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「 睫毛かと思ったら耳毛でした 」
ご存じの方は多いと思うんですが、鳥の #正面顔 ってヤバいものが多いんですよね。
特に魚なんかを捉えて食べる系の鳥は、クチバシの先方向だけは両眼視に近い状態で見られたほうが有利だからなのか、その方向から顔を撮ると目がギョロっとして怖い顔になりがちです。
代表的なものは私が好きなサギ類かなと思うんですが、獲物を探すクチバシの先やや下方向から見上げる顔は、捕食者そのもののって感じで個人的に恐竜よりよほど無慈悲さがあってで怖いなと感じるんです。
そんななか、サギ類と同じ水場にいるカイツブリはというと、捕食者のわりに顔つきは恐ろしくなく、正面顔もむしろ可愛らしく見えることが多くて、ファインダーや双眼鏡越しにもなんとなく安心出来る存在ではあります(あくまでもヒトとしての私の主観でではありますが)。
でまあ、そんなカイツブリの雛たちを見ていたこの日、なぜか雛たちが私のすぐそばでクルクル回るという不思議な僥倖に恵まれたので、彼/彼女がこちらを向いた瞬間にシャッターを切ってみました。
このときは夕暮れから30分は経過していたので、実はファインダーではもうこちらを向いた雛の顔は暗くてよく見えていませんでした。
それでもまあ写るだろうと撮っておいたのが、この写真というわけなのですが……。
「あれ、なんか睫毛白い?」
帰宅してドキドキしながら写真を開いた瞬間の感想が、これでした。
SNSサイズだとちょっと見にくいかもしれないんですが、この写真をディスプレイ一杯まで拡大すると、雛の正面顔の目のあたりに白い睫毛っぽいものが生えてるように見えたんですよ。
それもかなり立派で、三国志の武将である馬良の白眉を思わせるような、立派なヤツが。
正直、これにはかなり驚きました。
なぜって、今までカイツブリもその雛も散々見てきて、雛の目の周りに白い睫毛なんて生えていた記憶はなかったからです。
でまあ、他の写真と見比べつつこの白い睫毛っぽいヤツをよくよく見てみました。
結果、どうやらこの白い睫毛っぽく見えていたものは、睫毛や眉毛の位置ではなく目よりも奥に生えているよう。
雛の横顔画像は文末に拡大したものを貼っておきますが、それを見ると白い毛は目の上に一条と、加えて目の真ん中と下にそれぞれ一条の合計三条。
一番長い毛は、目よりも後頭部側のやや下に生えていることが分ると思います。
大人のカイツブリの写真なんかと見比べるに下二条の毛の位置は耳があるあたりのようで、どうもこの長い毛は目だけでなく耳を保護する役割があるようなんですが、それが正面から見ると白い睫毛(または眉毛)のように見えていたわけなんですね。
ちなみにこの白い毛に相当する毛は雛の時期特有のもののようで、大人のカイツブリには見られません。
大人のカイツブリの場合は、剛毛と呼んでも良いような強そうな毛が目の後ろあたりから後頭部へ向けて生えていて、潜水時に耳をしっかり覆うような構造になっているようです。
雛のこの白い毛がどういう意味をもって生えているのかは分りませんが、なにしろヒト科ヒト属ヒトなむくつけきオッサンの私がなんとなく可愛らしいなと思ってしまうようなものなので、もしかすると、親鳥の保護欲に訴えかける働きもあるのかも知れません。
親鳥の耳保護の毛は頭の他の毛と見分けが色合いなんですが、雛鳥のこの毛は明らかに他の体毛とは違う目立つ色ですし、専ら視力で生きる鳥の親が影響されないわけはないですしね。
――というこれは、ひたすらに可愛らしいカイツブリの雛も、案外しっかりした生存戦略のもとに生きているのかもなあと、そんなことを考えた一枚ではありました。
追記
↓が雛の横顔の等倍画像です。
ISO6400越えの等倍トリミングな画像なので絵は荒れ荒れですけど、白い毛がどういう風に生えているかはよく分ると思います。