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幸福論の真価
ニーチェは、「退屈した人間は苦しみを欲する」と切れ味鋭く分析しています。
退屈ほど人間を苦しめるものはないのですが、その退屈よりも人間は、負荷がかかる状態、緊張、逃走、闘争、否定、怒り、不満・・・なんと言ってもよいのですが、いわゆるストレス状態を選び、生きていることを実感したいのです。
衣食住が足りている現代人(一見幸福な人たち)は、何もしなくとも、何かに取り組んでも、なんだかわからない不幸に襲われてしまします。
ハイデッカーはこれを不自由のない生活に巣食う不幸だと説明しています。確かに、ギャンブルなどは金銭が欲しいからではなく、賭け事に興奮して不幸な状態から自分の思いをそらし、気を紛らわせることができます。
「幸福に生きる」ということは、何かを成し遂げる、家族、健康、豊かさ、快楽を目指すのではなく、こういったものが失われた時にこそ、その人の幸福論の真価が問われることになります。