが二人もいる)
姪の節子(津島恵子)や 親友のアヤ(淡島千景)たちと
温泉やらどこやらに遊びまわっているが
寛大な茂吉は何も言わない。
そんな結構な身分なのに 妙子はよくこんなことを言う。
「うちのダンナ様は鈍いのよ。ドンカンさんなの。
ドンカンさん、どっか遠くに行っちゃわないかな、
私の見えない所に」
ある日、姪の節子は お見合いをすっぽかして
そんなこととは知らない
茂吉と ボーイフレンドの岡田(鶴田浩二)と3人で 遊び回った。
夜になって、事実を知った妙子は
カンカンに怒り
そんな妙子に 茂吉はつい言ってしまった。
「無理に結婚させても 君と僕みたいな夫婦が出来るだけさ」
それから妙子は 茂吉に口をきかなくなってしまう。
何か訊こうと思っても
すいすいっと 鬼ごっこのように逃げてしまう妙子。
そんな中、茂吉は急に ウルグアイに出張することになり
急きょ、会社から家に帰ると
妙子は置手紙を残して遊びに行っていた。
茂吉は 友人たちだけに見送られて旅立ち
留守に帰って来た妙子は さすがに後悔した。
海外に行くことは 今とは違う重大事だった。
妙子ははじめて 茂吉のいない淋しさを味わった。
主人のいない茂吉の部屋、愛用の机、机の上の「朝日」・・・
しみじみとした ラストシーンがいいのです。
飛行機の故障で
その夜中に 思いがけなく帰って来た茂吉と
妙子ははじめて お茶漬けというものを食べる。
「美味しいわ、とっても」
「遠慮や体裁の無い、夫婦はお茶漬けの味なんだよ」
おしまい