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記憶対策ヨーグルトの研究報告を読んでみた

新発売なのでしょうか。新聞にデカデカと広告が載っていました。
森永乳業『メモリービフィズス 記憶対策ヨーグルト』。
この文章は広告でもなんでもありませんのでリンクなどは貼りません。
でも、気になります。食品の機能性を研究したものは数々あれど、医薬品と違ってその手法もデータ解析もかなり適当な印象、いや意図的にいい結果に見せようとするものすらあると思っています。このヨーグルトはどうなんでしょう。

新聞広告には記憶力を改善したとのグラフが載っていて、その報告論文名もわかりましたので読んでみました。

タイトルにあるようにちゃんと無作為二重盲検比較試験を行なっているようです。二重盲検比較試験というのは、投与する人も使う人も調べようとしている物質が入っている方か入っていない方かを知らされていないのでバイアスがかかりにくい方法です。

試験の対象者は、軽度認知障害が疑われる高齢者で、臨床試験として登録された被験者のうち、一定の条件に合った方80名が抽出されています。ここからランダムにプロバイオティクス群とプラセボ(偽薬)群に振り分けて16週間、1日2カプセルを毎日摂取してもらいました。

結果を評価するために用いたのがBRANS(Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status)という指標でした。初めて聞いた言葉でしたが、テストバッテリーとは多面的・重層的に捉えるため複数の心理的検査を組み合わせたものらしいです。

その結果、BRANS合計スコア、即時記憶、視空間・構成、遅延記憶において
P<0.0001 とプロバイオティクス群が有意に認知力を改善していました。

即時記憶:覚えた単語や物語をすぐに復唱できるか
視空間・構成:空間的関係を認識し、正確に構成する能力
遅延記憶:少し前に覚えた単語や物語、図形を思い出す力

一番下の項目JMCISスコアというのが日本版MCIスクリーニングの点数なのですが、これはP=0.052 と改善傾向くらいでしょうか。

プロバイオティクス群とプラセボ群のBRANS合計スコアの差は11.3ポイントですが、過去にアラキドン酸やDHAで比較したもので6ポイントの差だったとか書かれております(裏はとっていません)。

なぜ乳酸菌を摂取することによって認知機能が改善するのかについては、まだまだ研究途上なところです。
広告では脳腸相関という言葉を使っています。腸の健康状態が脳につながっているというのは聞いたことがあると思います。そのしくみとして、ビフィズス菌類は腸内細菌叢を炎症性の低いものへ変化させる可能性があり、これが脳のミクログリア活性に影響しているのでは、という考察をしています。

現在、認知症の治療薬はあるものの効果は極めて限定的で進行を遅らせられるかもしれないといったものしかありません。MCI(軽度認知障害)の段階で食い止めることができればその恩恵は計り知れません。もっともっと研究が進んで、多くの人に届くといいな、と思いました。1本133円、薬だったら「そんな高い薬いりません」と言われるところですが、美味しくて腸にもいいのだからいいのではないでしょうか。

最後に、この研究はB.breve A1 という乳児由来のビフィズス菌200億個で行われていますが、他のビフィズス菌ではどうなのか、量を増やしたらもっと(?)のようなことは分かりません。わかるといいなあ。


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