営農情報 #2 初夏産ダイコンはトンネルなしでOK!
初夏産ダイコンは、トンネル栽培が主流なうえに抽台のリスクが大きいことから秋冬産に比べると取り組みづらい印象が強かったと思います。
しかし、極晩生種の品種が登場したことにより、トンネル被覆なしでも東京西多摩地域では栽培が可能になってきました。
数年前に一度、べたがけ+マルチによる初夏産ダイコンの試験栽培に取り組み、今年も管内の農家さんと一緒に試作しましたので、その成果・速報をnoteします!
初夏産ダイコンはべたがけ栽培OK
品種は「蒼の砦」(トキタ種苗)
トンネルなし・べたがけ+マルチのみの栽培に使用した品種は「蒼の砦」(トキタ種苗)です。
種子袋に書いてあるように“「超」晩生種”が売りの品種です。
この品種を使って試作試験に取り組みました!
播種日
令和4年2月18日
黒マルチ9230に播種後、すぐにベタロン(ポリ製の不織布)でべたがけしました。
観察
令和4年3月31日
生育状況を観察しました。
概ね順調に生育しています。
4月2日、遅霜発生
4月2日、東京多摩地方には霜注意報が発令。
西多摩地域でもかなり冷え込み、5℃を下回り、遅霜が発生しました。
「蒼の砦」が超晩生種でも、抽苔が心配です。花が咲かないことを祈るしかありません。
その後の観察では、抽苔の気配はありません。ホッと一安心…
収穫(令和4年5月6日)
収穫始めました。
葉はかなり大きく育っています。
根部もなかり大きそうです。
このダイコンは、直売所がメインの出荷先なので、大きいのは大丈夫なのですが、市場出荷だと大きすぎそうかな…
それでは、ダイコン、抜いてみましょう!
ヨイショ!
予想通りでかなり大きいです。
右側の一番大きいダイコンは、根長55cm、葉も含めた重量2.2kg!
かなりのビッグサイズですが、直売所ではこの位が喜ばれます。
一番左側のダイコンは、市場出荷や量販店出荷には丁度良いですね。
肌の白さも、緻密さも申し分なし!
試作栽培からの成果
今回の初夏産ダイコンの試作は、農家の作業省力化が最大の狙いです。
作業が省力化されることで、今まで初夏産ダイコンに取り組むことを迷っていた農家にも気軽に取り組んでもらえれば、直売所の出荷アイテムも充実します。
トンネル被覆は、確かに露地野菜の出荷時期を大きく前進させますが、その手間と収益性を天秤にかけると直売所出荷がメインの東京の生産者は躊躇してしまうのが正直なところ。
しかし、トンネル被覆なし、でも、べたがけは必要だよとなると、途端にハードルは下がります。
こうした農家の「ここまでならできる=べたがけだけなら、やってみようかな!」という意識をくすぐって、新たな作型へのチャレンジを促すことが、私たち営農指導員には大切な視点なのであります!(あっ、偉そうなこと言ってスンマセン…)
また、今年の春は、暖かくなったり寒くなったりを繰り返す目まぐるしい気象条件でした。
こうした気候条件でも初夏産ダイコン「蒼の砦」は抽苔することなく、収穫可能なことが分かりました。
今回は調査日程の関係で収穫調査がゴールデンウィーク明けになってしまいましたが、ゴールデンウィーク前の4月中下旬の収穫でも何ら問題ないほど根部の肥大が進んでいました。
野菜の品種改良は日進月歩で進んでいます。
品種改良では、「美味しい」や「高品質」に目が奪われがちですが、農家にとっては「作りやすい」も大きなポイント!
そんなところにも注目して、これからも試作試験にチャレンジしていきます!
おまけ①
今回、ダイコンを収穫した後のマルチ9230をそのまま使用して、そこにラッカセイを栽培する不耕起栽培にも引き続き試験栽培でチャレンジします。
インターネットで検索しても、ラッカセイの不耕起栽培の事例は見当たらないので、上手くいくか皆目分かりませんが、これも省力化と産業廃棄物を少しでも減らし、SDGsへの取り組みに繋げたいと考えています。
おまけ②
調査用に収穫したダイコンは、手羽元と一緒に煮物にしました。
ダイコンは緻密で味も染みやすく、美味しく頂きました!
腹ペコだったので、すっかり写真を撮り忘れでしまいました。
〈注意事項〉
なお、本試作栽培は、令和4年の東京都西多摩地域での試作結果をもとに記述しています。地域や気象条件が変われば栽培環境も変わりますので、ご自分のお住まいになっている地域の状況に合わせた栽培に取り組んで下さい。
(営農生活課H.O)