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薬剤師・医学博士が追い求めた「幻の赤い果実ブアメラ」の世界(第5回)

第5回 ブアメラの植物学

さて、ようやくブアメラ果実の話ができます。
日本のほとんどの方が赤い果実「ブアメラ」についてはご存じありません。
未開の地と行っても過言でない赤道直下の南半球に浮かぶ世界第二の大きな島パプア島にしかない稀少な植物ですから、知らないのは当然です。
ブアメラはタコノキ科の植物、学名はPandanus conoideus、通名はマリタと呼ばれ、植物分類では以下のようになっています。
 
門:種子植物Spermatophyta
亜門:被子植物Angiospermae
綱:単子葉類Monocotyledonae
目:タコノキ目Pandanales
科:タコノキ科Pandanaceae
属:パンダヌスPandanus
種:パンダヌス・コノイデウス Pandanus conoideus
現地通名:タウィTawi

稀少な植物であるため、植物学者や博物学者の目に留まることがなく、英名も日本名もありません。
インドネシア人でさえ、単に色による分類として赤い果実と呼ぶだけです。パプア島高地がブアメラの原産地だが、先住民は「Watawi(ワタウィ)」とか「Barapen(バラペン)とか呼んでいるが、「Watawi」を略して「Tawi(タウィ)」が最もよく使われる名称です。

赤い果実ブアメラは、巨大なトウモロコシのイメージが最も合うでしょう。
高さ15mにもなるという木に巨大な果実が垂れ下がり、通常1本の木に1~2個の実がつくが、巨木では数個育つこともある。1年に2回収穫できます。

2本のブアメラ果実が見えます
根はタコの足のように多数の支柱根あり水や栄養分を吸収

トウモロコシと同じように巨大な実は包葉に包まれ、成熟してくると赤い実が露出してきます。
大きなブアメラは約1m、重さは10kgもなり、表面は5~7角形の幾何学模様が美しく、その中心には種子がわずかに突き出ている。

ブアメラの横断面と表面

ブアメラの中はほとんどが白色の芯でできており、かじると甘味を感じ糖分が多くアルコール発酵の原料としても十分に使えそうだ。
果実の表面には種子が全周に垂直に並び、種子の周りにわずかの赤い果肉がついている。表面に突き出た部分は日焼けして濃い褐色を呈し、下部は鮮やかな赤い色を呈し、まるで長さ約2cmの種子は鉄砲の砲弾に似ています。
芯と実は繊維でできた絨毯ともいえる花床で別けられ、熱をかけることによって表面の果実部分を花床から容易に剥がすことができます。

ブアメラはタコの足

タコノキ科植物の一番の特徴は、太い幹から支柱根といわれる側枝が地面にまで伸び、幹の代わりに栄養物の吸収を行います。
支柱根が何本も伸びた様相がタコの足に似ていることから、タコノキ科と名付けられました。支柱根の表面には、固い棘が無数にあり外敵から木を守るかのようです。
タコノキ科植物は熱帯、亜熱帯地域に植生し、沖縄でもカルガ(アダンとよばれる)と呼ばれる木が海辺でみられます。アダンはインドネシアのみならずメラネシアやミクロネシアなど広く分布していますが、栄養学的な価値は低く、わずかにβ‐カロテンが含んでいるだけです。

ブアメラは、他のタコノキ科の種類と異なりインドネシアのパプア島とその周辺にしかありません。低地のブアメラは、ダニ族や他の高地に住む部族の移動に伴い伝搬されたものと、メンブラモ県知事が語ってくれました。
ブアメラには30種類以上の亜種があると言われていますが、分類方法は明確ではありません。大きさによる分類もありますが、ブアメラの木の大きさ、地域による違いによるもので基本的には同じ種類と考えられます。

様々の大きさのブアメラだが、同一種

黄色のブアメラ(本来黄色だからブアメラと呼べませんが)もありますが、私たちの分析ではカロテノイドを一切含まないため突然変異種(アルビノでしょう)と考えられます。

ブアメラとパプア先住民の子供
ブアメラは1m以上の長さ


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