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就職氷河期世代と団塊世代が激突──立場の違いが生む恨みと溝、そのままの現実

近年、「就職氷河期世代」への関心が再燃しています。バブル崩壊後、長期停滞に陥った日本経済の中で、正社員になる機会を奪われ、今なお不安定な労働環境に置かれている世代です。彼らが抱く、上の世代—とりわけ高度成長・バブル期を経験して「当たり前」に正社員として働けた「団塊世代」—への不信感や恨みは、今も根深く残っています。

本書『就職氷河期にコンサルティング業界へ入った父親が、娘に伝えたいこと』の著者・浅見純一郎氏は、就職氷河期を経験した団塊ジュニア世代として、若い人々への指南書を編む一方で、「世代間問題」に着目しています。


今回はその試みの一環として、浅見氏が司会を務め、就職氷河期世代のAさん(団塊ジュニア・独身・非正規)と、かつて安定雇用が当たり前だったCさん(団塊世代)による対談が実現しました。何はともあれ、その内容をご覧ください。


パネルディスカッションの内容(詳細)


【登場人物】

  • 司会(著者)浅見純一郎:本書の著者、団塊ジュニア世代、コンサルタント

  • 団塊ジュニア世代(男性)/独身/非正規社員:Aさん

  • 団塊世代(男性):Cさん(定年退職)

【イントロダクション】

司会(浅見):
「本日は、世代間の厳しい現実に目を向けるための対談を行います。Aさんは就職氷河期世代として非正規雇用に甘んじざるを得ない生活を続け、団塊世代を代表するCさんへの強い恨みを抱えている。Cさんは高度成長・バブル期を経験し、定年まで安定した雇用を維持できた世代です。
今日はAさんに、遠慮なく当時から今に至るまでの不満と怒りを述べていただき、Cさんにはそれを受け止めてもらいます。最終的な解決は期待していません。あくまで問題を表面化する場です。それでは始めましょう。」

Aさん(非正規男性):
「まず言いたいのは、団塊世代は、俺たち就職氷河期世代が必死に正社員を目指しても門を閉ざされていた現実を、どこまで理解していたんですか? 90年代後半から2000年代前半、俺は百社以上受けても内定ゼロ。面接で『経験不足だね』と笑われるか、無言で不採用。結局フリーター、派遣、非正規ばかり。
それだけじゃない。テレビでは『若者は甘えている』とか、『贅沢だ』とか、団塊世代のコメンテーターが涼しい顔で言ってましたよね。俺たちがどんな気持ちでその画面を見ていたか、想像できますか? 努力しても成果が出ない時代だったのに、自己責任論ばかり。団塊世代は楽な時代を生きて、正社員なんて当たり前だったじゃないですか。なんで俺たちに同じ土俵を提供しなかったんですか?」

Cさん(団塊世代男性):
「Aさん、正直あなたの怒り、鋭く胸に刺さります。あの頃、私は会社で中堅から管理職層になりつつあって、バブル崩壊後のリストラや経費削減で社内は混乱していました。でも、僕自身は既に正社員で、守られている立場でした。若い人がこれほど苦労しているなんて、当時深く考えていなかったんです。
メディアで若者批判があったのも確か。でも、それは団塊世代全員の総意じゃない。私も『厳しい時代なんだな』とは思ったけれど、具体的にどう助けるか発想すらなかった。昔から『努力すれば就職できる』が当たり前だったから、その固定観念に縛られていたんです」


【自己責任の風潮】

Aさん(非正規男性):
「いや、総意じゃないって言われても、結果的に世の中の空気は団塊世代を中心とした上の世代によって作られてたでしょ? 経済政策だって、若者向けの雇用対策が十分に打たれなかった。『氷河期世代支援』なんて本格化したのは随分後になってからじゃないですか。
企業は新卒一括採用をやめず、俺たちが20代のときチャンスを逃したら、その後の人生全てが傾いた。国は? 当時の政治家も多くは団塊近辺の世代でしたよね。『就職できないならスキルを磨け』なんて耳障りのいい言葉で済ませて、実際に企業慣行を変える努力はほとんどなかった。団塊世代は政治や経済界でも大きな影響力を持っていたのに、なぜ何もしなかったんです?」

Cさん(団塊世代):
「私個人も若者対策をできるような立場じゃなかったし、当時は誰もが自分のことで手一杯でした。企業は生き残りをかけて即戦力志向になり、新卒でも人気大学以外は厳しくなった。確かに、若者を支援する仕組みも乏しかった。『それが世の中の流れ』で片付けていたかもしれない。
責任を押しつけ合いたくないけど、当時は情報不足でした。インターネットだって黎明期で、若者の苦境がリアルに伝わってこなかった。メディアが出していた若者像も偏っていたと思います。これであなたの苦痛が軽減するとは言えないですが、私たち世代も何をどうすればいいか分からず、結果的に放置してしまった。」


【団塊ジュニア世代将来への不安】

Aさん(非正規男性):
「俺はもう40代後半、そろそろ50になる。不安定な非正規で、この先年金なんて雀の涙でしょう。老後はどうすればいい? 貯金もままならず、スキルといっても若いときに正社員経験がないからキャリアアップは容易じゃない。要するに、人生丸ごと『自己責任』で苦しめって言われてるようなもんです。団塊世代は終身雇用や年功序列でレールが敷かれていた。俺たちはレールを外されたまま放置された。この溝は埋まらない。
いまさら『わからなかった』とか『仕方なかった』と言われても、俺の人生は元に戻らないし、苦労した分の補填もない。あなた方が享受した豊かさが、ひっくり返してみれば俺たちの不遇を土台にしてたとしか思えないんですよ。」

Cさん(団塊世代):
「私個人があなたに何ができるか、と聞かれたら何もできないかもしれない。確かに私たち団塊世代はいい思いをした部分もあり、社会の変化であなた方を踏み台にしてしまった側面がある。
ただ、これは個人ではなく、社会制度や企業慣行、政治の無策といった、巨大な構造問題です。私がここで頭を下げても、何も変わらないし、あなたの失われた機会は戻らない。あなたが怒るのは当然ですが、私もどう責任をとればいいか分からない。罪悪感があっても、今さら何ができるのか……正直、答えが見えません。」


【まとめ】

司会(浅見):
「お二人とも、苦しいやり取りでしたね。Aさんの怒りは骨の髄まで染み込んでいるし、Cさんは当時の無関心や無力感を突きつけられて困惑しています。結局、あの時代の不遇は今も消えず、責任も分散し、誰も取り返せない状況にあります。
我々はここで、世代間の構造的な溝を直視したことになります。言い訳も同情も、救済にならない。今さら賠償や補償もない。
ではどうするか、と問われても、はっきりした解答は出ないままです。この問題が未解決であること、それ自体が社会に突き付けられた現実なのでしょう。
本日の対談は、苦しみと恨み、そして当時の無理解を浮かび上がらせる場となりました。残念ながら、簡単な和解や救いは見当たりません。しかし、こうして声を上げ、可視化することが、せめて現代への教訓になると願います。Aさん、Cさん、今日はありがとうございました。」

最後に

この対談は、世代間対立を解消するどころか、むしろ鋭く問題を突き出して終わりました。就職氷河期世代の恨みと苦しみ、団塊世代の後悔とも言えぬ弁明、それらが宙吊りになったまま。だが、この「解決なき対話」こそ、現実を直視する一歩なのかもしれません。

本書は、その問題を指摘しただけでなく、AI時代に向けて何ができるかを模索するヒントを与えます。「過去を変えられない」からこそ、今後の世代が同じ苦しみを繰り返さないようにするために、何が必要かを考える材料となるでしょう。

誰もが納得できる答えはないかもしれません。しかし、この対談が浮き彫りにした不条理を忘れずに、未来に向けて動き出すきっかけを、ぜひこの本の中からつかんでみてください

※ パネルディスカッションはAIによるフィクションです。登場人物に関してはこちらをご覧ください


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