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イギリスの視能訓練士さんについて

視能訓練士さんは眼科の検査全般を行い、眼鏡合わせ、視野検査、眼底写真、眼位検査など検査一般を行ってくれる。日本では、医師=ドクター、看護師=ナースのように略すと、視能訓練士=CO (certified orthoptist)(但し未だ慣習的にはorthoptistの最初の3文字を取ってORTと呼ぶ施設も多いと思う)と略される。国家資格であり、3-4年の研修が必要である。

イギリスではorthoptistとoptometristに分かれ異なる資格である。どちらとも専門の大学に行かなければ取得できない資格である。

orthoptistは"ortho"(正しいという意味のギリシャ語、日本では正位の眼位をorthoと故障することが多い)とあるように基本的には眼位、眼球運動の検査を行う。例えばorthopticsの外来では、問診→視力検査→眼位→(症例によっては両眼視機能検査)→眼球運動検査(症例によってはHESS赤緑検査)→治療方針の説明(プリズム眼鏡の処方、フレネル膜をその場で貼る、アイパッチによる遮蔽の説明、斜視/神経眼科等の専門外来に回すなど)という感じで進んでいく。そして日本では視能訓練士さんだけの検査で外来が完結することはまずないが、弱視治療のフォローや長年変わっていない滑車神経麻痺の上下斜視のフォロー等かなり多くの症例がorthoptistの外来で終了する。

optometristはネットで見ると"検眼医"など色々な訳語があるが、日本で一番近い仕事内容としては"コンタクト眼科医"である。主な職場は街中の眼鏡屋(optician)であり、眼鏡/コンタクトレンズ合わせ(屈折矯正)が大きな仕事である。一方で眼鏡屋の中にも細隙灯顕微鏡、レフラケトメトリー、眼圧測定器、OCT、ハンフリー、など一通りの検査機器は揃っているようだ。日本では目で困ったことがあれば開業の眼科クリニックに行くことがほとんどだと思うが、イギリスでは開業の眼科クリニックは自費のプライベートクリニックを除いてないため、GPを受診するかopticianを受診するかになる。ただGPに眼科の機器はほとんどなく、GPの先生も眼科教育はほとんど受けていないため、optician経由でNHSの眼科を受診するケースが多いようだ。

opticianのため屈折矯正には慣れており、特に小児の場合はレチノスコピーで眼鏡合わせをしているようだ。そしてここで最高矯正視力を測ってもらい、屈折値も記録してもらう。眼鏡合わせでも視力が出ない、もしくは細隙灯や眼底検査等で異常がある場合には眼科にコンサルトとなる。またレーザーや注射も行っていないため処置/手術が必要であれば眼科にコンサルトが必要である。

日本と異なるのは、病院の眼科では最高矯正視力を測らないことである。病院での視力検査は裸眼(unaided)または上記のopticianで測った眼鏡(aided)で行い、もしそれで思ったよりも視力が上がらなければピンホール視力を測定し終了である。病院で屈折値を測るのは白内障手術等の術前くらいである。

コンサルトを受けるか受けないか、受ける場合はいつ受けるのかはNHSの病院でコントロールしている。網膜裂孔があるのでレーザーしてほしいというな度直球もあるが、浅前房なので眼圧のフォローをお願いしたいとか、検査上は異常ないが視力が悪いので病院で見て欲しい、とかになってくるとその日のトリアージ担当により意見が分かれてくる。consultantによってはrejectした上で、ガイドラインを複数個添付してこれに当てはめる場合に再度コンサルトするように、と返信する先生もいる。相手は屈折矯正を主に行っている方で、眼科医よりも異常所見を圧倒的に見ていないわけで、それを"doctor"でない人に同等のレベルを強要するのは違うかなと感じているが、一方で日本では大学病院や市中の総合病院に、本来開業医の先生で診られる症例が多く集まってしまい長時間労働に繋がっているところもあるため、なかなか難しい問題である。

また白内障手術の術後は合併症なく終了した場合は、執刀医はその症例を診察することなく1ヶ月後程度で近くのopticianを受診し終了である。確かに検査自体はopticianでもできるが、術後の診察は医者-患者関係上も、医者の責任上も教育上も大事だと思っている。以前日本で後輩が出張を理由に術後診察をしなかった時には少し苦言を呈したことがあるが、多分こちらでは全く受けいられないのもしれない。しかも、術後2週間後くらいにまだよく見えない、不快感が続いている、とopticianからたまにコンサルトがくるが、病院受診に繋がったとしても執刀医が見ることは稀である。患者さんも毎回担当医が変わることになれているのかもしれないが、術後診察しないこちらの文化には未だに慣れない。



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