心を開けるコミュニティ
大学時代、学内で一番大好きだったコミュニティはサークルだった。
音楽系のサークルに入っていたのだが、新歓の時、同学年に思った以上に一浪が多くてびっくりした。
わたしの大学はいわゆる旧帝大ほど浪人が多くはないと思うのだが、わたしもそのうちのひとりで、最初は年齢がひとつ上であることに引け目を感じていたため、そういう意味でホッとしたことを覚えている。
よくこんなに浪人組が集まったよね、とよく笑いあっていた。むしろアクティブなメンバーは現役生より浪人組が多かった。
一つ下の代も何人か浪人(及び高校に入り直して一浪と同じ年)の子が入ってきた。
どの学年にもどのサークルにももちろん居たと思うけど、みんな違ってみんないい、という雰囲気の、居心地のよいサークルだった。
今でも同学年の子とはちょこちょこ連絡を取るし、集まれる時は集まるのだが、わたしたちは性格的にはかなりバラバラだ。
個性が立っていて、それぞれ得意分野を持っていて、それはサークルの現役時代にとても上手く機能していた。みんなのことを誇りに思う。
それともう一つ、居心地がよかった理由があると思っている。
それは、いろいろと苦労したメンバーが多いということ。特に家族関係で苦労したメンバーが多かったように思う。
家族でいろいろある、ということを話す子がいて、ああ家族で悩んでるのはわたしだけじゃないんだ、と思えたのは大きい。
お母さんが癌になってしまい、(それより前に高校中退し、別の学校に入り直すなどいろいろあったため)「あんたのせいでストレスが溜まって癌になったかもしれない」と言われた後輩。
幼い頃からお母さんはおらず、おばあちゃんと弟、お父さんと4人暮らしだったが、ある日たまたま出かけたタイミングでおばあちゃんが倒れてそのまま亡くなってしまい、その時出かけたことを心から後悔して泣いていた後輩。
社会人になり、大病をして、体調も、金銭的に大変になろうとも実家には帰りたくないと、一人暮らしをしながら治療を頑張った友達。
実家が嫌すぎて一人暮らしを始め、親と同じ市内に住んでるけど全然帰ってない、という友達。
きょうだいに障害がある友達。
おばあちゃんが亡くなった後輩については、おばあちゃんの最期に寄り添えなかっただけで家族は好きなようだったが、それ以外の友達、後輩は家族に対して結構な負の感情を抱いているようであった。
実際、上記の後輩2人とわたし3人で話していた時にこれらの話を聞いたのだが、
お母さんがいない後輩は「おばあちゃんいたし、お母さんいなくて寂しいとかあまり思ったことない」と言っていたし、もう1人の後輩は、「両親揃ってるからいいかって言われたらそんなことない」と言っていた。完全に同意。
もちろん、家族関係は良いに越したことはない。
でも、自分以外にも苦労してる子がいると思えたのは心強かった。
高校時代まではあんまり家族の話とか友達にできなかったように思う。
みんなの家庭はそれなりに仲が良く、うまくいってるんだろうなとおぼろげに思っていた。
浪人時代も、家族仲良いよ〜という子もおり、うちはいろいろあるよ〜という子もいたが、わたしはそもそも家族の話をほとんどせず、結果、普通に差し障りのない家だと思われていたようであった。
わたしは人前では比較的明るく振る舞うことが多いので、家族関係が揉めているようにはあまり見えなかったらしい。
ちなみに浪人中は割と初期から親が口を聞かず、伝書鳩状態になってそこそこきつかった記憶がある。
むしろ予備校の友達が好きで楽しかったから、家でいろいろあれど、予備校では明るく振る舞えたのだと思う。
家族が仲良いという家庭は心底羨ましいな、と思うものの、傷を舐めあえる(?)友達がいること自体はありがたいなと思えたりする。
別に無理して家族を好きになる必要ないよな、と思えたり。
負の感情を吐き出せる仲間がいること、ありがたいなと思う。