イギリス生活3&4週目、雑感
イギリスで働き始めてから1ヶ月が経った。
日本にいた時よりもかなり余裕があり、あっという間ではなくしっかり"1ヶ月が経った"なという認識だ。リスニングの理解力は1ヶ月で上がったと感じるし、日本語をなるべく介さず英語で処理しようと思っているが、この件についてエジプト人の同僚と話したところ、やはり彼もアラビア語で考えてから英語に変換していると言っていた。
自分に関係する外来、手術室、病棟はある程度理解した。だが、未だに院内の全体像は分からない。でもそれは患者さんも同じなよう。私も職員証をつけているためよく場所を聞かれるが一緒に場所がわかりそうなスタッフを探しては聞いて、覚えている。案内表示がわかりづらいのもあるが、日本以上に横方向に増築しているため複雑な配置になっている。
【外来】
外来の種類にもよるが、1人10-15分の枠で設定されており、認知機能低下や精神疾患等で通常よりも時間がかかる患者さんには2倍の時間で設定されている。日本のように枠外に入れることはほぼないため、1人の患者さんに割ける時間に余裕があるはずである。しかし毎回担当医が変わるため過去カルテを読まなくてはならず、"サマリ機能""付箋機能"もない。2つ以上疾患が併存しているとそれぞれの専門外来のカルテが混ざっているため更に時間がかる。OCTやoptosの読み込みにも時間がかかる。
問診でも患者さんの理解度、キャラクターを感じながら前医との整合性を取らなければいけない。大学病院だと毎回担当医が変わることはよくあるが、全ての患者さんで生じるため慣れるまではまだしばらく時間がかかる。
薬の使い方(抗菌薬をどれくらいの頻度、期間で使うか、T&Eはどうやって進めるか)等は院内/地域/イギリスのガイドラインがあるため、現在進行形で勉強中である。角膜外来の場合、ドライアイの診断基準が違う&使える薬剤が違うから始まり、フックス内皮ジストロフィーがゾロゾロいるなど、コンサルタントと意見が色々合わず、よく日本で専門医取れたね??(とは言われてはいないが)と言われやしないかヒヤっとした。
全く面識のない患者さん同士が待合室で話しているのも日本と異なる。患者さんを呼び入れる時に夫婦や家族だと思い一緒に呼び入れようとし、「何で私も入らないといけないの?」と怪訝な顔をされ、全くの他人だったと判明することが何回かあった。
【手術】
まだ定期で手術があるわけではないが、白内障手術のフェイコマシーンの設定が皆さんハイパワー設定であることに唖然としている。アルコンのセンチュリオンが採用されており、これは日本でも使っていたが、IOPは42-48mmHgで行っていた記憶がある。最近はactive sentryもあるため30mmHgくらいでも安定したオペができるのではないかと思うが、今の施設では灌流圧が一番低い術者でも55mmHg、高い先生だと70mmHg近くもいた。勿論吸引流量や吸引圧も強め、トーショナルも80%くらいが初期設定である。supracapsular phaco techniqueで処理する術者が多いのも一因だが、もう少し"マイルド"な設定にすればいいのでは・・・と思ってしまう。
緑内障外来で陪席していても眼圧に対する認識は日本とは異なるように思う。日本ではNTGメインで、しかも大学病院だと1桁〜low teenを必要とする患者さんも多い。勿論、高眼圧症だけの人にどこまで治療するかという問題はあるが、たとえ視神経症がはっきりしなくても中心角膜厚がやや厚くても、>30mmHgを一度も眼科医が診察せず、診察間隔や初診までの時間が長いことにはやや不安と怒りを感じている。果たしてこの感覚がどうなっていくのか・・・
【電子カルテ】
私の働いている施設ではCernerという電子カルテを使っているが、これはイギリスで2番目に多く使われている(1番多いのはCMMというもののよう)ようだ。https://digital.nhs.uk/services/digital-and-interoperable-medicines/resources-for-health-and-care-services/list-of-epma-suppliers
日本ではNEC (megaoak), 富士通 (egmain)、その他2−3個使ったことがあるが、 検査オーダ、処方、次回予約など、基本作業は日本と同じだ。今のところの印象としてはともかく文字が多い&クリックが多いである。日本の電子カルテの方が処方なら薬のアイコンが表示されるなどビジュアルを駆使しており、感覚的に使える要素が多かった。また日本だとオーダの種類も処方、検査で分かれているし検査も採血、尿、レントゲンなどで分かれているが、CernerではRequest +Addから全てのオーダを行う。そのためRequest画面に全てのオーダが載る。ある程度はソートできるものの日本の電子カルテに慣れていると(横文字だけのこともあって)見にくく感じる。また、必要事項を入力しないと次に進めない設定のため漏れにくい構造になっているものの、クリック数は日本より多いためややストレスフルである。
眼科カルテシステムは別個で、medisightを使っている。ハイデルベルグのシステムのようだ。患者が到着しているか、今何の検査をしているかリアルタイムに見られるのはいいのだが、一度診察に回ってから追加検査をする場合は電子カルテ上で検査オーダを立ててから検査員に口頭で伝えなければいけない。またoverview画面で視力、眼圧、所見、現在の病名などを見られ、ハンフリーの解析画面、注射の頻度/回数などがすぐに見られるのはよいのだが、overviewには視力、眼圧は最新のデータしか表示されず、過去のデータはdocumentation/eventで1つ1つPDFデータを開かないといけない。カルテも前眼部→後眼部に順々にクリックしていけば完成できるが、このデータも最新のものしかoverviewには乗らないため、結局皆フリー項目に所見を列挙している。フリー項目はoverviewに蓄積されるし、GPへの手紙にでもそのまま転載できるためだ。日本のようにタッチパネルではないため、シェーマである程度所見を書き特記事項のみをフリーで書くということができない。そのため、診察時間の2-3倍くらい事務作業(患者を呼び込む前に情報を読み込む時間+カルテ記載+各種オーダ)を要す。
【生活】
衣食は安定したが、アパートがまだ決まっていない。日本だと土日も不動産屋はやっているし、1回で数件回って内見させてくれる。また北海道の場合はどの不動産屋でもほぼ同じ物件を扱っているため比較的ラクに見つかった。イギリスでもsumoに当たるまとめサイトはあるものの、(i) 既に契約済の物件が掲載されている、(ii) 電話が繋がらない、(iii) 内見の日程がピンポイントで決められる(◯日の14時)、(iv) 予約していたが直前でリスケまたは他の人が申し込んでキャンセル、(v) 単身用は町の中心部/大学周囲のワンルーム (studio)がメインで、田舎のこともあってから2-3LDKのファミリータイプが多い、など重なり未だに物件が見つかっていない。働きながら平日に内見行くなんて無理だろうと職場で色々言っていたところ、「上司に言って内見行けばいいんだよ」「もしアパート決まらなければ寮の期限を延ばしてもえばいいんだよ」と皆さん自分に都合のよいようスケジューリング/ルール改定するようだった・・・