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【製薬業界大手3社比較】武田薬品・中外・アステラス製薬の利益率の違い
医薬品はどんな時でも需要が絶えないので、製薬企業はディフェンシブ銘柄とも言われています。
投資してみたいけど、違いがよく分からないという方の為に、今日は有名な3社を比較してまとめました!
今回参考にした動画はこちら↓
では、本題に入っていきましょう!
はじめに
この動画では、武田薬品工業、中外製薬、アステラスにしぼっています。
中外製薬は時価総額が一位。
武田薬品製薬は売り上げが一位。売り上げの二位は大塚製薬ですが、売り上げの大半はポカリスエットやカロリーメイトの割合が大きいので、代わりに3位のアステラス製薬をピックアップしたそうです。
主な違いは、武田薬品はグローバル展開に注力し、中外製薬はバイオ医薬品で強みを持ち、アステラス製薬はニッチな市場での戦略を採用しています。では、それについて詳しく見ていきましょう。
疾病から見る3社の違い?
1,武田薬品
武田薬品が取り扱う薬の疾患は以下の通り
①消化器系疾患
・解消性大腸炎、クローン病
・短腸症候群
・逆流性食道炎
・酸関連疾患
②オンコロジー
・多発性骨髄腫
・悪性リンパ腫
・非小細胞肺がん
③希少疾患
希少血液疾患
・血友病A及び血友病B
・フォン、ヴィレブランド病
遺伝性血管性浮腫
移植後のサイトメガロウイルス
酸素補充療法のハンター症候群
④免疫疾患
⑤ニューロサイエンス
と、要は、様々な疾患の薬があるとだけ覚えておけば今は大丈夫です!
2,中外製薬
武田薬品に対してこちらは領域が2つだけ。
①オンコロジー領域
②スペシャリティ領域
・骨粗鬆症
・新製品の眼科用VEGF
・脊髄性筋萎縮症
など。
中外製薬の特徴は、癌に特化した薬が多いという事です。
その中でも、モノクローナル抗体という薬が多いです。
モノクローナル抗体とは、ある対象を攻撃する抗体の事。
ウイルス対象ならウイルスだけを攻撃、癌細胞なら、癌細胞だけを攻撃するもの。
中外製薬はこのモノクローナル抗体に強い会社です。
また、中外製薬は、スイスのロシュグループの傘下でもあります。
3,アステラス製薬
こちらも種類は少なめ。
①前立腺がん
②尿路上皮癌
③急性骨髄性白血病
④新機能検査補助剤
アステラス製薬は、新薬に特化した事業をしていうます。ドラッグストアなどでアステラス製薬の製品を見ないのはそのためです。
一般向けに薬を売っていないので、CMなどやる必要もなく、武田薬品などに比べれば知名度が低いです。
売上比率の比較
1,武田薬品
武田薬品はグローバル展開に注力しているのが特徴で、
日本の売り上げは一割、半分はアメリカでの売り上げです。
会社の役員も日本人が少なめです。
2,中外製薬
半分以上は日本の売り上げ。ロシュグループの日本支部みたいな位置づけなので、日本での売り上げが大きいです。
3,アステラス製薬
こちらも大半は海外で、主に中国やアジア、カナダやヨーロッパでの売り上げが大きいです。
利益率の比較
営業利益率を比較すると、
武田薬品は5.6%、アステラス製薬は6.6%なのに対し、
中外製薬は36.6%と、桁が違います。
これは一体どういうことなのか解説していきます。
1,資産の比較
比較を解説する前に、まずはB/Sについて解説していきます。
B/Sとは、その会社がどんな財産をどれだけ持っているかです。
資産、負債、純資産に分けられ、
資産ー負債=純資産
の関係になっています。
BSについて詳しく説明した記事もあるので、まずはBSからおさらいしたい人はこちらを読んでみてください↓
各社の資産は、
武田:15兆円
中外:2兆円
アステラス:4兆円
武田薬品は、海外展開の売り上げが大きいので、資産もたくさんあります。
中外とアステラスで比較すると、
中外:現金とかの流動資産が多い
アステラス:固定資産が多い
また、中外製薬は、有価証券をたくさん持っています。有価証券とは、実質現金の事。流動資産が多いのはこの事が理由。
2,のれんの比較
のれん(会社を買収する時に純資産に追加で払うお金。ブランド価値とか、技術力の分、追加で払うもの)の3社の比較をします。
①武田薬品
武田薬品の資産15兆円のうち5兆円がのれんです。つまり、過去に巨大な買収をしたという事。
買収したのは、アイルランドの製薬会社、シャイアーです。
売り上げ1.7兆円の巨大企業を、7兆円で買収しました。
これは日本企業買収の史上最大と言われています。
上で上げた武田の取り扱い疾病の中で、
③希少疾患
④免疫疾患
⑤ニューロサイエンス
の部分は元シャイアーの事業です。7兆円かけただけの事はありますね。
②アステラス
2023年の5月に、8000億円でアメリカのバイオ企業を買収しました。
アステラスの売り上げ4割を占めてる、イクスタンシンという前立腺がんの治療薬の特許が2027年に切れます。
この売り上げの分が大きくなくなる前に、アクションを仕掛けたとも見て取れます。
③中外
ロシュグループの傘下なので、自分では買収しないスタンスかと思われます。
3,無形資産
武田薬品:4兆4024億
中外製薬:200億
アステラス製薬:1兆5326億
これも中外だけ少ないように見えますが、無形資産は、製品を買収した時に発生する部分なので、自社開発の場合はゼロ。中外は自社開発だから少ないと見れます。
それでも200億あるのは、ロシュグループから入ってきたのでしょう。
では、薬に関する無形資産について解説していきます。
製薬業界での無形資産は、
既に売っている製品と、研究中の製品で分けて資産計上されます。
製品の買収額が資産額になります。当然、特許が切れれば稼げなくなるので、3年から20年かけて資産価値を減価償却します。
でも、研究中の製品は難しくなります。研究が失敗すれば、価値がゼロになります。ですので、研究が失敗した時は、減損損失で価値を減らします。ですので、100億円のプロジェクトが失敗すれば、100億円の減損損失が出ます。
3社の資産の内訳を見ると、
武田:上市後の製品が多い
アステラス:研究開発品が多い
となっています。アステラス製薬は、研究開発の企業と言われるだけあり、研究中の製品を買収しているようです。
また、他社に開発してもらっている製品も多く、段階に分けて、マイルストーンという成功報酬を払って、自分の資産にしています。
アステラスの資産になるという事は、研究が成功すれば、アステラスが製造販売して大儲けできるという事です。
製薬会社の年収ランキング2位のモダリスなどは、開発を任される側の企業です。成功報酬なので売り上げがゼロなんてことがあります。
4,負債
中外は、ロシュの傘下で、買収しないし、利益率も高かったので、負債はありません。着々と自社の研究に取り組むスタンスです。
PL比較
PLとは、会社がいくら稼いで、それだけ稼ぐのにどうお金を使ったかを表したものです。
売り上げ、費用、利益で計算され、
売り上げー費用=利益
となっています。
PLについての詳しい解説の記事はこちら↓
先ほども述べたように、3社の中では、中外製薬の利益率が最も大きくなっています。
その理由として、中外製薬の販管費が他2社と比べてとても少ないという事。
売り上げの内訳を、パーセンテージに直して、比較していきます。
1,原価率
武田:31%
中外:42%
アステラス:19%
となっており、中外の原価率が高いのは、ロシュグループの薬を日本で売っている為。自分で作らない分、当然原価率は高くなります。
アステラスの薬(特にアステラスの売り上げ4割を占めてる、イクスタンシンという前立腺がんの治療薬)は良く売れるので、原価率が低いとも見れます。
2,販売促進費
アステラスの原価率が低い分、アステラスは販管費率が高いです。その割合は売り上げの45%。2022年は、イクスタンジンの販売促進費も1000億円ほどかけました。
価値の高い薬を、販売促進費をかけて売るのがアステラスのスタイルらしいです、
一方の中外製薬の販管費は9%しかありません。武田薬品は24%と、武田比べても安すぎます。
それについては、まず薬の開発の流れを理解しましょう。
ざっくりというと、薬が出来る流れはこう↓
研究→治験→審議
つまり薬は、研究で効果のある薬を見つけて、治験をして効果や安全性を確かめてそのあと売るかどうかを国が審議します。
この中で販管費にあたるのが、治験と審議のところ。
中外製薬の場合、この2つはロシュグループがやるので、中外のやるところは研究開発のみ。
お金のかかるところはロシュグループがやってくれているという感じです。
3,製品に係る無形資産償却及び減損
もう一つ、中外の利益率が高い理由に、無形資産が少ない事があげられます。
無形資産が無い分、償却費も減損もほとんどありません。
武田薬品は、18%が償却費と減損なので、これに比べればいかに費用が掛かっていないかが分かります。
中外製薬は、他社製品を買収しないので、償却費と減損がかからないというわけです。
また、ロシュと合併から20年がたって、償却費がかからなくなったのも理由に挙げられます。特許の償却期間は3年から20年くらいですので。
ちなみに、中外の薬は大人気で、ロシュグループの中で中外の売り上げが1位らしいです。
まとめ
巨大グループの強みを生かし、しっかりと自分の開発に集中して成功させているのが中外と言えるでしょう。
武田薬品は買収を繰り返してグループのトップを走っている感じで、アステラスは、研究力で価値の高い薬を開発し、販促費をかけて売るスタイル。
そういった3社の違いがあるというのが今回の主な内容です。
あくまでも印象ですので、細かい内容などはホームページなどで見て、自分が応援したい投資対象を決めるのが良いでしょう。
3社の比較は以上となります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。ではでは!