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地域活性化が新しい観光のカギとなるーLIFULLさんインタビュー(前編)

たまの晴れ間が嬉しいこの頃ですね。JANE事務局です。

おうち時間の過ごし方にもすっかり慣れ、ニューノーマル生活ってこんなものかなと新たなルーティンが出来てきた今日この頃。暮らしと仕事、レジャーの境目がなくなってきているような、不思議な感覚にとらわれます。

実は、テレワーク等の普及によって人々の価値観やライフスタイルが変化してきたことで、観光業界にも大きな変化が生じているようです。これまで、JANEの観光振興に関する提言をご紹介してきましたが、今回からは、会員企業へのインタビューを通して、コロナ禍をきっかけとして観光業界がどのような変化をしているのか、リアルな事例をお届けしたいと思います。

インタビュー企画第一弾は、日本最大級の不動産・住宅情報サイトを運営する「株式会社LIFULL」さんです!

LIFULLの社員の皆様に、コロナ禍の前と後で自社のサービスにどのような変化があったのか、アフターコロナを見据えた今後の課題や展望などを伺って来ました。

聞き手:JANE事務局

答え手:株式会社LIFULL 小池さん、渡辺さん、石島さん、中嶋さん(順不同)

※挿入画像は同社ウェブサイトから頂いています。

1.コロナ禍による会社の変化は?

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多くの人が「あらゆる制約から解放された暮らし」に注目し始めている

小池さん:LIFULLでは、「LivingAnywhere Commons」というサービスを展開しています。同サービスでは、場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方(LivingAnywhere)をともに実践することを目的としたコミュニティを提供しています。メンバーになることで、北は岩手県、南は沖縄県までの全国17か所(2021年6月29日現在)の拠点の共有者となり、仲間たちと自宅やオフィスにしばられないオフグリッド生活を体感することができます。そんな刺激に満ちた環境で、理想のLivingAnywhereを実現するための技術やアイデアを共創するというものです。

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このサービスは2019年夏にリリースしています。その半年後から日本でも新型コロナウイルスが広まり始めたのですが、その間も拠点は増え続けていました。コロナの影響が本格的に出始めてからも利用者は増えていき、なんとサービス開始当初から利用者は6倍に伸びました。コロナ禍をきっかけに、都心一極集中から、地域分散型へと人々の生活スタイルが変化していったことが大きいと思います。このサービスは全国に拠点があるので、メンバーになれば多拠点生活が実現できます。利用者層を見ると、当初はフリーランスの方が多かったのですが、コロナ後はリモートワークを導入する企業が増えたこともあり、企業に勤めている方の利用が増加しました。年代は20代から30代が多く、55~60%は女性となっています。

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空き家バンクは利用者急増で物件が足りていない

渡辺さん:LIFULLのメイン事業であるHOME'Sも、コロナ後は郊外への住み替えに関する問い合わせが増えました。同事業は地方の空き家物件を利用希望者に紹介する「空き家バンク」も運営していて、コロナ後は利用者が1.6倍に増加しています。

空き家バンクという仕組み自体は、以前から全国の地方自治体が提供していたのですが、自治体ごとにバラバラなサービスになっていました。そこで、空き家を探す利用者の利便性を高めるため、LIFULLでは横断的なサービスとして全国版の空き家バンクの運営を行っています。このサービスは、国土交通省のモデル事業にも採択されました。現在、私たちのサービスには約660の自治体がパートナーとして参画していています。独自に空き家バンクを運営する自治体数も増えていますが、空き家をお求めになる利用者が急増しているので、物件が足りていない状況です。

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2.ニューノーマル時代の観光はどうあるべき?

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労務法規が新しい働き方に追いついていない

小池さん:LivingAnywhereCommonsも空き家という資源を有効活用するサービスですが、こうした新しい取組を進める中で、現状の法規制には課題感があると思っています。例えば、テレワークやワーケーションというのは、働き手がどこにいるかは基本的に問題ではないですよね。しかし、現在の労務関連法では、勤務地はある程度固定されていることを大前提として制度設計がなされています。しかし実態は、建前では本社勤務としつつも、テレワークで自宅にいたりカフェやコワーキングスペースにいるわけです。政府もテレワークやワーケーションを推進している中、労務法規も実態を反映し、時代に即していく必要があるのではないかと思います。

さらに、勤務地も2拠点、3拠点と多拠点化することが当たり前になっていけば、そもそも本社の所在地や社員の住民票をどこに置くべきなのかという問題が生じてきます。住所登録のスイッチングコストを考えて、とりあえず実家やレンタルスペースの住所で住民登録をしておくという人も増えています。実際には登録地は東京だけど1年の3割は静岡県の下田で生活していて、ゴミ処理など行政サービスをそこで受けているという状況も生まれています。こうした建前と実態の乖離はこのままでいいのかという疑問が生じてきます。例えば位置情報などのテクノロジーを使って、実態を反映させていくようなことは可能なんじゃないかと思いますね。

空き家の再生に多額のコストがかかる

小池さん:LivingAnywhereCommonsは現行法上は宿泊業として整理していますが、一定以上の広さの住宅を宿泊業に用いる際には建築基準法上「用途変更」という手続きが必要となります。現状、200平米以上の建物の場合にこの規制がかかってきますが、地方の空き家を再生しようという場合、昔ながらの家は大きいので、ほとんどの場合でこの手続きが必要となります。実は、このことが宿泊業への活用を難しくしているんです。

何故かというと、例えば、用途変更に際しては建築図面や確認済証など様々な書類を提出する必要がありますが、そもそも古い家には建築図面がないことが多いんです。また、建築図面があっても、私的な増改築で図面にない階段が実際にはあったりもします。

石島さん:地方自治体からも空き家を活用して欲しいという声が上がっていているのですが、築100年で240平米くらいある古民家だと宿泊施設への転用がなかなか難しいんですよね。

中嶋さん:図面がなくて建築の確認書類もない、建築を確認してあっても確認証明を取っていないということがしょっちゅうです。地方だとローンを借りずに建てていたりもするので、そういった関連書類もないんですね。税制とか含めてどう手続き的なものを簡素化していけるか、課題ですね。

小池さん:さらに、書類の問題がクリアされても、複数の人が利用する宿泊業に転用する場合には、避難経路の設定や、スプリンクラー設備の導入など、消防法や建築基準法をクリアするためのコストが嵩みます。そうなると、もう新規で建物を作った方がよいとなることもあります。現行法は、経済合理性に照らすと空き家を活用することが難しいような設計になってしまっているのです。

中嶋さん:古いものを活用できるような制度が欲しいですね。

新しいサービスを法律にどう位置付けるか

小池さん:そもそも、LivingAnywhereCommonsは現行法に照らすと宿泊業なのか、賃貸借業なのか…。実は既存の業法にジャストフィットするものがないんです。現状はとりあえず宿泊業に位置付けていますが、同じようなサービスでも、集団で賃貸借契約を結ぶという形態をとっているところもあります。今のところは、多くのこういったサービスは現在の法律に無理やりあてはめるアプローチしか取れておらず、時代の変化に法律面が追い付いていないというのが根本的な原因かと思います。

市町村長にもっと裁量を与えて欲しい

小池さん:また、空き家や使われなくなった小学校などの廃校など、遊休不動産を活用しやすい制度にするためには、地方自治体の首長、特に現場に近い市町村長レベルの裁量を広げることが重要だと思っています。廃校は全国に約6000校もあり、その8割が放置されている現状にあります。さらに、毎年約500校も純増していっています。廃校の場合、広さは2000平米から3000平米ほどあるため、現行法に沿って宿泊施設に用途変更する場合には、スプリンクラーや浄化槽を何個も入れなければならない。費用負担は、億単位にもなることもあります。多くの場合、そこまでして廃校を活用しようということにはならず、せっかくの資源が眠ったままになってしまっています。用途変更の目的が地方活性化のための場合には、各業法の規制を横串で緩和し、市町村長の裁量で判断できるようにすることがベストだと考えています。

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(後編では、さらに突っ込んで興味深いお話を伺いますよ!ぜひご覧ください。)

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