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警察や弁護士の通訳、実際の業務は①
私がまだまだ若い時、警察や弁護士会で通訳をしたいなと思い、業務登録をしたことがあります。あとから認識したことなのですが、それらは相反する立場の組織なので、双方共にそれは好まない…ということでした。今思えばそうですよね。
で、私が弁護士会に通訳登録し仕事をしたのですが、予想通りというか何というか、警察からは依頼が来ませんでした。
ただ、これから通訳をめざしたい方には材料となると思いますので、少しそのことをお話ししておきたいと思います。
(これから逮捕される可能性のある日本人にも有益かも、です…笑)
1、弁護士会通訳と警察通訳の概要
弁護士会の通訳や警察通訳は、外国人被疑者(テレビのニュースでは容疑者と言いますが、「被疑者」です)や関係者が法律手続きに関与するときに、正確な意思疎通を図るための専門的な役割を果たします。弁護士会通訳は主に弁護士が依頼し、被疑者との接見や裁判の場で通訳を行います。一方、警察通訳は警察が依頼し、取調べや供述調書作成の際に通訳を行います。
実は当時、私の住む地域には、日系ペルー人やブラジル人が山のように来て、日本人が嫌がる3Kの仕事をしていたのですが、結構な確率で偽の戸籍を使ってビザの取得をしていたので、言い方は悪いのですが「ビジネスチャンスがあるかも」と思ったのです。
いずれにしても、ここで押さえておきたいびっくりポイントは、一般社会で使われている語彙と、テレビドラマで見たりニュースで使われている語彙とは違うということです。
2、通訳者の業務内容
弁護士会通訳の業務
弁護士が被疑者と接見する際の通訳
証拠や証言の確認
法律用語の説明と伝達
裁判での弁護人・被疑者間の通訳
ここでは、弁護士や本人が話したこと以外の、自分の意思や感想を述べては絶対にいけません。
警察通訳の業務
逮捕後の取調べ通訳
供述調書の翻訳
逮捕理由や権利の説明
法執行機関とのコミュニケーション支援
いずれも、カタコトだったり、曖昧なことがあっては決して許されない非常に難しい仕事だなと感じました。もし誤った通訳をした場合、その人の人生を滅茶苦茶にしてしまう可能性があるからです。
3、依頼の流れ
弁護士会通訳の依頼プロセス
弁護士が通訳者を必要と判断し、弁護士会を通じて依頼→つまり、弁護士会に通訳として登録しておくことが必要です
指定の日時・場所で被疑者と弁護士が面会し、通訳を実施→警察署や裁判所の前(やロビー)とかで待ち合わせします
警察通訳の依頼プロセス
外国人被疑者が逮捕され、警察が通訳を必要と判断
警察署または拘置所で取調べや供述調書作成のために通訳者が呼ばれる
4、被疑者との面会
弁護士会通訳の場合
被疑者は警察署または拘置所に収容されているため、接見室で弁護士と面会
弁護士が必要な情報を収集し、被疑者の意向を確認
警察通訳の場合
取調べ室で警察官が尋問を行い、それを逐次通訳
被疑者が供述調書を作成する際の支援
上記のことについて細かいことを書いていたのですが、すごく長くなってしまったので別の記事にしたいと思います。
5、通訳時に話す内容と注意点
話す内容
逮捕の理由や手続き
被疑者の権利(黙秘権、弁護士を呼ぶ権利など)
弁護士との会話内容
供述内容の確認と翻訳
注意点
正確性:一言一句正確に翻訳する
中立性:個人的な意見を交えない
秘密保持:通訳内容を第三者に漏らさない
6、求められる…というか、ないとダメなスキル
言語能力:専門的な法律用語を正確に理解し、伝えられること
法律知識:日本の刑事手続きや弁護士倫理を理解
弁護士会や警察の登録通訳者リストに登録
弁護士会通訳と警察通訳は、日本で暮らす外国人が適正な法的手続きを受けるために不可欠な存在です。特に、法律の理解が不十分な被疑者にとって、通訳者は重要な役割を果たします。正確な通訳を提供することで、公正な司法手続きに貢献する職業です。
次の記事では、警察署内、検察庁での実際に起こっていることについてお話しします。