インドへの道➄-結婚式3、踊り明かす

朝の儀式に出席した後、いったんホテルに戻り昼寝をして体力を養う。

今夜は「Sangeet(サンゲート)」という儀式が行われるのだが、チェトナが「この日は朝まで踊り明かす日なのよ!私ももちろん踊るわ!超楽しみ!!」とハイテンションで話していて、「朝まで?!今日も朝からやっていたのに?!」と、ややビビる。

チェトナはダンスも好きらしく、近々迎える自分たち夫婦の結婚25周年を祝うイベントで夫婦でダンスを踊るらしく、そのためのオリジナルの振付を、ダンスの先生と考案中だという(結婚25周年記念でイベントを開く、というのもすごい!)

うわ、一体どんな夜になることやら?
期待と、戦々恐々とした気持ちが入り交じる中、夕方にまたチェトナの家に向かい、ドレスアップ。

この日のドレスは、今回の結婚式でチェトナが用意してくれた4着のうち、私の一番のお気に入り。
オレンジレッドに金の刺繍や縁取りがとてつもなく美しいセットアップ。同じ生地のズボンと、同じ色のジョーゼットのドゥパタも一緒だ。
Silk Waiving Alia Cut top and pant with Georgette dupatta」というそうです。


結婚式会場の撮影スポットで記念撮影。足元は例によっていつも履きなれた自前のサンダル

ん!皆様、この名称に注目してください!
この胸部分にある逆V字型の切り替えのことを「Alia Cut」というそうです。


見えますか?胸の部分に逆V字の切り替えが入っています


そう、女優のアーリア・バットのこと!
「アーリアが映画で着ていたこのスタイルの服が人気になり、彼女からとって『アーリア・カット』と呼ぶようになったの」とチェトナ。
何の映画だかはわからないそうですが、ぜひ見つけてみたい。

今夜はいつもの近所ではなく、車で30分ほど離れた会場らしい。現場は空港近くの土地で、行く途中の周囲にはところどころにぽつりぽつりとレストランなどがあるだけ。すっかり日も暮れ、真っ暗闇の中、ひたすら真っ平らな土地が車窓に流れていく。

会場に到着。今夜の会場では、ゲストが通る入口の通路の両側に花嫁花婿の写真がずらりと並んでいる!抱き合ったり、お互い見つめ合いながら顔を近づけたりと、見ているこちらが恥ずかしくなるほど熱いツーショットがあちこちに。


「君は僕のおとぎ話だ」とか「君をずっと待っていたんだ」とかこそばゆいメッセージとともに写真が並ぶ。でも写真は素敵!

ミラージュの素性を知ってる身としてはちょっと笑いもこみ上げてくるが、おめでたい席だしぐっと押しつぶす。

入口からして様々なライトアップに大音量の音楽と、まるでどこかのクラブに来たような派手さだ。


入口のゲート。前を行くのはチェトナとピユーシュ夫妻。2人の格好も素敵!

内側も、これまでよりはるかに豪華で広い会場だ。ビュッフェ形式で食べ物や飲み物が並んでいるのは同じだが、これまでよりも数も多く、飾り付けも派手。まるで、テーマパークに来たみたい!

その隣には、まるでコンサートでも開くようなしつらえのステージがあり、その前にはいつものようにたくさんの客席(ソファが地面の上に直接置かれている)が並んでいる。


こんな感じで全般的にものすごくキラキラ。この子も目が合えばすぐにこんなポーズを決める

チェトナによると、この日は700~800人ほどが参列したらしい(いつもは200人ぐらい?)。

後からライブが始まるとのことで、今日は到着してすぐにテーブルにつき、食事をすることに。いろいろな意味でレベルが豪華になったからか、食事にはパスタやピザもある!そろそろ、スパイスだらけのインド料理に飽きてきた身にはとても嬉しい。


料理なども過去2回より格段にレベルアップした感がある

トイレに行こうと思ったら、トイレは会場を抜けたバックヤードの木立の中の暗い建物がトイレだという。しかもその前には男性が数人たむろしていて、なんか怖い!!
一度座席に戻り、チェトナに一緒に来てもらう。すると、その男性たちは「女子トイレはこちらです」と手で示してくれた。案内するとともに警備を担当する係だったようだ。

しかしそのトイレがひどかった。床は水浸し(みな水で洗うから?)、臭いし汚い。ひえー、チェトナのきれいな衣装が床に付いちゃったら大変!せっかく会場は豪華になったのに、こういうところは変わらないんだなあ。

トイレにいるときに、いきなりそばで「バンバンバンバン!」と大音響が響き渡った。

「ひええーテロか?!乱射事件か?!」

と思ったら、まだ続く。どうやら、すぐそばに花火の打ち上げ台があり、花火が上がりだしたらしい。それを合図に、大音量の音楽も鳴り響き始めた。なんだかすごい騒ぎだ。

気を取り直して、大音響と七色のライティングでなんだかものすごいことになっているステージを見に行く。
外部から呼んできた司会者が大声で進行をしており、本当に「ショー」のようだ。


これは「ショー」の冒頭。ミラージュの従兄弟たちが登場し、ダンスを披露。同時に花火が噴出し、盛り上げる




見ていると、黒い服でキメた新郎新婦、ミラージュとヴァニが腕を組んで入場してきた。2人の入場に伴い、ステージの周りでは花火がバワーッと賑やかに打ちあがり、プロレスラーの入場みたいだ(違う?)。
その後はスローな音楽がかかり、新郎新婦は2人で手を取り合って踊り出す。なんだかぎこちなさも残るところが、お見合いで出会い結婚を決めた、という2人らしい。

しばらくすると、曲調がアップテンポに。すると、新郎新婦の親戚一同と思われる人たちもステージに走り込んできて、今度は皆で一緒に踊り出すではないか。
この時のダンスは、ボリウッドダンスやディスコダンスではない。社交ダンスというのか、なんだか学芸会とかでも見かけるようなダンスだ。おそらく、皆で必死で練習したんだろうな…振付も皆で考えたのかな…


これは、新婦側の親戚一同(中央が新婦)で踊るバージョンらしい

司会者が必死に盛り上げるが、もちろん全員、芸能人ではない素人。なんだか、ぎこちないし恥ずかしそう…新郎新婦も皆と一緒にステージ上をくるくると回るが、顔がこわばっている。
そうか、事前に「忙しいよ!」と言ってたけど、こんな催しというか出し物があるなら、そりゃあ練習で忙しいわ!

踊りの出し物がひと段落すると、今度は司会者が新郎新婦だけをステージに呼び戻す。
何が始まるのかと思ったら、質問タイムだ!
まずは、新郎に対し「花嫁のどこが好きになったの?」と聞く。ミラージュはすかさず「彼女は正直で、地に足がついていて、ずっと一緒に過ごせそうだと思ったんだ」と滑らかに答える。
司会者は次に、新婦に向かって「あなたは、新郎のどこが好きになったの?」と同じ質問をする。
すると、新婦ヴァニは「ええっと…そうね、彼は正直で…」としどろもどろ。なんか、そういうところもお見合いで決めた、というところがにじみ出ていて、ぎこちなくも初々しい。


司会者(赤いドレスの女性)にいじられまくる新郎新婦

その後、いよいよ、というか、ようやく、というか、参列者も巻き込んでのディスコ(?!)タイム!
シルバーのジャケットにピタピタのレギンス、サングラスをかけた男女の構成のバンドが登場。とてつもない大音量&大低音のボリウッド音楽を繰り出し始めた。


さすがプロ!踊りも歌もキレがあって、かっこいい!

それでも最初は、親族・家族だけがステージの真ん中に固まり、恥ずかしそうに踊っていた。


当初はこんな感じで、親族一同がぽつぽつステージに上がる…という感じだった、が!

それを客席から呆然と眺めていたら、後ろから「ぽん!」と肩を叩かれ、振り返るとチェトナだ。「行くわよ!」

チェトナがお友達数人と、ステージの輪に飛び込む。

すると、さらに年上と思われるオシャレなオジサマ軍団も数人で輪に飛び込む!ボルサリーノを被ったオジサマ、サングラスをかけたオジサマたちが、若者たちに負けない動きでそれやっと踊り出す!

それまで「お酒が入らないとあの中に入るのは無理~」なんて様子をうかがっていた私とチリから来た参加者も、この辺でようやく「それでは行きますか!」とステージ上に上がった。

みれば、バンドの演奏だけではなく、ステージから降りてきて太鼓(ドール、というのかな?)を首から下げバチでリズミカルにたたき出すバンドメンバーもいるではないか。踊りの輪に入り、力強く叩き出せば、その音に魅入られたかのように皆がまた激しく身体を動かす。こんなに近くでリズムがはじけたら、身体が勝手に動き出し踊らざるを得ない。ドイツの伝説「ハーメルンの笛吹き」はこんな状況だったのかな、なんて思った。


目の前で太鼓を打ち鳴らされ、血湧き肉躍る!

サングラスをかけたスリムで背の高い若者軍団が皆で調整の取れた動きを見せれば、同じくサングラスをかけたダンディーオジサマ軍団が負けじと独自の振り付けで割り込む。華やかなサリーやチョリを来た女性の一軍には常にフォトグラファーがつきまとい、パパラッチばりに激写する。新郎新婦はもちろん、ずっと輪の真ん中だ。新郎新婦が新しい動きを繰り出せば、その周囲が真似して新しい動きが広がる。


若者同士の盛り上がり方って、世界各国共通だなと感じた瞬間


シブいおじさま方も率先してダンスの輪に飛び込み、カッコイイ!

なぜかここでも、夜なのに全員サングラス。なぜ?と聞くとまたしても「かっこいいから」だって。見ると、集団の輪の中でサングラスを配っているスタッフがいるではないか。これも余興なのだな、それでは私もかぶらなければ!と1つ手に取る。


自分たちのステージ?が終わってようやくホッとした様子の新郎新婦。もちろんサングラス

隣の人の声すらも聞こえないような大音響が響き渡る中、隣も後ろも他の人と身体がくっつき、日本のラッシュ電車のような状況で老いも若きも国籍も性別も関係なくわんわんと踊り出す。輪の真ん中には太鼓を持った二人が大音量でリズムを打ち鳴らし、その音と響きが体に直接入り込み、自分も太鼓のようにリズムをとりだす。耳の中に入り込んでくる大音量で思考が遠のき、ただひたすらにリズムに身体を乗らせる。


ドラムもダンスも盛り上がり最高潮!
私の友人。インド人はさすが踊りが上手!

完全にトランス状態!


これまでも話に何度か出てきたミラージュの従兄弟ヴィラージュ。「婚約が決まったばかりの人」としてステージに呼ばれ踊りを披露していたので、解放されたのかこの弾け方

30分ばかり人混みで踊りまくっていたら、突如冷静になったチェトナが「帰るわよ!」と言ってきた。
そうね、名残惜しいがまだ翌日もあるし、今日は長かったし、ここで十分か。

「ええーっ、まだ一緒に踊ろうよ!」と名残惜しそうな声を背中で聞きつつ、まだまだトランス状態のステージを後にして、夜露に濡れた草を踏み分け帰路についた。

明日はいよいよ、本番の結婚式だ!

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