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フィギュアスケートは考察系スポーツである②技術点と演技構成点って何?

前回、フィギュアスケートは

技術点と演技構成点の合計

で得点が出る事をお話ししました。

今回は、これを具体的に解説します。

ペアやアイスダンスというカテゴリーもありますが、ここでは男女シングルに絞ります。



「転倒した選手が、転倒しなかった選手に勝つのはおかしい」

というコメントをよく見かけます。

こういうコメントを書く方は、多分、普段フィギュアスケートをあまり見ない方なんだろうな、と思います。

このご意見、半分間違っていて、半分正しい。


フィギュアスケートの今の採点ルールは、

選手の演技、プログラムを多角的に評価しよう

という理念に基づいて作られています。

転倒せずに、ミスせずに滑る事だけが評価基準ではない

という事です。

だから、「転倒した選手が転倒しなかった選手に勝つ」という事象が頻繁に起こり得ます。


冒頭で、フィギュアスケートの得点は、

技術点+演技構成点

で算出されると言いました。

※追記

正確には、
技術点+演技構成点+ディダクション
で算出されます。
ディダクションとは、違反行為に対する減点です。
技術点、演技構成点と比べると、総得点に与える影響は小さいので、今回はディダクションは省いて説明します。


技術点、演技構成点とは具体的に何か?



●技術点
 TES(テクニカルエレメンツスコア)

ジャンプ
スピン
ステップシークエンス
コレオシークエンス
これらをエレメンツ(要素)と言い、技術点はこのエレメンツに対して与えられる得点です。

技術点は、基礎点+GOE(出来栄え点)で算出されます。


◎基礎点

基礎点は、あらかじめ難易度に応じて設定されている点です。

例)
ジャンプの基礎点
 トリプルアクセル 8.0
 ダブルアクセル  3.3
 3回転ループ   4.9
 2回転ループ   1.7

スピンの基礎点
 レイバックスピン(レベル4)   2.7
 レイバックスピン(レベル3) 2.4
 足替えコンビネーション(レベル4)   3.5
 足替えコンビネーション(レベル3)   3.0

ステップシークエンスの基礎点
 レベル4     3.9
 レベル3     3.3
 レベル2     2.6
 レベル1      1.8

コレオシークエンスの基礎点
 3.0(一律)


◎GOE(出来栄え点)

GOEとは、ジャンプ、スピンなどのエレメンツの出来栄え=質の良し悪しに対する評価です。
-5から+5までの間で、1刻みで評価判定します。
ミスがあった時の減点幅は、採点ルールの中であらかじめ設定されています。
例えば転倒は、基本的にGOE-5の評価となります。

複数の演技審判が出したGOEのうち、最大値と最小値をカットし、残りの平均値を算出します。

例)
演技審判が5人だった場合で、
2人が+3、別の2人が+2、残る1人が+4
のGOEを付けた場合、
最大値+4と最小値+2をカットし、
残る+2、+3、+3の平均値を算出
 =2.67(小数点第3位は四捨五入)

このGOE平均値を、点に換算したものが出来栄え点となります。
GOE1=基礎点の0.1倍となります。
(コレオシークエンスのみ例外で、GOE1=0.5点で計算します)

例)
トリプルアクセル(基礎点8.0)のGOE平均値が2.67だった場合
8.0×0.267=2.14(小数点第3位四捨五入)が、出来栄え点となります。

トリプルアクセル(基礎点8.0)に対して、
5人の演技審判のGOE平均値が2.67だった場合の技術点は
 基礎点8.0+出来栄え点2.14=10.14点
となります。



⚫️演技構成点
 PCS(プログラムコンポーネンツスコア)

ジャンプなどのエレメンツを含めて、演技全体、プログラム全体を3つの視点から評価して算出される得点です。
3項目それぞれ10点満点、0.25点刻みで評価判定されます。

10点満点×3で合計30点満点。
この数字に、
カテゴリー(男子シングル、女子シングル、ペアなど)と
SP(ショートプログラム)、FS(フリースケーティング)
ごとに決められてる係数を掛けて算出された点が、そのプログラムの演技構成点となります。

3項目の合計(30点満点)に対する係数
 男子シングル(SP)          1.67     50点満点
 男子シングル(FS)          3.33    100点満点
 女子シングル(SP)          1.33     40点満点
 女子シングル(FS)          2.67     80点満点

男子シングルのSPなら、30点満点の1.67倍なので50点満点になる、という事です。

男女、SPとFSで係数が異なるのは、技術点と演技構成点が同じくらいになるように、というコンセプトで設定されているためです。
男女差別じゃないですよ😊


3項目それぞれの解説は、ルールブックそのままだとわかりにくいので、私の解釈でまとめています。大筋では合ってると思いますが、細かい所で間違ってたらごめんなさい。



・構成(コンポジション)
 スケートを通して音楽やプログラムのテーマを表現するための、あらゆる工夫(振り付け、動きのバリエーション、空間やリンクの使い方など)に対する評価

・演技(プレゼンテーション)
 パフォーマンスの出来不出来を評価するもの。
 「音楽と構成を理解し、心を込め、全身かつ全力でそれを表現できているか」(J.SPORTSの競技解説から引用)
 転倒など、演技の流れが止まるような大きなミスがあった場合は、ここの評価が大きく下がります。

・スケート技術(スケーティングスキル)
 文字通り、スケートの技術。
 フィギュアスケートの全ての要素の土台となるものです。
 私は、スケートのコントロール能力と解釈しています。そう考えると理解しやすいので。
 スピードコントロール、ボディコントロール、エッジ(スケートの刃の部分)コントロールなど。
 この能力に長けていると、無駄な力を使わずに伸びのある美しい滑りが出来、全身を大きく使った豊かな表現が出来ます。


⚫️まとめ

フィギュアスケートの得点は、

技術点(基礎点+出来栄え点)と演技構成点の合計


基礎点=難易度
出来栄え点=質
演技構成点=プログラム全体の出来

難しい技をやれば良いというものではない、
ミスなく滑れば良いというものでもない、
一つ一つの技も大切、
プログラム全体の流れやまとまりも大切、

どれか一つ秀でているだけでは勝てない

なぜなら、フィギュアスケートの採点ルールは

選手の演技、プログラムをいろんな角度から、いろんな視点から多角的に評価しよう

という理念で作られているから。


だから、



転倒した選手が転倒しなかった選手に勝つのはおかしい


事はないのです。


でも、こうした「素朴な疑問」は無視できない、無視してはいけない。

採点ルールに照らせば見当違いの意見ですが、

同時に

採点競技の弱点、問題点、本質を突いた意見

だと思うからです。



続く

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