夢を撚る
ここは大気との境目、天空より来たる。夜のとばりが下りるころより、無数の笹の葉が空(くう)を覆い隠すのです。この笹の葉と申しますものは実際には笹の葉でなく、そのような形をした船が何層も重なり合って闇夜を作っているのです。
さて、その笹の葉、船と申しましたからには船頭がおります。虚空のごとく何も写しはしませんけども彼らはやはり船頭なのです。彼らの仕事は人間の仕草に表すとするならば底引き網。素粒子の細かいものを撚り、網目状にしたものを天空より地上へと垂らす仕事をしておりました。
何層も寄り集まった船たちで支え、何を底びいているかといえば人間の夢でありました。夢を撚り、天空へと送る仕事をしておりました。夢というのも大小さまざま、色へだたりなく空(くう)へと送る理由につきましては、その物質が星に影響を与えるからであります。
勿論、見えるわけではありません。叶うものでもありません。ただ送るだけの仕事を何世紀も何億年も続けておりました。では人間が生まれるまで星はいなかったのでしょうか。いいえ、おりました。太陽が沈むころ、天空より来たる使者は人間がおらずともその漁を続けておりました。
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