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北度4

酔っても差し水に助けられる。そんな終わりの朝、目を覚ましたのは北海道。枕になってくれていたタキシードのおじさんから「明日からはまた小さいベッドですよ」との宣告を受けると、私は「そこで私が眠るのですよ」とつらそうに笑う。よく笑う。

ハート型に髪を整えてみました。ではチェック・アウトしますね。外には冷たい小雨が降っていて、二十歳には刺激が強すぎるので脇をよく閉めて歩く。乗り物は悪くない。最終日ともなれば無視する景色もあるし、生まれたスキマ時間にはスピッツの『コメット』を聴けばいいし。四日間ありがとうね、と苔むした菩薩に礼をする。これはあのパイロットの成姿らしい。

片腕で豚丼を食べる。もう片方の腕は、この時どうなっていたんだろう。こんな疑問が生まれるたびにトイレに行くのでキリがない。上空にもトイレに似た施設があった。ちなみに滑り止めでウニ丼やお寿司8貫を食べていたら突然ひらめいて、この新千歳という地に新しく「ボタン海老」という名前を付けてあげました。脳味噌が特に味わい深い。

空港に併設するお風呂に入りたい、と思う。温まりたいのか眠りたいのかわからない私に、鍵を失くすと罰金があるよ、と何度も、何度も、君が呼びかけて、私を従えて。いちごミルクを口に含んで朦朧としていたらしく、唇がぽっと紅に染まっていた。

この飛行機はあといくつ時の波紋を見るんだろう。古代人の憂いがする。人の道は逆に戻っている。

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