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南谷武蔵
2024年7月16日 17:43
「タナカさん、カレーが出来ました」 機械的な女性の声がタナカの耳に入ると、タナカはうずくまりながら声をこぼした。「置いといて」 タナカは寝たきり、声の主を見ようともしない。声の主は、機械的でありながらも美しく施された顔を、無表情に、ジッと、タナカに向ける。「カレーが冷めてしまいます」 声の主が音を紡ぐと、タナカは身体をのっそりと上げ、声の主に向けて言った。「ごめん、ありがと
2024年7月12日 15:07
荒野の広がる星で、少年がさまよっていた。足がジリジリとしていて皮はむき出しになり、心臓がバクバクするのに一向に息が切れない。 少年は記憶が曖昧で、何を思い出そうとしているのかもよくわからない。と言うより、自分が向かう先についての手がかりだと思うのだが、今は考えるより足を動かしたほうが良い、と思っている。 少年はふと不思議に思った。「そういえば、どうして僕の他に誰もいないんだろう」