ご飯ちょうだい その2
写真は、巣立ちビナにご飯を運ぶ親鳥の図です。
カイツブリは普通に見られる水鳥としては最小サイズの鳥で、よくいるカルガモの半分程度の体長しかない水際の小鳥のような存在です(そのせいで親鳥が雛とよく間違われます)。
このためか雛鳥が生き延びられる確率は低く、比較的天敵の少ないこの公園でも、5個の卵が産み落とされたとして成鳥にまでなれるのは多くて2羽程度に留まっています。巣立つ前に全滅するなんてことも普通です。
写真の家族の場合、現在三羽が巣立ちビナとして生き延びているんですが、なにしろそういうことことがあるので、この公園を通りかかるたびに雛たちの数を数えては「頑張って生きのびろよ」と呟いてしまう日々です。
そんなカイツブリたちではあるんですが、ところでこの写真の二羽の巣立ちビナをご覧になって、何か気付くことはないでしょうか。
いや多分、言われて見直してみたら自明なレベルであるとは思うんですが、実はこの二羽、サイズがかなり違うんですよ。
一応補足をさせていただくと、この二羽は当たり前ではありますが同じ日に産卵された卵から孵った兄弟です。
でもその後、成長の度合いに結構な差が付いてしまったようで、見ての通りそれがそのまま体のサイズに表れてしまっています。
でまあ、まだ自分では餌を捕れない彼らのことですから、その成長の差はどこから生じるのかといえば、主に親から貰える餌の量にかかっているんですね。
ようは親鳥が餌を持ち帰った時にどれだけ積極的に前に出られるかどうかで成長の度合いのほとんどが決まるわけで、この写真にもそれがよく現れているように思います。
つまり体の大きさが大きければ泳ぐのも早いし、前に出ていこうとする気迫みたいなものにも差が出ます。
その結果、加速的に大きいものがより大きく育つ傾向は強いようです。
更に、早めに育てば当然、天敵・災害の脅威に立ち向かう力は増しますし、そして逆もまた真です。
このへん、カイツブリ以外の鳥たちの世界でも全般的によく見られる現象ですが、そういうことに気付くたびに、やはり自然は厳しいなあと思わされます。
一方でカイツブリの場合、見ていて救いになるようなこともないではありません。
というのも、給餌の問題で成長に差が出ていたとしても、親鳥は最終的にわりと等しく巣立ちビナ達を扱うように見え、一部の鳥にあるような育ちの遅い雛は放っておかれるみたいなことは、見ている限り起きないようだからです。
つまり成長の早い雛が餌を食べ飽きた頃合いで親鳥はちゃんと成長の遅い雛にも給餌するしますし、また、成長の早い雛がどんどん育って親離れを始めても、親鳥は成長の遅い雛の面倒を見ることをやめないようにも見えるんですね。
もちろんこのあたり、親の愛情以外の、雛の生存率が低い鳥ならではの理由もあるようには思います。
すなわち、カイツブリの雛は他の陸上の鳥なんかと比べてひどく弱い存在ではあるので、天敵の襲撃や自然災害的なものはちょっとやそっとの成長差くらいでは抗すことはできません。
なので成長の如何に関わらず、ほとんどは等しく運の差で死んでしまう。
だから親鳥もできるだけ数を残すために、成長の遅い雛にもできるだけ等しく接しようとするのじゃあないか、と。
このへん、人間的な美談にはほど遠い話ではあるんですが、しかしそれこそがカイツブリたちが日々直面している世界の厳しささそのものであって、それに持てるものの全てを使って抗おうとする真剣な姿なんだろうなあと私は思うわけです。
そしてそういった事実に気付き、安っぽい美談を捨て去ると、これから数ヶ月後、親鳥と同じ姿に育った彼らを目にした時の感慨も当然変わってきます。
なにしろその姿は、文字通り身一つで天敵だらけの世界を生きのび、今も戦い続ける強さを持った存在として見えてくるわけですから。
とまあこの写真は、そんな小さな巨人たる彼らの日常を写したかった一枚ではありました。
@三鷹市
※時間がない上に書きたいこと沢山で、いつにも増して書き殴りですいません。
おまけ(親鳥を一生懸命呼ぼうとしている一番小さな雛鳥)
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