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雨の町散歩
子どもができてから、フラリを美術館に入ってみることができていなかった。雨のクライストチャーチで行きたかったワイナリーも延期にして、街を散策。観光目的でもなく、ただただ暇を持て余して歩いていた。この町は、雨の日もそれなりの趣があっていい感じがする。
気づいたらアートギャラリーが見えた。ガラス張りの建物は一際目立っていて、いつも気にはなっていた。
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「よし、学生証もできたし割引使って雨宿りしよう」
入ってみると、完全無料。なんだ、もっと早く来てみればよかった。どんなアーティストの作品があるのか聞いてみたが、1人も知らなかった。ここは海外の人もやるが、主なのはニュージーランドのアーティストの作品を展示することらしい。
雨の日の日曜日でもガラガラ空いている美術館。この町の人はあまり美術館来ないのかな?と思いながらも、結構広い会場に満足しながらプラプラしてみる。
ブースに足を踏み入れ、遠目に見て気になる作品がなければスルー。気に入ったり、苦手だなぁと思う作品の前に立ってみる。海外を旅行していて、適当に入ったお店や美術館にいくと「これのどこが好きなんだろ。何が気持ち悪くさせるんだろう」とぼんやり考えてみるのが好きだ。
途中、とても気になった作品があった。明らかに他のと雰囲気が違い、作風も違う。日本語の書が力強く描かれている。
説明板を読んでみると驚いた。
ニュージーランドのアーティストRobin Whiteが日本に丸木さんの原爆画を見に行った時に仕入れたものらしい。数年前に家族と訪れた時の記憶がブワッと蘇り、ここに繋がってるのかと鳥肌がたった。
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そうかぁ、あの作品群を見た人の作品がここに飾っていたんだ。またいつか見に行きたいなぁ。そのまま歩いていると、再び日本語が描かれている作品が。
また丸木さんかな?説明板を見てみるとこんなことが書いてあった。
1942年。北島のFeatherstonにあった捕虜収容所にて、看守1名と日本人捕虜48名が発砲により死去。当時、太平洋諸島で捕虜になった日本兵が800名ほど収容されていた。作品には松尾芭蕉の句「夏草や兵どもが夢の跡」の字が描かれている。
丸木さんとは異なるが、思わぬ歴史を知ることができた。
祖父兄のこと、ブラジルの被曝者のこと、萩の進駐軍のこと。教科書や本からは知りえなかった自分と戦争との繋がりがまた増えた。
世界のあらゆるところで戦闘が行われている現場だけど、目に見えないものも共感できたり、考えたり想像できる人になりたい。人によって必要な時間と余裕が違うんだろうけど。
雨の帰り道、トイレを探していたらライブでジャズが聞こえてきた。覗いてみると、「お金取らないよ、聴いていきな」と椅子を出してくれた。即興で超楽しそうにセッションしているグループ。いちいち当然なのだが、英語の歌が上手。なんでも外でストリートセッションする予定が雨だったので急遽室内を用意してもらったらしい。
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予定なしで町に行くのも、空いているクライストチャーチならいいかもしれない。
おしっこは我慢したが、素敵な日曜日の雨散歩になった。