「 優しい階段 」
本来ならまっすぐ設ければよかった階段。
でもちょっとだけくねっている。
理由は、面白い形をした杉の木がそこにあったから。
設計的には邪魔な木。大して立派でもないありふれた杉の木を、引っこ抜いたりせず、むしろ階段のほうを曲げて設計した誰か。
名前も知らないその人に、私は拍手を送りたい。
きっと気付く人は少ないし、賞賛されることもないだろうけど、その優しさが私は好きだからだ。
●撮影ノート
「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」+「Nikon Z6」
FNo:1.8
シャッター速度:1/30
合成ISO:3600
合成露出補正:-2.0EV
この写真で苦労したのは、ピン位置と被写界深度の兼ね合いです。
この写真の主人公は木と階段の両方なわけで、本来の私の撮り方であれば、両方を被写界深度内に入れるのが正しいです。
具体的に言えば、F8くらいの絞りでマンホールの位置あたりにピンを置いて撮るべきと思いました。
ですけど、この場所はこの時間(夜間)には当たり前に暗いので、F5.6よりも絞るとノイズだらけになっちゃう上に、手ブレ補正を効かせても手ブレの心配も出てきてしまいます。
しかもこの時は同行者がいたので、ササッと撮らないといけません。
てことで、絞りはF1.8に妥協し、どうしても欠かせない夜の階段の実体感を優先して、木のほうは少しボケて貰いました(ピン位置は階段の中央やや手前)。
階段を優先したのは、階段の段の鋭角さとか手すりの照り返しがきちんと被写界深度内に収まってシャープでないと、絵面が崩壊すると思ったからです。
逆に木のほうは、ディテールはそんなに大事ではないと思えましたし。
一方で撮影時の立ち位置は、手すりの照り返しが見えやすく、ディテールのはっきりしない木でも存在感がある程度でる位置を優先し、それと、奥の黄色い照明がある程度見える(階段の終点が引き立つため)場所を選びました。
また、左の木を普通に入れてしまうと、右の木よりも左の木のほうがだいぶ立派(太い)関係で主役が紛れがちだったので、片側を切って壁っぽくすることで存在感を薄めました。
結果として、まあまあ難易度の高い私なりのストーリー(本投稿の本文にある通りの内容)を示せたかなあと思います。
ちなみにこの場所は私の今の住居の近くにある某公園の一角です。
つまり、もう何回来たか分からないし、何回撮ったかも憶えてないような“普通の場所”です。
個人的に趣味の写真家は、ご近所にこういう好きな場所が何ヶ所かあると幸せな写真生活が長く送れるなあと思っています。
また、こういうケの場所を楽しく撮れる写真家さんとは仲良く出来るなあとも。
スナップ写真は、ハレの日もケの日も撮るものだからです。