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【Bookレビュー#12】意思決定のための「分析の技術」
第一章 「大きさ」を考える
マグニチュード
Ex:八幡製鉄所の跡地にテーマパークを作る際に、ディズニーリゾートの考え方を適用することは不適切である
理由①立地によってディズニーリゾートほど集客力にとぼしい
理由②ディズニーリゾートでは、アルバイトだったとしても良質な人材が集まるが、ブランド力がなければ人材は集まらず、コスト高になる
80対20の法則
売れ筋とそうではないものを区分けする一つの考え方。より細かく2対6対2の法則(上位20品目、中位60品目、下位20品目)に分ける考え方もある。
感度分析
いくつかの選択肢を検討する際には感度分析を行った上で作業すると良い
Ex:工場のエネルギー削減計画
工程別にエネルギー使用量の多い順に全エネルギー消費を並べて、勘でも現在の生産を保ちつつ、工程別に何%のエネルギーを削減できるかを絵で描いてみる
→効果の大きいものから、技術的な可能性、障害要素、必要な投資、人材を検討
総資源の配分を考える
人数、経費をベースとして、「市場サービス」、「生産ライン」、「設備・生き技・品証システム」、「商品開発」、「中研」といった配分で技術者資源を表す
クリティカル・マス
一定以上のコストや規模感にならなければ、効果が生まれない
資源投入の順序や時点ごとの量によって、総量が同一だったとしても効果が変化する
第二章 「分けて考える」
市場を分けて考える
マーケットセグメンテーションは、市場を漠然と眺めるのではなく、全体市場を同質的なニーズや欲求を持った特定の重要市場を抽出・選定し、特定の市場で優位を占めるおうな、具体的なマーケティング・ミックスを策定、実施しようという戦略的視点
Ex: 地域、人口密度、気候、年齢、性別、職業、ライフスタイル、パーソナリティ、商品使用率、使用機会
損益を考える
利益=売上数量×一個あたりの粗利益ー諸経費
分解して一つ一つ具体的に考える
MECEに考える
①足し算になっているか?
合計する時に重複になっている可能性がある
Ex: 若者を対象とした市場と直販体制をもつ大手業務用ユーザーとデパート
②引き算になっているか?
主要ターゲットを決めた後で、それ以外にも可能性がある場合には「その他」を作成する
③掛け算
総量を掛け算で表せないか検討してみる。
Ex: 売上高=個数×単価、客数×客単価、店舗数×一店あたり売上
マネジメント・インプリケーションを考えて分ける
興味があるから分析するのではなく、有効な打ち手を得るために分析をする
もしうまくいかなければ分け方が良くない
ユーザーセグメントの性格の違いを、製品開発や販路政策に効果的に反映できるように工夫されたものでなければならない
Ex: A社が若者の購入者が少ないため、若者へのアピールが少ないと叫んでも意味が無い→それよりも、B社は2台目として購入が多いがA社は堅実な家庭の1台目の車として購入している場合が多い、という結果の方がインプリケーションがある
全体を把握して検討対象の位置付けを考える
全体の結果と部分の要因を分けて考えることになってしまいがちである。
Ex: 地球温暖化対策のためには、温室効果ガスの放出制限のほかに、大循環メカニズムなどを利用した大気中二酸化炭素の防除、影響の緩和策を検討することもひつよう
→会社でも部門間にまたがる現象や事象について正しい判断を下す必要がある。社内のみならず、4C(市場、自社、競合、流通・販路)の複雑なダイナミズムの結果である。売上低下を開発部門の問題として、ヒット商品が生まれないせいにしたり、営業マンの努力不足のせいと考え、会社全体の戦略や組織運営体制の課題を見過ごしたりするなどのケースがある
タテとヨコに分ける
Ex: PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)で会社の強さ、市場の魅力度から洗い出す、新規事業の可能分野を技術軸、顧客軸から洗い出す
多元要素の分析
同時に多元要素を検討する際にはどのようにすればよいか
①分野を絞り込み、そのなかで二元の要素を考える
Ex: 全国を市場の伸び率をシェア変化の二軸に分けて考え、そのなかで市場の伸びが大きく、シェアの低下が著しい重要地域を絞り込む
②二元分析の上に三元目の指標を乗せる
Ex: PPMのマトリックス上に各事業についての現在の売上高を円の大きさや記号で表示する
③割り算をする
二元のものを一元で処理するための演算をする。
Ex: 事故の絶対数/自動車の登録台数
横軸にコストパフォーマンス(製品の品質・数量・性能等/価格)、縦軸にシェア(売上数量/市場の大きさ)
④多数の要素を大きな二軸に集約して考える
Ex: PPMの場合、「市場の魅力度」は市場規模・成長性・収益性・競合商品の有無、競合会社数、国際市場の影響の有無といった要因を含む。一方で「自社の強さ」は製品の技術力、製造能力、販売チャネル、ブランド力、他商品との相乗効果などを含む。諸元を一つに取り込む必要がある。
⑤多元回帰などの数学的処理法を用いる
Ex: 縦軸にパフォーマンス、横軸に価格をとったところ、回帰線よりも上の製品はシェアが高いことが分かった
第三章 「比較して」考える
比較と選択の世界
Ex: 固定要素、変動要素+ライフサイクル(生成期、成長期、成熟期、衰退期)に分けて考える
A社は固定費率大、変動費率低⇄B社は固定比率低、変動費率大
→これから景気の見込みも含めて成長が予測されるのであればA社は変動費が小さいため、利益が大幅に増加する。もし逆であればB社の方が固定費負担がすくないため、危険が少ない。
アップル・ツー・アップル
比較する際には比較できるものを比較する
比較をする際には、
①できるだけ同じものをひかくする
②異なるものを比較するときは、意味がありかつ比較できる指標を探すこと
③似たもの同士をひかくする場合も、同じ要素と異なる要素を正しく見分け、異なる部分の影響を勘案しつつ合理的な比較を心がける
事業の体質、会社の現状、生産体制の差、製品カテゴリーの異同、を論じることなく、売上高にたいする開発費は少なすぎる、といった議論は不適切。両者の規模の差、導入技術や歴史の差、商品構成や対象とする市場の差、付加価値の差(外注、内製も)
比較のための枠組みを工夫する
比較の項目はMECEであることが望ましい。
Ex: 製品比較の場合、寸法、メカ特性、性能、快適性(不快要素)、安全性、スタイル・フィーリング、利便性、価格、その他
説得のために比較を活用する
営業マンにとっては説得材料になる
ギャップ分析
類似した2つの事象の差異全体を要素に分解して数量的にとらえ、差異の原因を分析したり、改善の可能性を検討したりする方法
Ex: 売上数量が3分の2規模の会社を比較するために、全体の数値を補正した縮小A社をつくる
コストの比較
アプローチは2つ。
①マクロアプローチ
財務諸表、生産量、統計資料、外部データからおおきく全体をとらえて推計する
②ミクロアプローチ
⑴製品そのものを部品・要素に分解して積み上げて集計する
⑵製造工程を追って各プロセスごとにコスト要素を積み上げて集計する
*キーワード:インダストリー・コストカーブ
横軸に生産能力(累積)、縦軸にコストをとって、コストの低い順に階段状に各社のコストと生産力を表示する
シェアの比較
シェアは売上高÷市場の大きさだが、掛け算で示すこともできる
→横軸(市場で売る力の強さ)×縦軸(製品を市場に出すためのビジネス・システムの強さ)=総合競争力として示す
第四章 「変化/時系列」を考える
インプリシット・ストラテジー
戦略は、具体的には「資源の配分」をいう。
Ex: 枠組みとして、横軸に開発から調達、製造、販売網、市場訴求にいたる業務の流れにおけるKFS(Key Factor for Success)、縦軸に製品・事業分野として、PMS(Product Market Strategy=製品市場戦略)上の資源配分
ミクロの分析
開発数とシェアの関係を競合3社で比較することで、ライフサイクルが短い会社は、製品分野の特性に合わないため、シェアが低い、といったけつろんを出すことができる
トレンドをただしく見るための工夫ー季節変動の修正、移動平均
Ex: 店長が変わった期間は安定しているが、其の後急激に悪化した
外部要素に変動をうける場合には折り込む必要がある
移動平均によって目先の微細動に左右されずに済む
繰り返し現れるパターン、景気の循環
Ex: 証券マンによると長い間ボックス圏で低迷していた価格が上昇を始め、波動を繰り返しながら、その都度新しい底値が前回の底値を上回り、新しい高値は全開の高音を超えているというパターンを示す時にはあるきっかけで大きく上放たれる可能性が高い
同じ循環が繰り返されるか、という判断には先行指標(在庫水準、機械受注)、同時指標(売上高、有効求人倍率)、遅行指標(家計消費支出、完全失業率)によって判断
変曲点に着目し、兆候を読み取る
それぞれの変曲点や、微分で考えた場合の変化率で何が起こったか、意味をつねに考える習慣をつける必要がある
他社比較と時系列分析の併用
その時点での他社との比較だけでなく、過去の経緯を踏まえて時系列に捉える必要がある
第五章 「バラツキ」を考える
統計学の立場と経営の立場
バラツキの分布は、
①現状をより正しく理解して意味を読み取る
②そのバラツキをいかに活かすか、どう利用できるかを考える
③マネジメントとして、ばらつきに対してどのようなディシプリンを持ち込むべきかを考える
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二元のバラツキ
二軸で考えるとより多くの情報を取り込むことができる。
例えば市場規模が大きい地域ほどシェアが低い、といった傾向がわかる。
![](https://assets.st-note.com/img/1641199337549-f4DtINiKxX.png?width=1200)
地域の状況に応じた改善の目標設定について、二元で整理することができる
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第六章 「過程/プロセス」を考える
シェアが低いからシェアを上げる、鳩が少ないから鳩を増やす、といった方法では効果は一時的になってしまう。
Ex: 日比谷公園の鳩を増やす方法を考える
成鳥→つがい→営巣→卵→雛→巣立ち
それぞれのプロセスで個体数が減少している要因はないか
モノや作業の流れをとらえる
流れそのものとしてとらえることができる
Ex: フローアウト・アナリシス
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ワインの流量を太さなどで示しておけば、全市場の把握を誤ることはない
Ex: スループット・タイム
個々の工程に要する時間およびその合計のこと。これが短くなければ効率的とは言えない。
シェアの漏れ分析
Ex: シェア20%の内実は、
①無競合で勝ったもの:系列会社からの発注、特許に守られ競合がない分野
②競合ユーザー
②-A競合し競争したうえで勝ち得たもの:勝敗の要因を製品・サービスが主因のもの、価格・条件が主因のもの、営業アプローチが主因のものなどに分けて顧客別に要因別に分析・追求する
②-B競合に敗退した場合:同上
③カバー不足のユーザー:要員不足、地域的にカバーできない
③-Aかつて何らかの形でコンタクトしたことがある、関係がある
③-B一度もコンタクトしたことがない、まったく無関係
④アウトユーザー:系列、チャネルから何らかの理由で当面アプローチしても意味がないユーザー
⑤潜在市場:直接競合してないが、ユーザー・ニーズの内容から考えて、潜在的には対象となる
ビジネス・システムを考える
物流の世界の考え方として体系化された。
コストを最小限にし、アウトプットを最大にするための物流かいぜんの方法として3つのアプローチが考えられる
①フィックス(各プロセス内の最適設計、コスト改善の工夫)
②バランス(各ビジネス・プロセス間のバランスと業務の流れの最適化を図ることにより、総体としての効率改善を目指す)
③リデザイン(ビジネス・システム全体の構成と異なる視点から構築し直す)
いわゆる組織から生まれたピラミッド型の組織を唱える組織機構論では、大企業病の課題があった。ビジネス・システムは最初から組織の目的であるアウトプットに着目し、組織とは一つのインプット/アウトプット体系であると定義する。
この実現のために、資源配分を最適化する必要がある→PPMがツールとして使える
戦略とビジネス・システム
製品・事業の一つを取り上げて、その内部をビジネスシステムとして捉える。内部の資源配分を追うと産業独特の成功のために重要な機能がある。
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サントリーはワイン・ブームのなか、高級な海外銘柄の輸入販売とともにバルク輸入品のブレンドにより、普及ブランドを開発して市場を拡大、業界一のシェアを誇る。これはウイスキーで培った酒販店との信頼関係を有効に活用した結果であり、レバレッジポイントという。
📚本を読んで・・・
どの位置にいるかという状況をMECEに客観的に伝えることが重要。マクロ、ミクロ、2軸、属性、数式などの要素分解を正しく行うことで、ボトルネックを明確化を目指す。