営農情報 #6 セットタマネギ「シャルム」の試験栽培
セットタマネギ、ご存知ですか?
冬に新タマネギとして収穫できるタマネギのことをセットタマネギと呼んでいます。
セットタマネギは、タキイ種苗㈱から発売させている「シャルム」という品種が代表的な種類です。
「シャルム」の栽培方法
セットタマネギ「シャルム」は、種子から栽培する方法と「セット球」から栽培する方法の2通りがあります。
農業者が直売所などで販売することを考えると、種子から栽培する方法の方が収益性が高いので、JAにしたまの生産者は種子からの栽培に挑戦してきました。
セットタマネギ「シャルム」は、3月に播種、5月にセット球を掘り上げ、吊り下げ保管し、8月下旬にセット球を植え付け、12月に収穫します。
栽培期間も長く、また、植え付けのマルチも白黒ダブルが基本なので手間もコストもかかります。
しかし、冬に新タマネギを直売所に出荷できるという魅力からJAにしたま管内の生産者も何度となく挑戦してきたのですが、どうにも上手く作りこなすことができませんでした。
JAの営農指導員は、8月の猛暑真っ只中に植え付けるということが順調な生育の妨げになっているのではないか?また、休眠打破を上手く行うことができていないのではないか?と考えていました。
そんな折、チューリップの早出し栽培のように球根を低温遭遇させ、人為的に休眠打破を促したらどうなるのだろう?というアイデアを思い付いたのです。
このアイデアをセットタマネギの栽培を希望する生産者に伝えたところ、試験的にやってみよう!という前向きな返事をもらい、2022年にチャレンジしてみました。
東京都福生市での試験栽培
東京都福生市の野菜農家とJA営農指導員が相談して、栽培方法を検討しました。
栽培方法は播種時期やセット球の植え付け時期はタキイ種苗㈱のホームページと同様にしたのですが、休眠打破等で以下のポイントで少しアレンジを加えました。
① 播種は128穴トレーに播種し、そのままセット球になるまで育苗管理した。
② セット球の植え付け前9〜12日間、冷蔵庫で8℃に管理し、低温遭遇させ、休眠打破を促した。
その後、白黒マルチに定植し、12月まで管理しました。
試験栽培の結果
上記のとおり栽培したところ、12月の中旬にセットタマネギを収穫・出荷することができました。
セットタマネギ「シャルム」を食べてみた
収穫したセットタマネギ「シャルム」を実際に食べてみました。
せっかくの新タマネギですから、葉も新鮮なので、葉は炒めものにして食べました。
新タマネギの葉は火を通してもシャキシャキした食感か残り、甘みもあり、とても美味しく食べることができました。
新タマネギの玉は、薄切りにスライスして、鰹節とポン酢でサラダにして食べました。
こちらもシャシャキの食感と甘みと苦味がバランス良く、美味しく頂きました。
今後の普及
今回の試験栽培の結果から低温遭遇させて休眠打破を促すというアイデアは有効だったと考えられます。
しかし、その温度や期間が適正なのかを栽培した生産者とよく意見交換し、再度、検証してみたいと思っています。
こうした検証を加えて、2023年も試験栽培にもう一度取り組んで、栽培方法の確立を目指します。
直売所では、冬の品薄状態が問題となります。こうした課題解決の一助になるアイテムとして、セットタマネギ「シャルム」の普及を図り、地域農業の振興に努めたいと思います!
(H.O)