第45回「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」の概要について(シリーズ4)

「株式会社日本資産運用基盤グループ」を親会社に持つ「JAMPビジネス・イノベーション株式会社」は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
 
今回は、2024年5月15日に国会で可決・成立した「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正金融商品取引法」という)の概要について(シリーズ4)です。改正金融商品取引法は、資産運用立国を目指すために、新興運用会社の参入を促すための規制緩和などを盛ったもので、一部の規定を除き1年以内(2025年5月頃)に施行される予定です。
今回のJAMPコンプラ・メルマガでは、その中から「大量保有報告制度の対象明確化」について説明致します。
 
1. 大量保有報告制度・公開買付制度とは
(1)    「大量保有報告制度」とは、上場株式の5%超の保有者となった場合 (及びその後1%以上の変動があった場合)にその保有状況の開示を求める制度のこと
(2)    「公開買付制度」とは、上場株式の3分の1超を市場外で保有しようとする場合、公開買付(①あらかじめ買付目的を開示し、②全株主に平等な売却機会を与える買付け)を求める制度のこと

2.大量保有報告制度・公開買付制度の現状と課題
(1)    大量保有報告制度の現状と課題:大量保有報告制度における「共同保有者」(※1)の範囲が法令  上不明確であることが、協働エンゲージメント(※2)の支障となっているとの指摘がある。
※1共同して株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者
※ 2複数の投資家が協調して個別の投資先企業に対し特定のテーマについて対話を行うこと
(2)    公開買付制度の現状と課題:市場内取引等を通じた非友好的買収事例(※3)の増加、M&Aの多様化といった環境変化を踏まえ、取引の透明性・公正性の向上を図る必要あり。
※ 3東京機械製作所事件判決(東京高裁令和3年11月9日)では、アジア開発キャピタルが市場内取引(立会内)を通じて、短期間で3分の1超の株式を取得した事案について、投資判断に必要な情報・時間が一般株主に十分に与えられていなかった等と指摘
 
3.大量保有報告制度における「共同保有者」の範囲の明確化と公開買付制度の規制対象取引の拡大
(1)    大量保有報告制度の「共同保有者」の範囲の明確化; 複数の投資家が「経営に重大な影響を与えるような合意」を行わない(※4)限り、「共同保有者」に該当しないことを明確化 【改正金商法第27条の23第5項】
※ 4配当方針や資本政策の変更といった、企業支配権に直接関係しない提案を共同して行う場合等を想定
(2)         公開買付制度の規制対象取引の拡大:
l 取引の透明性・公正性を確保するため、市場内取引(立会内)も「3分の1ルール」の適用対象にする 【改正金商法第27条の2第1項第1号】
l 企業支配権に重大な影響を与えるか否かの閾値を、議決権行使割合や諸外国の水準を踏まえ、議決権の「3分の1」から「30%」に引下げ【改正金商法第27条の2第1項第1号】
 
【所見】
公開買付制度は1971年、大量保有報告制度は1990年に導入され、その後の市場環境の変化等を踏まえて改正されてきたが、2006年以降大きな改正はなされていない。その後の我が国の資本市場の変化(M&Aの多様化、パッシブ投資の増加、協働エンゲージメントの広がりなど)により、既存の制度では、十分に公平性・公明性を確保できない状況となってしまっていた。この度の改正は、現時点では大変有意義なものとなっているが、資本市場及びその参加者は日々変化し続けていることを考えると、高度化したITシステムの活用などをベースにした、よりシンプルな制度の再構築を検討してもよいようにも思われます。
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以上

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