てんとそらの日曜日
天ちゃんと空くんの日曜日はとてもいそがしい
天ちゃんは朝からスイミングスクール
空くんは野球の練習に行っている
お休みの日はほんとはたくさん遊びたい
みんなそう?
なのにずっといそがしい
2人はあそべない
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「天はね水の中でおもうの。きっと魚もイルカも好きだからおよいでるんじゃないって。」
今日もそう思いながらバシャバシャと水面をすすんでいる
天ちゃんの前には、みどりちゃんがおよいでた
天ちゃんは水をかく手をぐーんとのばした
何度かくりかえしてついにやった!
その瞬間みどりちゃんのバタ足が止まり
ゴジラのように立ちあがると
ふりむきながら水中からあらわれて
天ちゃんに両手をあげて向かってきた
思わず天ちゃんも立ちすくむしかない
![](https://assets.st-note.com/img/1737216179-s4rTiIy3PufqUclL1pJxaNGV.png?width=1200)
そう、天ちゃんは前をおよぐ
みどりちゃんの足のうらを
こしょこしょしたかったんだ
みどりちゃんゴジラは言った
「てんちゃん。お水飲んじゃったじゃない」
笑う天ちゃんを見てみどりちゃんの
ふくれてたほっぺたがちょっとしぼんだみたい
それを見てまた笑う天ちゃんをみて
みどりちゃんは思ってた
“ちょっとはおもしろかったけど
先生は水の中でふざけるのはダメって言ってる”
「天ちゃんだめだよ。水の中でふざけちゃ」
まだまだニヤニヤの天ちゃんは
「?、なんで、みどりちゃんもわらってるのに」
そこにスイミングの先生がやってきた
「2人とも途中で止まらないよ」
{すとっぷ}
![](https://assets.st-note.com/img/1737217770-YP7S0g68RwrEGvzeqB1ylunL.png?width=1200)
天ちゃんは自分がなんで?のはてながいくつもたまると
時間がとまるんだ
そこから時間を逆まわしして
?のタネを見つけるんだよ
“なんで水の中にとまってはだめ“
“なんで水の中でおふざけはだめ”
なんで、、、
天ちゃんはスイミングが始まる前のプールサイドにいます
先生はみんなで準備運動をしながら
生徒たちの顔をじろじろと見ています
いつも先生はそうしています
そしていつも同じことを言います
「みんな今日はどこか痛いとこないですか」
「ご飯食べてきましたか」
「よくねむれましたか」
そう言って今日は大勢いるので順番に
おしゃべりしないで泳ぎましょうと言います
そしておしゃべりしたり
ふざける人がいるとすぐにやってきます
スイミングって始めたときは
いっぱい遊んでおふざけや
ジャンプなんかもあったのに
今はいっつも
順番にはじっこまで泳ぐだけ
ごはん食べてきたかって
なんで聞くの?
なんで?
ここはお部屋の中だ
天ちゃんはまた別のところにいました
あれ、スイミングの先生がたくさんいる
校長先生が話してる
あたしのみなみ先生もいるじゃない
ちょっとむずかしい顔して一生懸命何か
書いてるみたい
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「みなさんに今日は大事な注意事項があります。昨日つぼみクラスの子が2人ケガをする事故がおきました」「原因は1人の子が急に逆方向に進み始めたことで後ろの子と頭をぶつけてしまったことです。ぶつかられた子は出血しましたが幸い意識などに問題なくすぐに家に帰ることができました」
みなみ先生は書くのをやめました
校長先生はみなみ先生に向かって言いました
「どうすることでこれを防ぐことができたと思うかな」
みなみ先生は自分の書いていたノートを見ながら
考えているようでした
「泳いでるそばにいて声をかけるのはどうでしょうか」
みなみ先生の答えに校長先生は何度かうなずき
となりのダイゴ先生ににも同じことを聞きました
ダイゴ先生はすぐに答えました
「逆に進んだ子に注意して、あぶないからぜったいしないように教えるのが一番です」
校長先生はまたフムフムといったようにうなずいています
そしてゆっくり校長先生は話しはじめました
「みなさんはスイミングスクールのインストラクターです。インストラクターとはもちろんスイミングの技術を生徒さんに教える人のことです。しかし、同時にあなたたちはたいへんな責任を負っていることを思い出してください。人を水の中に入れているんです。泳ぎを教わりにきてる人をです。人間は水の中では息ができません。そんな当たり前のことを今は思い出してほしい。水中では生きていけない人間はすなわち水中で死んでしまうこともあるということを当たり前のことではなく、生徒たちにわかってもらえる話をしてください。」
校長先生の話はそこからしばらく続いた。
みなみ先生はちょっとこわいかおをして聞いていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1737217022-JRzSwqgPY36GfeiWs8IBnUZ1.png?width=1200)
次に天ちゃんがいたのは
ある日のスイミングの前の体操のときになっていた
みなみ先生はいつものようにジロジロ顔をのぞきこんで
いつもの質問をしていた
そしていつもよりもちがう質問をはじめた
「みなさんがんばっていますが、このなかにがんばってないよってひとはいますか?」
「がんばってない人がいたら聞いてください。ふざけるのだけはやめてください。」
「今日はつかれててがんばれないよって思ったらわたしにいってください」
「もしもの話をします。でもそれはぜったいにダメなもしもの話しです」
「ここで水の中に入ったらいつも思い出してください。みんながいるスイミングは水の中では生きられない人間が水の中で生きる方法を覚えるところです。そうそれがスイミングです。どんなにクロールが早くても、どんなに長く息をとめられても、ほんの一瞬のおふざけで、おぼれたら、、、生きていけなくなることもあるかも」
みなみ先生は大きく息を吸ってふーっとはいていました
「ダメなもしものお話でした。そしてもう一個すてきなもしもがあります。みんながスイミングを続けるとお魚やクジラのように水の中でいっぱいいっぱい楽しいこともできます。すてきもしものためにはしっかりスイミングを練習します。私のいうことがわかった人だけが今日は水の中に入ります。もしよくわからないなって人がいたら今日は水に入らないで見ていてもらいます。それじゃあ最後に先生がおふざけはダメって言うからやっちゃいけないと思った人は手をあげてください。」
何人かはまわりをキョロキョロしたりしていましたがだれも手はあげませんでした。
先生はにっこりしてまたみんなの顔をのぞきこむと
大きくうんうんとうなずいて言いました
「さあ、みんなで水に入りましょう」
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種が大きく光っています
![](https://assets.st-note.com/img/1737217885-uGzTb5WOHJ4f8D6p0Q21xZlF.png?width=1200)
天ちゃんの顔をのぞきこんで
ゴジラのようにたっていたみどりちゃんは
先生に声をかけられ
やれやれといった顔でまた泳ぎはじめました
天ちゃんも後を追って泳ぎはじめます
はじっこまで泳ぎきった天ちゃんは
ふりかえってみなみ先生を呼ぶと言いました
「ごめんなさい。ダメって言われたからじゃないよ。」
![](https://assets.st-note.com/img/1737217510-0PQcl38ELun1GfCKdOhRgerN.png?width=1200)
おしまい 今日もありがとう