見出し画像

闇バイト「購入代行」とは何か

先日書いた「闇バイト」に関する記事は非常に好評を博した。
若い世代から「これって闇バイトですか?」「これは違いますよね?」と連絡をたくさんもらったが、見事なまでにほぼ全て闇バイトであり、犯罪に巻き込まれようとしている若い世代が多くいることを改めて実感した。

彼らを止めることで阻止できた一方で、いろんな闇バイト業者と連絡を取り合って、私も正直知らなかった発見もあった。
購入代行についてだ。
闇バイトなのかそうでないのか、違法なのかどうか判定がしづらいバイト募集である「購入代行」というものがある

特にグレー感が強いものについて、闇バイト業者に何度も問い合わせをして、その内容についてだいぶ明らかになってきたのでここで紹介をしたい。
結論から言うと、「購入代行」は全部闇バイトであり、違法性が強いものが大半であるので、ぜひ学んでいってほしい。

購入代行バイトとは


Xで「購入代行」とか「買い子」などと募集をかけている業者がいくつもある。

「代理で物を買うだけで3〜5万円即日で差し上げます!」


みたいなことを言ってくる。
こんなやつだ。

数時間で数万円払うという。時給1万円だ。
買うものとして言われるのはApple Airpodsや、NIntendo Switch、PS5など、人気商品で、新品でも転売価格が高いものが多い。

「あ、なるほど!レアな人気商品を買って、それを業者がメルカリかどこかで転売して利益を出すお手伝いなんですね! 列に並ぶだけで数万ならありだなー」

なんていうお花畑なことを考えたあなたは、この記事を最後まで読んでほしい。


これらの製品は、確かに発売当時は品薄で全く手に入らなかった記憶がある人もいると思う。
そういう私もSwitchが発売した直後くらいにビックカメラでたまたま発見しその場で買って、メルカリで転売して1万円くらい稼いだことがある。
メルカリに出品して落札されて箱をコンビニから出荷するのにかかる時間はせいぜい1時間もないから、時給1万円の割の良い仕事であった。

「なるほど、そうやって個人でも1万円稼げるなら、組織的にやってる業者ならもっと稼げるから1万円をバイトに払っても利益が出るんですねー!」

などと考えないでほしい。そういうお花畑バカを闇バイトは狙っている

いくらAirpods ProやNintendo SwitchやPS5が人気の製品とはいえ、発売から時間がたった製品であって、発売当初の熱気はもうない
メルカリで価格を調べればわかるが、AirpodsもSwitchもPS5も、定価に近い価格で取引されているとはいえ、定価より上値で取引はされておらず、プレミアはついていない

となると、「購入代行」を依頼する業者は一体何をして儲けるのだろうか。

犯罪に加担することになる流れを何パターンか説明しよう。

購入代行詐欺手口1:気づかぬうちに受け子

  1. 募集: Twitterなどで、「購入代行」「簡単作業」といった言葉で募集が行われる。DMで来る時もある。

  2. 指示: 闇バイト業者から、購入する商品、購入場所、受け取り方法などの指示を受ける。ポチポチ購入するだけで1〜3万もらえると言われる。

  3. 購入: 指定された商品を、提供されたクレジットカード情報やPaidyアカウントなどを使って購入する。オンラインショッピングの場合もあるし、カードと暗証番号を渡されて実店舗での購入を指示される場合もある。

  4. 受け渡し: 購入した商品は、指定された場所に送付したり、直接に手渡したりする。場合によっては、海外への発送を指示される。

  5. 報酬: 購入金額の一部が報酬として1〜3万程度が支払いされる。

  6. 逮捕: そしてあなたがある日警察に逮捕される

一見、指示に従って購入しているだけでなぜ逮捕されるのかわからない人もいると思う。

しかし、この時「3.購入」のところであなたが渡されたのは、闇バイト業者保有のカードではなく、彼らが高齢者への詐欺とかスキミングなどで違法行為で盗んだ全くの他人のクレカやPaidyアカウントであり、あなたはそれを使って商品を購入し、犯罪者に送っている状態になっている。

警察からすると、盗難カードを使ったのはあなたに見えるし、「騙されたんです!」と主張しても垢の他人のクレカを使う事自体ルール違反であるので、犯罪組織の一員と思われて厳しい取り調べが行われることは間違いない。場合によっては逮捕されて仕事も解雇されるだろう。

そして、1〜3万円と言われている報酬も、実際は払われないことも多い

闇バイト業者というのはあらゆる犯罪をしているが、高齢者をターゲットに銀行員や警察を名乗ってキャッシュカードやクレカなどを騙し取り、暗証番号を聞き出したりすることが多い。このような詐欺を特殊詐欺という。
電話をかけるのは「かけ子」といい、カンボジアなどか詐欺電話をかけまくっている。

そして、ここでだまし取ったカードやお金の受け取り役を「受け子」という
警戒した人が通報した場合に警察が現地に張っていたりする場合もあり、最も逮捕されやすいので、捨て駒の闇バイトの若者が使われる

受け子が受け取ったキャッシュカードやクレカを受け子がそのまま使うと足がつきやすくなるので、闇バイト業者は受け子に対して、そのカードを別の人間に渡せと伝える

そこで今度はキャッシュカードやクレカで金を引き出す役割、通称「出し子」である。
これも次につかまりやすい。
なぜならATMには監視カメラがあり、顔が撮影されてしまうからだ。不審に思った店員が店で通報することもある。

そして「出し子」は、キャッシュカードの場合は、ATMで金をおろし、闇バイトの業者にどこかで現金を渡し、そこで分前として金を貰う
出し子が捕まったときに警察に「どんな顔のやつに渡した?」と聞かれても答えられないように、大体はテレグラムなど暗号通信アプリで指定したトイレの個室に投げ入れるなどして渡す

この「出し子」は明らかに犯罪で違法性が高い行為だとバレバレな行為なのだから、いくら金に困っているやつだとしても、「これ違法じゃね?」と思って心の良心が躊躇させてしまう。そう、これじゃ「受け子」の闇バイトが集まらない。

そこで、「購入代行です!」などと宣伝し、「代わりに買ってもらいたいんですよ、1人じゃたくさん買えなくて」「転売市場で価値があるんです」とか適当な嘘をついて、あたかも自分のカードかのように盗んだクレカやキャッシュカードを渡して、それで商品を買わせる
時には、まずATMで現金を引き出させてその現金で買わせる。
現金を持ち逃げしろと言うと犯罪だとわかるが、ただ商品を買うだけだと犯罪だと馬鹿は気づかない。
根っからの悪人闇バイト応募者が集まらないなら、比較的お花畑思想の闇バイト応募者を「受け子」のような扱いにするのだ。

そして商品を物理的にカメラに映らないようなどこかで渡すか、指定の場所に隠匿した方法で送らせる。

こうして、盗んだカードを使って闇バイト業者はApple AirpodsやSwitch、PS5などを手に入れた。
なぜこの3つを買わせるかというと、これらが中古市場で潤沢な流通量があり、かつ国内・海外どこでも同じものが使えて需要が強いからだ。
転売が非常にしやすく、足がつきにくい

こうして、1人の犯罪歴もない善良な心を持ったお花畑な若者が、受け子、つまり犯罪者に仕立てられ、カードを盗まれた被害者には多額の請求書が届くことになる。
そう、買うだけで時給1万円のお金がもらえるなどという美味しい話はないのだ。

購入代行詐欺手口2:光回線契約詐欺

次のパターンは、光回線契約やスマホ契約を使った闇バイト詐欺である。
今度は他人名義のクレカでもなく、盗んだキャッシュカードでもない

闇バイトの募集には

「家電量販店で簡単な契約をしていただきます!」
「端末の購入をしていただきます。報酬は1時間で1万円です!」

などと書かれている事が多い。
当日、闇バイト業者から指示されるのはこんな内容である


  1. 闇バイト業者から、家電量販店に行き、光回線を契約するように言われる

  2. 光回線を契約する時に、PS5やNintendo Switchを一緒に無料で買えるので買ってきてほしいと言われる

  3. 光回線は翌月解約してもタダで解約できると言われる

  4. 同じように光回線を複数の会社で1日で大量に契約し、同じようにPS5やNintendo Switchを無料で買ってきてくれと言われる

  5. 買ってきたPS5やNintendo Switchは闇バイト業者にどこかで渡す

  6. 逮捕: そしてあなたがある日警察に逮捕される


これは1−2年ほど前から流行っている方法であるが、光回線のキャッシュバックキャンペーンを狙った詐欺行為である。
家電量販店に行って冷蔵庫やテレビなど家電を買おうとすると、なぜか発送の申込手続きなどをしている時に途中でSoftbank光の営業マンがやってきて、

「Softbank光を契約してもらうと、この冷蔵庫4万円引きになるんですよ!どうですか?」

などと営業してくることがある。
光回線というのは、一度契約してしまったらそう簡単に乗り換えをしない(乗り換え手続きがめんどくさい)ので、新規獲得にコストをかけてでも契約を取りに行く意味がある典型的な商品である。
よって、特にSoftbank、場合によってはNTT OCNとかSonetなど通信会社は、「光回線を契約すれば家電の代金から4万引きます!」みたいなことをよくしている。
私はこないだ冷蔵庫を買おうとしたときにもソフトバンクの営業マンがしつこく営業してきてめんどくさかった。

通信各社は家電量販店で家電を買う顧客に対して営業をかけさせてもらえるように、量販店と合意している場合が多い。家電量販店も何らかマージンがもらえるか、人手不足の補助にでも使っているのだろう。

4万円も引いて大丈夫か、と思うが、光回線はだいたい4000円/月であるから、1年使ってもらえれば5万くらいになるので、翌年からはチャリンチャリン利益が出ることになる。よって、各社は破格のキャンペーンをやる意味がある。

この家電を4万円引きますというキャンペーンはあらゆる家電商品に対して使えるので、闇バイト業者は光回線を契約させ、4万円もらえるのでそれで転売しやすい電化製品(PS5やSwitchなど)を買わせる。
通信会社1社に1人で複数契約は出来ないので、Softbank, OCN, Sonet, Biglobe….とたくさん契約させる。
すると、5回線契約すれば20万円分の家電値引きになるので、つまり20万円分のPS5やSwitchが手に入る。

そして頭お花畑の闇バイト参加者は、3万円もらってニコニコして帰る。3時間もやれば5回線くらいはいけるだろう。時給1万円だ。

「光回線解約すればお金は取られないから大丈夫」

と闇バイト業者に言われているのでのほほんと3日後くらいに通信会社に解約の電話をするのであるが、当然通信会社も1回線あたり4万円もお金を負担しているので黙っているわけにはいかない

翌日から鬼電がかかりまくってくるが、闇バイト業者からは

ここから先は

2,173字 / 1画像

ゆな先生日記 基本プラン

¥500 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

頂いたサポートのお金は、取材や海外の文献の調査などに使わせていただきます。サポート頂けるのは大変うれしいので、これからも応援いただけるとうれしいです! ゆな先生より