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30年日本史00036【旧石器】旧石器時代総括*

 ここまで、旧石器時代について述べて来ました。
「日本にも旧石器時代があった」=「1万年以上前にも日本列島に人が住んでいた」
という仮説に挑んだ直良信夫。
 岩宿遺跡の発見によってそれを実証した相澤忠洋。
 座散乱木、馬場壇A、高森、上高森の発見によって「4万年前」を「70万年前」にまで遡らせ、考古学界を欺き続けた藤村新一。
 本稿では、旧石器時代研究を進めた2人と遅らせた1人を取り上げました。
 捏造発覚後、旧石器時代研究は一からの出直しを迫られました。しかし、出直しの後、特記すべき進展が2つありました。「日本最古」を更新する発見が2つ起こったのです。
 平成15(2003)年に金取(かなどり)遺跡(岩手県遠野市)で8万年前の地層から石器が発見され、さらに平成21(2009)年には砂原遺跡(島根県出雲市)で12万年前の地層から石器が発見されました。
 この石器が自然石の可能性も指摘されていて、まだ何とも言えないのですが、この研究が正しいとすると、砂原遺跡こそが現時点では日本最古の人類が生きていた証拠ということになります。12万年前ですから、上高森遺跡の「70万年前」に比べると「ずいぶん最近だなあ」といった印象ですが、それでも貴重な発見です。
 日本の旧石器時代は一体いつまで遡れるのか。今後の研究が待ち望まれるところです。
 さて、旧石器時代の話はこれでおしまいです。結局、旧石器時代の人々の生活がどんなものだったかをほとんど描くことなく、研究者たちの動向ばかりを追いかけて来ました。本稿を読んでも、旧石器時代に関する知識を何も得られなかったかもしれませんが、「人間の個性がぶつかり合うドラマティックな歴史」を楽しむことが目的ですから、これで良いと思っています。
 教科書では旧石器時代の記述はほんの1ページ程度ですが、その裏には様々な人間ドラマがあったということが分かっていただけたのではないでしょうか。
 氷に覆われ、火山活動が活発で、大型動物が行き交う非常に厳しい時代に、土器を持たず(持っていた可能性も指摘されてはいますが)打製石器をくくり付けた小さな槍だけで生き抜いた旧石器時代。
 旧石器時代は数万年続きますが、概ね1万3千年以上前(諸説あり)に終わりを迎えることとなります。その原因は、氷河期の終結という気候の変化でした。
 次回から、比較的温暖で植物性食料が豊富な縄文時代に入ります。縄文時代もまた、人々の生活というよりは、考古学者たちの事績を追いかけていくことになると思います。

旧石器時代の解説書として最も分かりやすいもの。絵が豊富で見やすく、当時の厳しい生活がイメージできる。

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