UX初心者の読書感想文
こんにちは、Japan Digital Designの馬塲です!
私は地方銀行からのトレーニーで、今年の4月から三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の戦略子会社である Japan Digital Design(以下JDD)のExperience Design Div.(以下XDD)で働いています。
今回の記事では、UX初心者の私が、XDDのデザイナーに「デザインの知識を学ぶために読んでおいた方が良い!」とお勧めされた書籍を読んでみた感想を率直にお伝えしたいと思います。
はじめに
取り組みのきっかけについてお話します。
私は元々銀行の営業店で働いており、入行して3年間窓口業務やリテール営業を行っておりました。デザインに興味はあるものの実際に触れる機会はなかったので、デザインやUXについてほとんど知識0の状態です。JDDにやってきた最初は、デザイナーの発言や指示を理解できず、常に頭にでっかいはてなを浮かべている状態でした。
しかし、4月から数か月の間デザイナーと共に働いているうちに「デザイン」のデ……くらいは理解できてきた気もします。何より、働いているうちにデザインって思ったよりも感覚的なものではないのでは?という気づきが大きかったです。
すると、ふと「デザイナーってどうやってデザインの良し悪しを決めているんだ?」「デザインって何を元につくってるんだ?」と次々に疑問に思いはじめました。
そこで、JDDのValuesのひとつである『常に学び早く実践する』という言葉に従い、デザインについて詳しく知るべく、とりあえずデザインに関する本を読んでみよう!と思い立ちました。
しかし、世の中にはデザインに関する書籍で溢れています。一人書店で背表紙を眺めていても時間だけが過ぎていったので、もう、デザイナーご本人たちに聞いてみることにしました!
ちなみに、過去のnoteの記事でもデザイン初学者である出向者がまず読むと良い参考図書が記載されております。
JDDのデザイナーが選ぶ!UX初心者におススメ図書
今回はXDDの二名のデザイナーに「デザインの知識を学ぶために読んでおいた方が良い書籍はありますか?」と聞いてみました。デザイナーお二人とも快く、書籍とUX初心者におススメの理由を教えてくださいました(ありがとうございます)
書籍のご紹介と併せて、実際にUX初心者の銀行員が書籍を読んで感じたことを書いてみましたので、ぜひさっと目を通してみてください!
まず一冊目です。
推薦したデザイナーからの一言
「ワークショップの設計の参考になるとともに、プロジェクトの計画を立てる際にも参考になる本です。目的や設定した問い次第で成果が変わるのが、プロジェクト計画やリサーチ計画など応用範囲も広く、個人的には納得感が高かったのでUX初心者が知っていると良いかなと思いました!」
『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』(安斎 勇樹、塩瀬 隆之著、学芸出版社)
UX初心者が読んだ感想
最初の一冊で、デザイン=UIとか絵とか?と思っている初心者の考えを正してくれました。デザインとは幅広いもので、「問い」もデザインできる。
銀行員の考える「問い」の傾向について考えてみます。思い返してみると私のような銀行員は真面目に物事を考えがちなので、新しい課題を見つけたときの「問い」を「良い銀行アプリとは何か?」とか「どうすれば口座開設してもらえるか?」と真面目に設定しています。その結果、たどり着く答えも真面目で決して悪くはないけど、いつも同じ無難なものになっている気がします。
書籍には全体を通して『課題があった場合、それを解決する「問い」次第で好奇心が刺激され、無自覚だった前提が揺さぶられ、普段とは違った考えが生まれる』と書かれています。
実例として挙げられているのは、著者が「動物園で子どもたちが動物をじっくり観察できるような問い」を考えた際のワークショップです。子どもたちに対して、単に「ゾウをじっくり観察すると何が分かる?」と問うのではなく「ゾウの鼻くそはどこに溜まる?」と、問われる側の思考や感情が刺激される問いに変えてみる。すると、子どもたちはゾウの鼻により注目し、そのうちゾウの鼻くそ以外の部分にも気になることが次々に生まれてくる。さらにそれだけでなく、意見や疑問が出てくるので「話し合い」が自然とはじまり主体的なコミュニケーションが誘発される、というものです。
読み始める前には、私自身ワークショップのファシリテーターの経験はないので、『問いの変化によって出てくる答えが変化する』という現象がイメージしずらいのではと思いました。しかし、上記のような著者が実際にファシリテートした企業、学校、地域における課題解決のプロジェクトが紹介されており、なぜ「問い」をこのように設定したのか?というのが順序立てて説明されていたので、経験がなくとも理解しやすかったです。
書籍を読むことで、課題に対しての答えよりもまず、前提となる「問い」の重要性について気が付くことができました。問いってこういうものだ、という凝り固まっていた認識が変化し、問いが変化したことでまた違った新しい答えを見つけることができそうです。
正直私はUX初心者ですし、社会人として経験が浅いのでファシリテーターとしてワークショップを行うイメージは湧いてこないのですが、参加する側としては書籍を読んだことで何を意図して問いが設定されているかを考え、答えを生み出し、コミュニケーションを取っていけそうです。また、ワークショップでなくても、新しい課題があったときに「絶対に消したくなる銀行アプリとは何か?」とか「顧客が口座開設したくてたまらなくなった出来事とは?」など新しい考えが生まれそうな問いを設定して、普段とは異なる答えやアイデアを出していきたいです。
続いて2冊目です。
推薦したデザイナーからの一言
「企画者やデザイナーが事業を重視してしまい、結果としてユーザーを陥れるような施策に走ってしまうリスクがあることを知れる、反面教師的な本ということでピックアップしました。
良い事例を紹介する本が多いですが、ダークパターンを用いることで顧客の信頼を落としている事例を知れる面白い本でした。」
『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』(仲野 佑希著、株式会社翔泳社)
UX初心者が読んだ感想
おススメしてもらった当初は『ダークパターン』て何……?とポカーンとしてしまったのですが、書籍を読み進めていくうちに「あ、ある……見たことあるし、引っかかったことのある手法だ……」と自分が今までwebサイト等で感じていた違和感に気が付きました。一向に見つからない退会ボタンや、勝手に登録されているメルマガ、消費者としては非常に不快なデザインです。
ダークパターンを知らないところから読み始めましたが、身近なサイトでよく見かける手法だったので読み進めやすかったです。デザイナーではないので、ダークパターン以外の用語が出てくる部分は、難易度が高いと感じる部分もありました。
ユーザーにとって不快なデザインだから使わない、と選択することは簡単なように感じます。しかし、ダークパターンがユーザーに与える効果もしっかりと書かれており、自分が企画者となり利益を上げなければいけない場合に、ユーザーに対して効果的だと分かっているダークパターンを安易に選択してしまう可能性も脳裏に浮かびました。
こちらの一冊を読むことで、企業やデザイナーがダークパターンに陥る背景とその防止策について知ることができます。ダークパターンを選択することによるリスクや、ダークパターンを選択しなくとも人々の行動を良い方向へ変えてくれる手法が幅広くあることを学ぶことができました。その中でも、相手の選択肢を禁じたり、経済的なインセンティブを大きく変えたりすることなく人々の行動をより良い方向へ変容させる仕組み、ナッジといわれる手法は特に参考になりました。
UX初心者ではありますが、顧客の信頼を失わないデザインを選択できることが大事だと感じています。私の場合、銀行で先輩や上司にダークパターンを使うよう指示されたとき、もしくは使うべきでは?と議論されているとき、しっかりとダークパターンとは何か、そしてなぜ使うべきでないかを説明できるようになることが目標です!常により良い顧客体験を考え、提案する上で重要な事が学べる一冊です。
書籍の紹介は以上となります!
最後に
今回は2冊の書籍をご紹介させていただきました!
どちらの書籍も、UX初心者の私には本屋で選ぶことができなかったであろうものです。自分の中に「問い」をデザインするという思考はなかったですし、顧客の行動を促すデザインが存在することも初めて知りました。推薦する書籍によってデザイナーの個性が出ており、書籍の知見がプロジェクト内でのそれぞれのデザイナーの仕事に実直に反映されていると感じます。UXを学ぶにあたって、デザイナー自身が大切だと感じている知識を得られたことは大変参考になりました。
ちなみに、こちらのnote執筆にあたっても「とりあえず下までページスクロールしてもらうためにはどうすればいいか?」という問いを立てて書いてみました。結果、最後まで読んでもらわないと……というプレッシャーから解放されたので、UX初心者が読みやすいような親しみやすい言葉や、「ゾウの鼻くそ」といったインパクトのある言葉を使い、あまり堅苦しくない気軽な文章を書いてみました。
また、2冊目の書籍の中で紹介されていたナッジ(人々の行動を良い方向へ変えてくれる手法)を踏まえて、マイクロコピー(非常に短い文章や文字)にも意識しております。冒頭のあたりで「最後まで読んでください」と書くのではなく「さっと目を通してください」という「読む」より軽い表現の文言に変え、ユーザーの心理的負担を減らし最後までスクロールしてもらえるよう工夫してみました。いかがでしたでしょうか?
取り組みのきっかけは「デザイナーってどうやってデザインの良し悪しを決めているんだ?」「デザインって何を元につくってるんだ?」という疑問です。今回、デザインのロジックを学び、それがプロジェクトに反映されていることを如実に感じることができたことで、デザイナーは得た知識(ロジック)を元に良し悪しを判断し、それを幾度となく積み重ねた経験でデザインをつくりあげているのではないか?という考えに至りました。UX初心者の考えですので、真偽は不明ですし、デザイナーそれぞれのデザインのやり方があると思いますが、それは今後JDDでデザイナーと共に働いたり話したり、インタビューしてみたりする中で確認していきたいです!
今回の取り組みを経て、トレーニーとしてはデザイナーと働く中で更に多くのことを吸収することができそうです。 UX初心者ではありますが、デザイナーの考えをより深く理解し、受け身ではなくデザイナーと共にユーザーにとってより良い体験を設計していく、ということを目標として、今後も取り組みを継続していきたいです。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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