着物知識その9 「着物のルールに自由はないのか」
今回は着物の着こなしについて良く聞かれることを含め、すこし時代背景から、着物のルール触れていきます。
1 着物にルールはあるのか
これはあるようで無いです。
というのも、これに関してはすこし時代背景から書いていきます。
まず、着物のルールを守りなさい!という言い方は間違いです。
伝統がとか言う方もいますが、基本、そういう方が言うルールに関するものは、日本国の伝統というには、押しが薄いのです。
たとえば留袖。
いまでは結婚式にお母さまかおば様、仲人がという感じですが、これ、もともとの留袖は江戸時代に嫁入り前の振袖を結婚後には短くした着物のことを留袖といい、さらに今ある留袖の裾のみの模様のものは芸者が発端です。
この時点で、すでに今の留袖とは流れが違います。
また、黒留袖が主流になったのは西洋文化からなるブラックフォーマルから来ています。これがだいたい明治時代ですね。
まあ、100年ぐらいで日本の守らなくちゃならない伝統だ!というのは「薄い」話ですし、そもそも西洋文化の影響から来てますから、なおさらですよね。
と、その他の着物のルールに関してもだいたいが明治時代なんです。しかもこれらの発端は皇室令から来ていて、皇室や貴族にあこがれた人たちに、商売人が「高く売れるぞ」と持ってきたルールでいわば「特別」を売りにしたわけです。
さて、その皇室令も戦後に廃止になりましたし、これを庶民が守らないといけないというのはないわけです。
でも、そのままそれをルール化したままのほうが儲かると考えたのが、当時の百貨店や呉服屋、着付けを教える側なわけです。
着付けの作法なども細分化し、高級な上流階級っぽい雰囲気を庶民にも進めていわば「憧れ」でお金を稼いだわけです。
なりたちがそんななので基本的には「守る」必要はないのですが、すでに現代ではこれが常識となっています。
なので冠婚葬祭ぐらいは守るほうが、体裁的にもいいし、見ためもいいし、後ろ指もさされないということで「無難」なわけです。
そして、日本人は一般常識を守るほうが「かっこいい」と思ってる人が多いですから。
※ただし、一般常識というのは大多数が認識しているところから、はじき出されるものなので、着物のルールに対して認識が薄い現代において一般常識とは言い難いものがありはします。
ちなみに、着物の伝統というのは、今あるような凝り固まったルールではなく、はるか昔からある季節遊びや色遊び、意味遊びを着合わせにもってきて、おしゃれに着こなすというのが伝統であって、今ある「この着物にはこれ!その帯の柄にはこれ!」という考え方が伝統ではありません。
そもそも、着物は庶民の遊びです。
特に華やかな着物文化が華開いたのは江戸時代。
その時は、お金持ちも含め江戸庶民が大いに着物でオシャレをしました。そのファッションリーダーは遊郭の太夫や歌舞伎役者になり、またその人たちも注目を浴びるため、次々に新しい斬新な着方や着合わせを考えたのでした。
庶民はそれを自分でできる範囲で着物に工夫し、近づこうとしたのです。
その文化も質素倹約によってなりを潜めますが、それでも庶民は、裏地に遊び心ある妖怪の絵を染めたり様々な工夫をしたのでした。
もし、伝統をというのであれば、その時代の遊び方が着物本来の伝統と言えるでしょう。
つまり、普段、遊びに着物を着ている人にたいして、文句を言うのは間違っているのです。
せいぜい冠婚葬祭ぐらいまででしょう。
2 着物の遊び方
ただし、着物を着るにあたり、遊びのルールというか「こう考えたほうがかっこいい」という考え方があります。
たとえば
季節は帯から先取り、8月に紅葉のがらを持ってくるとか、11月に雪文様を持ってくるとか、
同系色を合わせて上品に、コントラストを入れて可愛く
梅の着物にうぐいすの帯で意味遊び
とか、こう遊ぶ方がよりおしゃれという考え方はあります。
逆にこれはダメ!というのは遊びで着る場合は「無い」と言うべきでしょう。
たしかに、紬の着物に刺繍の帯は・・・とかありますが、これも決して「ダメ」ではなく、「合わない」というだけです。
これを人によっては「ダメ」と言うわけです。
決して歴史から行けば「ダメ」はないんです。
ただ「かっこ悪いよ」というだけなのですね。
そして美的センスも時代によって変わります。
そういった部分にどうして他人が「ダメ」と言えるのでしょうか。
3 「ダメ」が着物文化を衰退させている。
この「ダメ」が着物文化の衰退を招いたといっても過言ではありません。
この「ダメ」によって着物は庶民の遊びから、小難しい知識の必要なものであって、商売人などの金儲けの道具になりました。まだ、景気のいいころはよかったのですが、これが景気が悪くなると、さらに裏目に出てきます。
というのも、途中から着物は「めんどくさいし、高いし、マナーがうるさいし気軽に着られない」になったのです。
そうなると、買う人が限られてきて、また洋服のほうが楽だとなっていきます。
そして景気が悪くなると、これに拍車をかけて売れなくなり、結果、今や着物の生産は最盛期の60分の1程度で、こうやって書いている間にも倒産しているところがあるかも?という現状です。
今、現在、着物文化が保たれているのは、USED着物が流行ったからであり、それも数が減ってきています。
そんな状態なのに、着物の着合わせなどに文句をつけて、着物を着たくないという人を増やし続けている方は、着物の伝統を守っているのではなく、それどころか、着物文化そのものを衰退させているということに気が付いていません。
もし口を出すなら出すで「それは間違い!ダメ」ではなく「こうやって合わせると楽しいよ」という教え方をするべきです。
まあ、たしかに振袖を崩して着ると~というものもありますが、それでも「着物を着ない」よりマシであるというのが今の現状であると思ってください。
と、走り書きになりました。
本当はもっと細かく書いたものを用意してましたが、完成後、間違って消してしまいましたので、今回は走り書きで終わります。
■今回のまとめ
・冠婚葬祭以外のルールは守らなくてもいいし、自由に着る人を一人でも増やすことが着物の文化と伝統を守ることである。
・遊び方はおぼえているほうがオシャレである。
・なんでもダメは着物業界を衰退させている。
・着物は売れていかなければ作り手が消滅し、昔からある着物作りが消滅してしまう。
といった感じです。