明けない夜のオムニバス
いつまでも明けない夜に立ち尽くすひとへ。
──昔々、
*
「ごめんね、きみがこわくて、ごめんね」
どんな姿をしたきみでも抱き締めて愛を誓えるような、強く美しいお姫様になりたかった。
寂しいけれど、私の出番はここまで。でもね、
「泣きたくなるほど心優しいきみには、ハッピーエンドが待っている」
おとぎのくにはきっと、そういうふうにできているから。
絶望にはもう慣れたつもりなんだけど、
*
誰も悪くないことを知っている。だから弱虫なおとなはもう、ただ、笑うことしかできないの。
もう誰の言葉も信じないよ
*
あなたの言葉だけが、私を生かすのだから。
(あなたの愛だけが、と言いかけて、やめた)
遺言はあの夏に忘れてきちゃったから
*
夜が明ける前に。
夏が来る前に。
エピローグは簡潔に。
読後感は少し寂しいくらいがちょうどいい。
*
明けない夜はない。
止まない雨はない。
終わらない恋はない。
死なない命はない。
優しいだけじゃ愛せない。
大人になっただけじゃ強くなれない。
信じる者は報われない。
あなたはきっとあの言葉を覚えてはいない。
*
真実を前に立ち尽くすひとたちを、私は救うことなどできない。
それでも、夜が明けるまで、側にいていいですか。