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本日リリースの「CHATGPT、Open AI Deep Research」を実際に使って、今日発表の「江東区令和7年度当初予算」をリサーチさせてみた。

タイトル通り、本日リリースの「Open AI Deep Research」を使って、今日発表の「江東区令和7年度当初予算」をリサーチさせてみました。こんなマニアックなことをしている人はいないと思いますが、興味ある人見てみてください。なお、話題の若洲公園の公園整備以外にも、来期事業にCHATGPTの活用が含まれていますね。
なお、予算に限らずですが、AIを使うといろいろなことが合理的にできるようになります。議員の方や行政マン、区政などに興味のある方、こちらの記事を見ると参考になると思います。


1.江東区令和7年度当初予算に関して

さて、江東区令和7年度当初予算の概要は、85ページにわたるものです。

以下のような予算規模や各事業の予算の昨年度比較表などが列挙されています


概要にもかかわらず85ページにもわたるので、なかなか全容を見るのも大変です。

厳密にいうと、このファイルではないのですが、主な事業別の当初予算案では、興味深い予算案が提示されています


その中でも、若洲公園の公園整備は日経新聞でも取り上げられているくらい目玉事業になっていますね



2.Open AI Deep Researchを使ってみる

①”詳細なリサーチ”ボタンを押して開始。

まず、先日発表された o3-mini-highを使います。

今回の「Open AI Deep Research」は、プロンプト部分に”詳細なリサーチ”というボタンが出現して、利用できるようになります。

”詳細なリサーチ”を押下し、以下のようなプロンプトを書きます。

あなたは、財政や政治の専門家です。 以下は、江東区の令和7年度当初予算です。全体的な財政健全性の評価、重点施策の妥当性や影響分析、特定分野(DX、防災、福祉、経済政策など)の詳細検討、他自治体との比較など詳細なリサーチをしてください。
#江東区の令和7年度当初予算 https://www.city.koto.lg.jp/011102/documents/7tousyoyosanangaiyou.pdf

すると、以下のようなコメントを、CHATGPTから問われます

以下の点についてご希望を教えてください。財政健全性の評価: どの指標を特に重視しますか?(例:経常収支比率、財政調整基金の残高、起債依存度 など)
重点施策の妥当性や影響分析: 特に深掘りしたい施策や分野はありますか?(例:DX、防災、福祉、経済政策 など)
他自治体との比較: どの自治体と比較を希望しますか?(例:東京都内の他区、大阪市、政令指定都市 など)
特定分野の詳細検討: 重点的に分析したい分野はありますか?(DX、防災、福祉、経済政策 など)


これらをお知らせいただければ、より詳細な分析を行えます。

②レポートの詳細


CHATGPTから質問に対して、以下のようなプロンプトを書きます。

財政健全性の評価: どの指標を特に重視しますか?(例:経常収支比率、財政調整基金の残高、起債依存度 など) →経常収支比率、財政調整基金の残高、起債依存度

重点施策の妥当性や影響分析: 特に深掘りしたい施策や分野はありますか?(例:DX、防災、福祉、経済政策 など) →DX、防災、福祉、経済政策

他自治体との比較: どの自治体と比較を希望しますか?(例:東京都内の他区、大阪市、政令指定都市 など) →東京23区の全て

特定分野の詳細検討: 重点的に分析したい分野はありますか?(DX、防災、福祉、経済政策 など) →DX,防災、経済政策


③詳細なリサーチの開始



すると、以下のようなコメントをCHATGPTからもらい、長考に入ります。


④詳細なリサーチは何してる?


長考中は、ほっといて別のことをしていると、解答を出力してくれます
今回は、10分かかりました

右の列で、10分間何をしていたかが表示されるのですが、いろいろな調査を裏でしていたようですね。以下の引用部分は参考なので、読み飛ばしてください。

江東区令和7年度当初予算の詳細分析

ChatGPT

財政健全性を評価し、経常収支比率、財政調整基金残高、起債依存度を考慮し、最近のトレンドを分析中。財政健全性の評価

DX、防災、経済政策の各施策の内容、予算、影響を評価し、問題や改善提案を行う。施策の妥当性を検討

東京23区の予算を比較し、江東区の財政戦略と施策の相対的な位置付けを明確にする。施策の相対的な位置付けを明確にする

DX、防災、経済政策の各施策の詳細を分析し、他自治体の成功例と課題を比較する。施策の特定分野を分析

Searched for 江東区 令和7年度 予算

ChatGPT

江東区の令和7年度当初予算要求と編成基本方針を確認中。どちらも財政的な指針を示している。

city.koto.lg.jp を読み込みました

ChatGPT

FY2025の開始予算を予測し、各部門からの予算要求を分析していると、一般会計で13.5%、特別会計を含めて10.2%の増加が確認されている。

city.koto.lg.jp からさらに読み込みました

ChatGPT

「予算立案ガイドライン」を少しずつ確認中。

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ChatGPT

「令和7年度当初予算(案)概要のお知らせ」には、詳細が含まれている可能性が高いことがわかる。

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ChatGPT

初予算案概要が本日付で更新されており、"経常収支比率"、"財政調整基金"、"起債"に関する情報を探している。

city.koto.lg.jp からさらに読み込みました

ChatGPT

江東区の「経常収支比率」を東京の報告書から見つけたい。

「江東区 経常収支比率」で経常収支の割合を見ている。

Searched for 江東区 財政指標

ChatGPT

令和4年度の江東区の各会計歳入歳出決算書が、経常収支比率、財政調整基金、起債依存度の分析を含むPDFであるかもしれないと考えている。

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ChatGPT

PDFがテキストベースでないかスキャン済みかもしれない。

city.koto.lg.jp からさらに読み込みました

ChatGPT

工事年度の経常収支比率が74.7%で、適正水準内に9期連続している。「Table 12」で各年の動向を比較。地区の経常収支比率が低いのは、収入が多いためか。

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ChatGPT

特定目的基金残高と区債残高を比較して、財政調整基金の動向を確認中。ベースラインに注目して、必要なデータを集めている。

Searched for 江東区 起債依存度 令和7年度

ChatGPT

検索結果には特定の事例が見つかりませんが、Kotoに関連する財務報告書が含まれている可能性があります。

FY2025の初予算の要点を探し、デジタル化や防災、福祉、経済政策に関連する予算配分を確認している。

江東区の予算案に関連する情報を探っています。

Searched for 江東区 令和7年 予算 DX

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ChatGPT

PDFの内容がウェブページと一致しているか確認し、予算や成長に向けた基礎の構築について言及していると推測している。

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ChatGPT

財政健全性の視点からは、「経常収支比率」が気になっている。実際の収支に基づく方が良さそうだね。

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ChatGPT

「Key projects introduction」というPDFがDX、防災、福祉、経済政策に関連する内容を含んでいると思います。これらのプロジェクトに関する情報をPDFから見つけているところです。DX推進事業に関する予算と目標を確認中。
分野ごとに詳しく見ていくと、スマートコミュニティの計画が進んでいる。

プロジェクトは災害情報の効果的な配信を目指しており、メールや電話を通じて災害情報の伝達を支援している。

"AI検索をウェブサイトに組み込む"って、どんなふうに機能するのか気になるんだけど。

コンテンツの追加を進めている。関連情報を広げて、バランスの取れた見解を作り出す予定。

PDFのテキストを抽出する方法を模索中。Pythonのpdfテキスト抽出やPDFライブラリを使用する案を検討しているんです。

最近、冬の寒さが厳しくなってきたので、卓上用の電気カイロを買ってみました。これで暖かく過ごせるかな。

このプロジェクトは女性、子供、市民のニーズに対応し、食料、パッド、ランタン、緊急警報装置、飛行経路網、避難所の増強を進めている。

新大久保駅近くの倉庫は、3日分の食料と資材を備蓄できるように設計されています。

新しい子供・家族支援センターを富岡地区に設置し、地域福祉ネットワークを強化するためのコミュニティサポートセンターを追加。これにより、地域の課題解決が進む。

深まる子ども・家族支援、子どもの権利の啓発、10代向けプログラム、妊婦支援制度予定。

新幹線に乗るために、荷物を整理して予約確認中。トラベルニュースを見て、駅までのアクセスも確認してます。

Tomioka地区に新設し、23区最多の数になる予定。

Kotoブランドと公式Instagramの活用により、産業と地域文化を促進している。都市のプロモーション活動の一環として、経済や観光のカテゴリに属している。さらに、中小企業の拡大を図る方法を模索中。

中小企業サポート拡充と「物価高対策」を模索中です。

Kotoの203号は、エネルギー価格上昇、小売店支援、住民税免税世帯への特別支援など、インフレ対策の補助金を含んでいる。

世田谷区の予算に関する情報を直接検索している。

Searched for 世田谷区 令和7年度 予算

ChatGPT

墨田区の財政力は他の区に比べて高く、税収基盤が強固なため、債務依存度が低く、高い貯蓄を持っています。

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ChatGPT

予算要求ページのメモには、財政調整基金の移管が含まれていないことが示されています。

Searched for 江東区 財政調整基金 残高

ChatGPT

財政調整基金または基金残高で検索を試みている。

特定目的基金の残高を見積もり、主要な基金を確認中。公共施設建設基金が重要な役割を果たしている可能性を探求している。

特定目的基金や財政調整基金の増減を見ていると、年々の変動が興味深いね。


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ChatGPT

Kotoの財政は健全で、債務依存は極めて低いと見積もられている。今後の収益減少のリスクを含めて、持続可能性を強調している。


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ChatGPT

江東区はデジタル変革、子ども支援、災害対策に重点を置いている。

Searched for 東京23区 令和7年度 当初予算 増加率

ChatGPT

現在比率や reserves、旧債依存度を見て、持続可能性を確認している。

中小企業支援とインフレ対策を展開し、持続可能な成長を目指している。

区のデジタルトランスフォーメーション計画を紹介し、他の自治体の成功事例とともに、技術の進展を積極的に採り入れている。

他の自治体のデジタル化の進展と比較し、区の先進的な取り組みを強調。デジタル格差を減らすための高齢者向けトレーニングの必要性を指摘している。

④「江東区令和7年度当初予算」に対する、詳細なリサーチ結果

10分かけて出してくれた「江東区・令和7年度当初予算の詳細分析」です。

なぜか、 財政健全性の評価の対象が令和6年度ではなく、令和4年度になっているのですが、軒並み健全とレポートしています。また、ちょっと気になったのが平成24年度末に債務超過の状態だったとありますね・・
また、予算に関しては今日プレスリリースされた令和7年度当初予算をちゃんと引用しており、検索のリアルタイム性も確認できました。

江東区・令和7年度当初予算の詳細分析

1. 財政健全性の評価

江東区の財政は総じて健全で、持続可能性が高いと評価できます。経常収支比率は令和4年度決算で74.7%(前年度比▲1.8ポイント)と9年連続で適正水準(概ね70~80%)に収まりました​
この比率が低いほど財政にゆとりがあることを示し、江東区は23区平均(令和3年度で約78.6%​)よりも低く、他区より柔軟な財政運営が可能な状態です。過去10年で見ると、平成25年度の81.1%から一貫して低下しており、新たな行政需要にも対応できる余地を維持しています​

財政調整基金の残高も潤沢です。令和4年度末時点で約426億円の財政調整基金を含む特定目的基金残高を有し、区債残高約237億円を大きく上回っています​
実に約1,476億円も基金が債務を上回っており​、過去には債務超過だった状況(平成24年度末で基金より債務が185億円多かった)を大きく改善しました​。起債依存度(借入金に頼る割合)も低水準で推移しており、新規の区債発行は抑制されています。実際、令和4年度末の区債残高約237億円は当年度一般会計予算規模の1割未満に過ぎず、区は大型事業も極力内部留保で賄っているといえます。

これらの指標から、江東区の財政は健全で持続的です。堅調な歳入(特別区民税・特別区交付金)の伸びと歳出改革の効果で、財政規律を維持しつつ十分な基金を蓄積してきました​。ただし区自身も指摘する通り、ふるさと納税による減収や国の税源偏在是正措置、物価高騰と景気の不透明さなどリスク要因も存在します​。今後も景気変動や税制度の影響に注意を払い、「自助努力による財政基盤強化」を継続することで​、現在の健全性を維持することが課題となるでしょう。


2. 重点施策の妥当性と影響分析

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進

江東区は令和7年度予算で行政のDX推進を重要施策に位置付けています。**「(仮称)江東区DX推進計画」を令和7年3月に策定予定で、デジタル基盤整備と行政手続のオンライン化、庁内業務改革を進め、「Smart KOTO」の実現を目指す方針です​

具体的には、新規事業として「DX推進事業」を立ち上げ、区民向け手続のオンライン申請対応や職員の執務環境見直しなど行政サービス全般のデジタル化を図ります​

例えば、区公式ホームページにAI検索機能を導入し、ChatGPTが要約した回答を提示するなど、先端技術を活用して住民が情報を得やすくする取り組みも計画されています​
これらの施策は行政の効率化と区民利便性向上に直結し、妥当性は高いと言えます。

また、DXは行政内部に留まらず地域経済へ波及させる狙いもあります。区内中小企業に対して**「DX・生産性向上推進資金」**という新たな融資制度を創設し、デジタル技術の活用や省力化設備導入による生産性向上を低利融資で支援します​

併せて、中小企業向けの経営相談機能も強化し、相談時間延長や専門家の企業派遣、新たなセミナー拡充を行います​

創業前から事業承継まで各段階に応じた研修を用意し、経営相談員が企業を巡回訪問してニーズを拾い上げるなど、きめ細かい支援体制を敷く計画です​

過去に区が実施してきた中小企業融資制度や経営支援の実績を踏まえ、更にDXの視点を加えてアップデートする形であり、施策の方向性は適切でしょう。

DX推進施策の期待される影響として、行政サービスの効率向上で人手不足に対応しつつ、区民の手続負担を軽減できる点が挙げられます。オンライン申請拡大やAI活用により、住民は役所に出向かずにサービスを受けられ、区職員も定型業務の省力化でより高度な業務に注力できます。中小企業支援では、生産性向上や事業改善が図られることで地域経済の競争力強化や雇用維持につながる効果が見込まれます。実際、新設する融資制度には経営改善計画の策定支援も組み込まれており、単なる資金繰り支援に留まらず企業体質の強化を後押しします​

これらは区内経済の底上げにつながる妥当な施策と言えるでしょう。

一方、課題やリスク要因として**デジタルデバイド(情報格差)**への配慮が必要です。高齢者などICTに不慣れな層がオンライン化から取り残されないよう、引き続き窓口や電話でのサポート体制を維持・補完するとともに、デジタル活用支援(講習会等)にも注力すべきです。DX推進課の新設や職員研修も並行して行い、セキュリティ対策を万全に講じることが重要でしょう。これら改善策を講じることで、DX施策の効果を最大化し副作用を抑えることが可能となります。

防災・減災対策

防災分野でも江東区は充実した予算措置を講じています。まずハード面では、新木場地区に区内最大規模の防災倉庫を新設する計画です​

新木場の広大な区有地(江東区リサイクルパーク跡地、約4,153㎡)を活用し、延床2,000㎡規模の倉庫を建設予定で、完成すれば区民約3日分の食料を備蓄できる施設となります​

臨海部という立地を活かし、災害時には陸路だけでなく海路や空路による物資輸送拠点として機能させる狙いで、広域支援の受け入れ・発信を円滑化する効果が期待されています​

大規模災害時の物流確保は大都市部の課題であり、こうした先進的な備えは妥当かつ有効な投資と評価できます。

ソフト面では、避難所の備蓄物資拡充と情報伝達手段の多重化が図られます。令和7年度は備蓄食料を区民避難者約13万人・1日分から2日分へ段階的に増強し、交通寸断時でも外部支援を待たずに食料提供できる体制を整備します​

特に、高齢者・障害者・妊産婦・乳幼児といった要配慮者のニーズに配慮した物資(折り畳みベッド、ベビーベッド、衛生用品、仕切りなど)や、防犯ブザー・ランタン等の安全用品を充実させる予算(約2億3,469万円)を計上しました​

これは若手女性職員プロジェクトチーム「プロジェクト・スマイル」の提案を踏まえたもので、避難所生活での不安・ストレス軽減に寄与する先駆的な取り組みです​

また、防災行政無線の内容が高層マンション等で聞こえにくい問題に対応し、同内容をメールや電話、防災アプリ等で自動配信する仕組みを構築します​

具体的には「こうとう安全安心メール」に防災無線情報を自動送信する機能追加や、電話照会サービスの導入、防災ポータルサイト・アプリへの情報連携を実施します​

わずか1,683万円の投資で情報伝達経路を多重化し、聞き逃した住民にも確実に避難情報が届くようにするもので、防災ICTの活用として妥当な施策です。

これら防災施策の目的は明確で、期待される効果も大きいと言えます。備蓄倉庫新設と物資拡充により、大震災や大規模水害時の初動対応力が飛躍的に向上します。特に江東区は臨海低地で地震・高潮時の孤立リスクが指摘されており、区独自の備蓄体制強化は区民の安全安心に直結します。要配慮者向け物資の充実も、防災の観点だけでなく福祉的観点から避難環境の質を高め、災害弱者を手厚く守るものです。情報面の充実によって、従来取りこぼされがちだった高層住宅住民や聴覚障害者などにも迅速に正確な情報が届き、避難行動の確実性が増すでしょう。

一方、課題としては、計画したハード整備の着実な実現と維持管理です。新木場防災倉庫は令和7年度は設計段階(予算1,770万円)に留まる見込み​で、完成までに数年要する可能性があります。その間は現行の複数倉庫体制で不足を補う必要があり、備蓄更新や老朽施設の維持に留意すべきです。また備蓄食品・物資の賞味期限・品質管理、定期的な入替えによる廃棄ロスの最小化も課題です。情報伝達の多重化については、新システム導入後の動作検証や訓練を重ね、非常時に確実に機能するようにしておく必要があります。さらに、地域住民との協働も重要です。自主防災組織や町会と連携し、住民参加の避難訓練や防災ワークショップを継続的に実施することで、ハード・ソフトの整備を住民の防災力向上につなげる改善余地があります。



福祉(子ども・高齢者・障害者施策)

令和7年度予算では、子育て支援から高齢者福祉まで幅広い世代への施策充実が図られています。その妥当性を分野別に分析します。

子ども・子育て支援:
江東区は子育て世帯の増加に対応し、富岡地区に新たな子ども家庭支援センターを整備します​

古石場地域の幼稚園跡を活用し令和10年度の開設を目指すもので、これにより区内の子ども家庭支援センターは計6ヶ所となり23区最多となります​

近年、養育環境に課題を抱える家庭や育児不安を抱える親が顕在化しており、世帯ごとに包括的な支援を提供できる体制強化が求められていました​

この新センター設置はそうしたニーズに応えるもので、妥当な施策と言えます。また中高生の居場所づくりにも着手し、児童館を活用した「Teen’s Base」事業を開始します​

放課後等に中高生が安心して集える空間を用意する取り組みで、思春期世代の健全育成や孤立防止に資するでしょう。さらに、令和7年4月施行の「江東区こどもの権利に関する条例」に基づき、子どもの権利の普及啓発活動も予算化されています​

子どもの最善の利益を社会全体で守る理念を浸透させるもので、教育現場や地域での啓発により子どもの虐待防止や意見尊重の風土醸成が期待されます。


高齢者・障害者福祉:
高齢化への対応では、豊洲地域の高齢者支援拠点を増強します。豊洲地区はこの7年で高齢者人口が約1.3倍に急増(令和6年1月時点8,400人)しており​、既存の豊洲長寿サポートセンター(豊洲シビックセンター内)に加えて東雲地域にサブセンターを新設する計画です​
ここには保健師・社会福祉士・主任ケアマネージャーの3職種を常駐配置し、地域包括ケアの相談・見守り機能を強化します​。新興住宅地である豊洲・東雲地区で高齢者支援体制を拡充することはタイムリーであり、妥当な施策です。障害者や高齢者の移動円滑化のため、江東区バリアフリー基本構想の改定も行われます​。ユニバーサルデザインのまちづくりを推進し、誰もが安全に移動・生活できる環境整備を図るもので、東京2020大会を契機に進めてきた取組をさらに発展させる姿勢が伺えます。



地域福祉と包括支援:
地域コミュニティを支える仕組みとして、区は社会福祉協議会と連携し地域福祉コーディネーターの活動拠点を区内で3か所目を新設します​。新拠点では、子ども・高齢者・障害者・虐待など様々な相談ニーズに対応し、地域での見守り支援ネットワークを構築します​。既に2か所設置済みの拠点に加えて未カバー地域に展開することで、地域課題の掘り起こしと解決支援を強化する狙いです​。専門職(社会福祉士等)によるアウトリーチを充実させ、行政と地域住民・団体を繋ぐハブとして機能させることで、孤立しがちな困難ケースへの支援が行き渡ることが期待されます。


新規の福祉サービス:
特徴的な新規事業として、周産期のグリーフケア事業を23区で初めて開始します​。流産や死産を経験された方々への心理的支援(グリーフケア)を目的に、専門機関の協力を得て職員研修を行うとともに、専門カウンセリングの初回費用補助や啓発リーフレット配布を行うものです​。わずか101万円の予算ながら「愛する人を失った悲嘆」に寄り添う支援体制を整える意義は大きく、従来手薄だった分野への先駆的取り組みと評価できます。高齢者向けには、在宅療養者の緊急時対応力を高めるための見守り機器設置補助や、認知症高齢者の徘徊対策(GPS機器貸与)なども検討されており、福祉施策全般で安心安全を支えるメニューが拡充されています。


以上の福祉分野の重点施策は、区民ニーズの変化に即した適切な対応と言えます。子育て支援センターの増設は待ったなしの課題(特に東部地域の支援拠点不足)に応えるもので、既存センターの利用が難しかった層へのサービス提供が可能になります​。高齢者サブセンター設置も、急増する新興地域のニーズに合わせた機動的対応であり、地域包括ケアの空白を埋める効果があります​。地域福祉拠点の拡大は、従来から江東区が力を入れてきた「支え合いの地域づくり」をさらに深化させる取り組みで、行政だけでなく住民参加で課題解決を図る姿勢が妥当です。グリーフケア事業のように国の制度改正(令和6年施行の改正子ども・子育て支援法)を捉えて独自支援を打ち出す点も、区民の潜在的ニーズを先読みした施策であり評価できます​

考えられる課題は、これら新規・拡充事業を担う人材の確保と継続性です。新しい子ども家庭支援センターや地域福祉拠点には有資格者の配置が必要ですが、福祉人材の確保は都内各自治体で競争が激化しています。江東区は魅力ある労働条件や研修機会を提示して人材確保に努める必要があります。また、一度整備した施設・事業を持続可能に運営する財源手当も留意点です。幸い江東区の財政基盤は比較的安定していますが、福祉ニーズは拡大傾向にあり、中長期的なサービス提供体制の計画が欠かせません。今後は、事業の効果検証を行いながら、地域包括ケアシステムや子ども家庭総合支援のさらなる充実に向けて、施策間の連携を強めていくことが望まれます。

経済・地域活性化政策

江東区は地域経済の活性化と物価高騰への対応にも重点的に取り組んでいます。その施策内容と影響を分析します。

中小企業支援と産業振興:
前述のDX支援以外にも、中小企業の経営基盤強化策が充実しています。新設の**「経営改善支援資金」では、売上減少など経営に困難を抱える中小企業者に対し低利融資を行い、経営改善への取組みを支援します​。融資実行にあたって区の経営相談員が計画策定を支援する仕組みで、単なる資金繰り支援に留まらず企業の再建計画づくりを伴走支援するのが特徴です​また先述のDX推進資金とあわせ、事業ステージや課題に応じた複数の融資メニューを創設することで、区内企業のニーズに幅広く応える体制を整えました​。さらに、中小企業相談所機能の拡充(相談時間延長や専門相談員派遣)、創業支援から事業承継まで一貫したセミナー開催など、経営支援のソフト面にも力を入れています​。加えて、区内産業の魅力発信として「江東ブランド」**のプロモーションや、江東区初の公式Instagramアカウント開設によるシティプロモーションも行います​。伝統的なものづくり企業の技術や製品、観光資源などをSNS等で発信し、区内産業の活性化と次世代への技術継承を図る狙いです​。これらの施策は区内経済の自律的成長を促すもので、妥当かつ戦略的と言えます。

物価高騰への緊急支援:
近年のエネルギー・物価高騰を受け、江東区は区独自の物価高騰対策パッケージを予算化しました​。まず、区内中小企業に対して電気・ガス・燃料等のエネルギー費の一部を助成し、負担軽減を図ります​。年間エネルギー費が一定額以上の事業者に最大15万円(段階的に5万~15万円)の補助金を交付するもので、原材料・光熱費高騰に苦しむ中小企業を直接支援します​。次に、地域商業の活性化策としてプレミアム付商品券を大規模に発行します。プレミアム率30%(1万円で1.3万円分利用可)の区内共通商品券を紙・デジタル合わせて16万セット発行し、前年(各7万セット)から各8万セットに増やします​。加盟する商店街の店舗等で利用できる商品券で、購買意欲を喚起し地元商店の売上支援につなげます​。さらに、国の給付金対象とならない低所得層への独自給付も行います。具体的には住民税非課税世帯(国支給対象)よりわずかに所得が高い**「均等割課税のみ世帯」に対し、区が独自に1世帯当たり1万円の給付金を支給します​。これは「非課税ではないが生活に余裕のない世帯」にも支援の手を差し伸べるもので、きめ細かな生活支援策と言えます。以上3本柱の物価高騰対策事業には総額約16.5億円**(①エネルギー補助約7.5億円、②商品券約7.06億円、③独自給付約1.72億円)の予算を充てており​、区民生活と事業活動を守る強力な支援パッケージとなっています​


これら経済政策の妥当性は非常に高いと評価できます。中小企業支援策は、単なる補助金のばら撒きではなく伴走型支援設備投資支援に重点を置いており、企業の将来の稼ぐ力を養成する方向性です。経営相談の強化や多様な融資メニューは、コロナ禍や物価高で傷んだ企業の再建のみならず、新たな成長分野への挑戦(DX化等)を後押しする効果が期待できます。プレミアム商品券事業はこれまでの実績から即効性が見込め、発行セット増加によりより多くの区民・店舗が恩恵を受けられます。地域の消費喚起によって商店街の客足回復や売上増加が見込まれ、コロナ後の地域経済再生に寄与するでしょう。エネルギー費補助は事業継続の下支えとなり、昨今の電気代高騰で苦しむ小規模店舗や工場にとって大きな助けとなります。独自給付金は国の支援漏れを補完し、生活困窮ラインぎりぎりの世帯の生活維持に資するもので、公平・公正な視点からも妥当な施策です。

考え得る課題としては、支援策の周知徹底と迅速な執行があります。せっかくの制度も対象者に情報が届かなければ効果が半減します。区は広報や相談窓口を通じて中小企業や住民への積極的な周知を図り、申請手続きを簡素化するなど利用しやすい仕組みを整える必要があります。また、プレミアム商品券は想定以上の応募があった場合の対応や、転売防止策など適切な運用管理が求められます。エネルギー補助も申請漏れがないよう産業団体等と連携して周知し、事後的に効果検証を行うと良いでしょう。リスク要因として、物価高騰が長期化・常態化した場合、今回の一時的支援だけでは不十分となる可能性があります。その際は、省エネ設備導入補助や更なる生活困窮者支援など、持続的な対策への移行も検討する必要があります。幸い江東区には財政余力があるため、景気や物価の状況を注視しつつ柔軟に経済支援策を拡充・縮小していくことが望まれます。

3. 他自治体との比較に見る江東区の特徴

江東区の令和7年度当初予算を東京23区の動向と比較すると、その財政戦略と重点施策の積極性が際立っていることが分かります。

財政面の比較:
江東区の一般会計当初予算規模は2,784億円で前年度比+9.5%と大幅に拡大しました​。これは23区の中でも高い増加率で、歳入環境の好調さを積極的な歳出拡充に振り向けていることを示しています。他の区でも景気回復に伴い増収が見込まれ予算拡大傾向にありますが、その幅は区によって様々です。例えば板橋区は特別区民税の納税義務者増等で堅調な歳入を見込むものの、江東区ほどの二桁近い伸びには達していないとみられます​。江東区は財政調整基金をはじめとする潤沢な基金を背景に、必要な投資を大胆に行う姿勢が強く現れています。財政指標を見ると、江東区の経常収支比率は前述の通り23区平均を下回る良好な水準(江東74.7% vs 23区平均およそ79~80%)であり​、特別区の中でも財政に余裕がある部類です。財政力指数(自主財源の比率)も高く、特別区財政調整交付金には他区を支える「撥ね返り」区として拠出する側であると推察されます。実際、江東区は区債発行を抑えて基金で賄う堅実財政である一方、慢性的に経常収支比率が高止まりしている区(例えば財政規模が近い足立区や葛飾区では90%前後の年もある)に比べ、財政の自由度が高いと言えます。こうした財政的強みが、令和7年度の思い切った重点施策展開を可能にしている点で、他自治体と比べた江東区の大きな特徴です。

重点施策の比較:
江東区が掲げる重点分野(DX、防災、福祉、経済)は、どれも他の自治体でも重要視されているテーマですが、その取り組み規模と内容の充実度において江東区は相対的に際立っています。

DX推進: デジタル行政改革は東京都も「スマート東京」の旗印で力を入れており、都全体のDX関連予算は4,114億円(前年比+743億円)に上ります​
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防災対策: 東京東部の湾岸・低地エリアを擁する区(江東区、江戸川区、墨田区など)は防災に力を入れていますが、江東区の施策はハード・ソフト両面でバランスよく大胆です。他区では大規模備蓄倉庫を都と協調して整備するケース(例:港区は都の臨海広域防災基地を活用)もありますが、江東区は区独自に最大級倉庫を新設しようとしている点で際立ちます​
福祉施策: 子育て支援では、江東区は若い世代の流入が多い特性から23区でも積極策を講じてきました。他区でも子ども家庭支援センター整備は進んでいますが、江東区のセンター数6ヶ所は23区最多であり​
経済・物価対策: コロナ後の景気対策や物価高騰対応は23区共通の課題で、多くの区がプレミアム商品券発行や独自給付を実施しています。その中で江東区の対応は規模と対象の広さで際立ちます。プレミアム率30%・発行16万セットという数字は、類似施策を行う区の中でも最大級です(多くの区は発行数数万~10万セット台)。独自給付金についても、住民税均等割課税世帯まで対象を広げる区は限られ、江東区のように非課税世帯+均等割課税世帯までカバーするのは先進的です​

以上の比較から、江東区の令和7年度予算は財政的な優位性を生かして多面的かつ先進的な施策を打ち出していることが明らかです。他自治体が財源制約から優先課題を選択・集中する中、江東区はDXも防災も福祉も経済もバランスよく推進できている点で際立ちます。これは区の好調な歳入と過去の基金蓄積による裏付けがあって可能となっている面が大きいでしょう。しかし、江東区の取り組みは決して浪費的ではなく、どの分野も的確に課題を捉えた上で投資すべき所に投資する「メリハリ」の効いた内容です。他区にとっても参考になるモデルケースが多く、例えば災害時の要配慮者支援やグリーフケアなど、江東区発の施策が横展開される可能性もあります。今後も他自治体の動向を注視し、良い事例は共有し合いながら、江東区は自身の強みを活かした戦略を維持していくことが望まれます。

4. 特定分野(DX・防災・経済政策)の詳細検討と提言

最後に、重点施策の中でも特にDX、防災、経済政策の3分野について、他自治体の事例や課題とも比較しつつ江東区の施策を評価し、将来的な発展可能性を検討します。

(1) DX推進の詳細と展望

江東区のDX施策は、行政内部改革と区民サービス向上の双方を包含しており、総合的なデジタル化戦略と言えます。他自治体では、例えば渋谷区がオンライン手続ポータルを整備したり、千代田区がAIチャットボットで問い合わせ対応を開始するなど個別のDX事例がありますが、江東区はDX推進課を新設し庁内横断で取り組む体制を築いている点で先進的です​

。令和7年度に策定される「DX推進計画」では具体的なKPI設定も行われる見込みで、例えば行政手続のオンライン化率や職員のテレワーク活用率など数値目標を掲げることで進捗管理することが期待されます​

。こうした計画的アプローチは民間企業のDXでも成功の鍵とされており、自治体としても有効でしょう。


他自治体の成功例としては、愛知県や福岡市などが行政手続の100%オンライン申請目標を掲げ着実に実行しているケースがあります。江東区も、まずは区民利用頻度の高い住民票・税証明交付や子育て支援申請等からオンライン化を進め、住民にメリットを実感させることが重要です。その上で、江東区独自の取り組みとして始めるAI検索サービス​は、区民の情報探索時間を短縮し満足度向上につながるでしょう。ただ、新サービスほど利用者への周知や使い方支援が不可欠です。他自治体では高齢者向けにデジタル機器の使い方教室(例:豊島区のICTリテラシー講座)を開催してDX施策の受益者を拡大している例もあります。江東区でもデジタルデバイド対策として、地域の図書館や区民館でスマホ教室・オンライン手続体験会を開催するなど、住民のデジタル活用能力向上施策とセットで進めることを提案します。

行政内部のDXでは、データ利活用と業務効率化が鍵です。江東区は大規模な財政・人口データや事業評価データを蓄積しており、これらを分析して政策立案に活かす「EBPM(証拠に基づく政策立案)」を推進すると一層効果的でしょう。他都市では横浜市がオープンデータを公開し民間と協働で課題解決する試みを行っていますが、江東区も統計データやGISデータのオープン化を進め、スタートアップ企業や大学と協力して地域課題(交通混雑や防犯など)にデジタルで取り組む余地があります。DX分野は技術進歩が早く、ChatGPTのような生成AIの活用も日進月歩です。江東区は今回AI検索を導入しましたが、将来的には区役所窓口業務へのAI補助(問診や書類チェック)や、議会会議録のAI要約、公的文書の自動翻訳など応用範囲を広げられるでしょう。これらには国のガイドライン遵守とプライバシー保護が前提ですが、先んじて実証を積むことで住民サービスの更なる向上が期待できます。総じて、江東区のDX推進は順調なスタートを切っており、今後は住民参加とオープンイノベーションを取り入れることで一層発展し得ると考えられます。

(2) 防災・減災対策の詳細と展望

江東区の防災対策はハード整備とソフト対策が充実していますが、今後の課題や他自治体の取り組みと比較しての展望を考察します。

まずハード面では、新木場防災倉庫の整備によって大規模備蓄能力が飛躍します。他都市では、仙台市が東日本大震災の教訓から複数の備蓄倉庫を分散配置し3日分の物資備蓄を確保しています。江東区も新木場以外に既存の東陽・砂町などの防災倉庫群を持っており、今後は備蓄物資の適正配置(臨海部に食料、水は内陸部に等)を最適化することが課題となるでしょう。また、新木場倉庫完成後は老朽化した倉庫の統廃合も検討されます。広域連携では、隣接する江戸川区・墨田区との間で備蓄物資や避難者受入の相互支援協定を結ぶなど、単独区に閉じない柔軟な防災ネットワークを構築していくことが望ましいです。大規模災害時には東京23区全体、さらには埼玉・千葉との広域応援体制が重要になるため、江東区の備蓄も周辺自治体とシェアする発想が今後出てくるかもしれません。

ソフト面では、要配慮者支援の充実が評価できます。他自治体の成功事例を見ると、大阪市は避難所における女性の安全確保のため女性職員を配置する「避難所運営要員計画」を策定しています。江東区もプロジェクト・スマイルによる物資提案にとどまらず、実際の避難所運営訓練で女性や障害者の視点を取り入れる工夫を継続すると良いでしょう。具体的には、避難所開設訓練に乳幼児連れの保護者や車椅子利用者などを参加させ、用意した備蓄品(ベビーベッドや間仕切り)が有効か検証することなどが考えられます。また、防犯対策物資(防犯ブザーや監視体制)も含めた安心な避難所モデルを示し、他区へも情報発信していくと、防災先進区としての評価が高まります。

情報伝達の多重化については、今後さらなる技術革新への対応が求められます。例えば、5G通信や衛星通信を活用した災害情報提供、あるいはTwitterやLINEなどSNSによる発信も重要です。江東区は安全安心メールや防災アプリを整備していますが、若年層にはSNSの方が届きやすい可能性があります。他区では渋谷区がLINE公式アカウントで防災情報を流す試みを行っています。江東区も多様な媒体を組み合わせ、誰一人取り残さない情報伝達を目指すべきです。特に外国人住民への多言語対応も検討課題でしょう(都内には英語・中国語で防災情報を提供する区もあり)。江東区は2020年大会を契機に多言語防災ガイドを作成していますが、リアルタイム情報も多言語で発信できるよう、システム連携やAI翻訳の活用を検討しても良いでしょう。

最後に、江東区固有のリスクである水害・高潮対策について触れます。防災倉庫や備蓄の強化は地震・水害両方に有効ですが、水害に関してはハザードマップの周知や垂直避難の啓発などソフト面の工夫も重要です。他自治体では荒川下流域の葛飾区が大型水害時に住民を他県に広域避難させる計画を立てています。江東区でも最悪の場合の広域避難シミュレーションや、マンション高層階を一時避難所とする協定締結など、新たな発想が必要かもしれません。幸い、東京都が進める高潮対策や堤防強化計画によりハード整備は進行中ですが、区としては住民の意識啓発と避難訓練の充実でソフト面を補完することが大切です。総じて、江東区の防災対策は極めて充実していますが、広域連携・多様な技術活用・水害対策の深度化といった視点で今後さらなる強化の余地があります。東京の防災リーダーとして、他自治体と情報交換しつつ最善策を追求していくことが望まれます。

(3) 経済政策の詳細と展望

江東区の経済・産業政策は、短期的な生活・経営支援と長期的な成長戦略の両面を備えており、その充実ぶりは特筆されます。他自治体との比較や将来の展望を踏まえて評価します。

まず、物価高騰・景気減速への短期支援について。プレミアム商品券の発行や現金給付、光熱費補助は、多くの自治体で採用されている対策ですが、江東区はその適用範囲と額で積極的です​。例えば、同じ東京東部の墨田区もプレミアム付商品券を発行していますが、そのプレミアム率や発行数は江東区ほど大規模ではありません。江東区は財源に余裕がある分、区民一人ひとり・事業者一社一社への支援インパクトを大きく設定しています。これは生活困窮や廃業を未然に防ぐ効果が高い反面、財政負担も大きくなります。幸い江東区は単年度黒字を基金に積む体質があるため対応できていますが、今後もインフレが続けば追加策の検討も必要でしょう。他自治体では、川崎市が省エネ家電購入補助で間接的に高光熱費対策をしたり、豊島区が子育て世帯への独自給付(商品券)を実施したりと工夫があります。江東区も、現在の幅広い支援に加えて、ターゲットを絞った支援(例えば子育て世帯や小規模事業者への特化支援)を状況に応じて組み合わせる柔軟性が求められます。

次に中小企業の競争力強化策について。江東区は中小企業への金融支援と経営支援を充実させていますが、これを持続的な地域経済の発展につなげることが重要です。他の産業集積地を見ると、大田区は「モノづくり経営者塾」など人材育成に注力し、北九州市は産学連携で中小企業の技術開発を支援しています。江東区も、中小企業のDXや事業改善を支援するだけでなく、将来的には産学官連携や企業間ネットワークづくりに踏み込むとさらなる発展が望めます。区内には中小企業だけでなく大企業の拠点(豊洲・東雲のIT企業等)も多数存在します。そうしたリソースを活用し、ベンチャー企業と町工場のマッチングイベントや、大学(東京海洋大など)との共同研究支援などを行えば、新たなビジネス創出やイノベーションが期待できます。幸い、江東区はテレコムセンター地区に産業振興施設を持ち、スタートアップ支援プログラムも開始しつつあります。令和7年度の予算には直接盛り込まれていないものの、長期計画の中で**「産業の次世代基盤づくり」**も掲げられているため、今後こうした取り組みが進む可能性があります。

観光・シティプロモーションについても展望します。公式Instagram開設​は近年多くの自治体が取り組む手法ですが、江東区は豊富な水辺空間や歴史文化資源(深川江戸資料館、富岡八幡宮など)を有する割に観光地のイメージが弱い面があります。SNS発信を梃子に、「水彩都市こうとう」「アーバンリゾート豊洲」などのブランドを確立し、他区や他県から人を呼び込む戦略が考えられます。例えば中央区は晴海客船ターミナルを活かしてクルーズ観光を推進していますが、江東区も有明や豊洲の臨海部でクルーズ船誘致やマリンスポーツ大会など開催すれば、新たな経済波及効果を生めるでしょう。区が率先して観光資源の磨き上げやイベント開催を企画することで、商業・サービス業の活性化にもつながります。シティプロモーションは短期に成果が出るものではありませんが、DXとも連動して(例:VR技術で観光PRする等)進めることで江東区の魅力発信力を高め、将来的な人口流入・企業誘致にも結び付く可能性があります。


全体として、江東区の経済政策は足元の危機対応と将来への投資バランスが取れており、他自治体と比べても遜色ないどころか先進的な側面があります。今後の発展可能性としては、支援策の効果測定をしっかり行いPDCAを回すことで、より効率的で的確な支援にブラッシュアップしていくことが挙げられます。例えば、プレミアム商品券の利用実績データを分析して地域経済の弱点を把握したり、融資制度の利用状況から業種別の課題を抽出したりといった取り組みです。これにより、次年度以降の予算編成で真に必要な施策にリソースを重点投下できるでしょう。江東区は財政的に恵まれているとはいえ、長期的には少子高齢化で税収減も予想されます。したがって、今の余力を将来への種まきに使い、持続可能な地域経済のエコシステムを構築していく視点が重要です。その点、DX推進と中小企業支援、そしてシティプロモーションまでカバーする江東区の戦略は理にかなっており、今後も内外の成功事例を取り入れながら発展していくことが期待されます。

以上の分析を総合すると、江東区令和7年度当初予算は、健全な財政基盤のもとで未来志向の積極投資を行う攻めの予算と言えます。「みんながつながる笑顔あふれる未来を切り拓く新たなるステージへ」という予算テーマの通り​、DXで行政サービスを革新し、防災・福祉で安心支え、経済対策で地域を興し、区民の笑顔あふれる暮らしを実現しようとする意図が感じられます。財政指標のトレンドは良好で、重点施策も妥当性が高く、他区と比べて際立つチャレンジ精神が光ります。一方で、長期的課題も見据え、施策の効果検証と必要な軌道修正を怠らないことが重要でしょう。江東区はこれまでも行財政改革と新規施策に果敢に挑戦して成果を上げてきました。その強みを活かしつつ、区民ニーズに寄り添った持続可能な区政運営を今後も推進していくものと期待されます。


⑤「江東区令和7年度当初予算」に対する評価概要


上記レポートをCHATGPTを使って、江東区令和7年度当初予算の主なポイントを箇条書きと文章でまとめました。また、NapkinAIを使って図にもしています。

  • 財政健全性:
    ・経常収支比率が適正水準(約70~80%)で、安定した歳入を確保。
    ・十分な財政調整基金を保持し、起債依存度も低いため、将来的なリスクに備えた堅実な財政運営が確認される。

  • 重点施策:
    DX推進: 行政手続のオンライン化、AI活用による業務効率化、区民向けサービスの充実を図る。
    防災対策: 新木場に大規模な防災倉庫を整備し、備蓄体制や情報伝達システムの多重化で災害時の迅速な対応を実現。
    経済政策: 中小企業への低利融資や経営支援、物価高騰対策としてプレミアム商品券の発行など、地域経済の活性化と住民生活の安定を目指す。

これらの施策は、東京23区内の他自治体と比較しても先進的かつバランスの取れた政策展開となっており、安心・安全な暮らしと未来の成長を実現するための区政運営の強みとして評価されています。

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