新茶という日本の文化
1.新茶とは
新茶とは、その年の最初に収穫された新芽でつくった「一番茶」のことです。お茶は、茶の木から伸びてきた新芽と葉を摘み取って製品にします。摘んだ後もまた伸びてくるので、1年に3~5回の収穫が可能。
順番に、一番茶・二番茶・三番茶と呼んでいきますが、中でも一番茶を “初物”という意味を込めて「新茶」と呼びます。
初がつおという言葉があるように、初物は特別に珍重されるもの。「新茶を飲めば一年間、健康に暮らせる」「中風(生活習慣病の一種)よけになる」などとも言われます
反対に、昨年以前のお茶が「古茶」。こちゃ、ふるちゃなどと呼びます。
2.新茶の季節
南北に長い日本のこと、現代では南の茶どころである鹿児島県では4月10日ごろから新茶初取引が始まります。4月下旬の静岡・京都・三重と続き、遅めの奈良や滋賀などでは5月上旬ごろが新茶のシーズンインです。
唱歌「茶摘み」では、「夏も近づく八十八夜…」という出だしがよく知られていますね。八十八夜とは、現代のこよみで5月1日~2日のことで、まさに新茶のシーズン。
お茶の木はもともと亜熱帯原産で、温帯の日本で栽培するには、緻密なコントロールが欠かせません。新芽が出る前の冬眠期ならマイナス6℃でも耐えられるのですが、新芽が育ち始めて水分を多く含むようになると、急に寒さに弱くなります。
かといって温暖すぎる場所を選ぶと、生産量は多いのですが、品質が下がる傾向があります。お茶の栽培は、寒すぎず暑すぎない、昼夜の寒暖差が大きい場所を選んで行われます。
そんなギリギリのバランスの上でお茶栽培は行われるので、お茶農家さんは霜の害にやきもきしつつ、「今か今か」と収穫のタイミングを待つのです。また、新芽が伸びきってしまってもテアニンの量が減って品質が下がるため、収穫はスピード勝負。新茶の時期は大忙しです。
3.新茶の美味しさ
新茶(一番茶)は、冬の間に枝や葉にたくわえてきた栄養を十分に使い、低温の中でゆっくり時間をかけて育つため、甘み・旨み成分であるテアニン(アミノ酸の一種)が二番茶以降の3倍以上含まれています。
そのため、もっとも高品質とされています。旨み成分が豊富なため、おいしいのです。
反対に、二番茶以降は高めの気温の中で素早く育つので、渋み成分であるカテキンがテアニンと比較して多くなり、さっぱりめの味わいになります。
カテキンは緑茶特有のポリフェノールで、食事中のコレステロールや脂肪の吸収を穏やかにすると考えられています。そのため、ゴクゴク飲むのに向いているのだとか。
ちなみに、カフェインの量は一番茶でも二番茶以降でもほとんど変わらないそうです。
4.新茶の美味しい淹れ方・飲み方
1.急須で淹れる場合
急須に茶葉5gを入れ、そこに90°Cのお湯180mlを注ぎ、1分30秒待ちます。
時間が経ちましたら、静かにコップ/湯呑へ注ぎ、旨味・渋味・香りのマリアージュをお楽しみ下さい。
2.水出しの場合
①茶葉10g に対し、②750mlの冷たい水/氷水 を用意します。
①と②をお好みのボトルに入れ、冷蔵庫で2時間ほど熟成させます。2時間経過後、ボトルを静かに上下に振り、爽やかな山のお茶の香りをお楽しみ下さい。
3.ティーバッグの場合
コップに熱湯180mlを注ぎ、ティーバッグを1個入れ2分待ちます。時間が経ちお茶の色が出たら、2度ほど上下に振ってティーバッグを取り出しお召し上がりください。
5.大河内という地域について
静岡県静岡市大河内とは、過去に徳川幕府に献上していたお茶が育つ本山地区に位置し、朝夕は霧がたつ美しい場所です。近くには安倍川餅で有名な安倍川が流れており、水、土、空気、など生産にはこれ以上ない条件が揃っています。
日本は世界各国と比較しても、歴史が存続し、体験できる国です。
お茶という文化もその一つであり、茶の湯の文化、日本茶を飲む文化
生活に備わってきていたから、いまもあり続ける。
面白い国ですね。