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北欧の竜はドラゴンではなく蛇?
映画 『ノースマン 導かれし復讐者』 のコンセプトブック(洋書)に載っていた「ヴォルスンガ・サガ」(ドイツのジークフリート伝説の北欧版。シグルズ伝説とも)のタペストリーに、シグルズがファーヴニル(竜)を討伐する場面があります。
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穴に隠れ、下から心臓を一突きにするという伝承に忠実なのも良いのですが、何よりもファーヴニルがいわゆる西洋らしい翼を持つ竜ではなく、ヨルムンガンドを想像させるデザインになっています。
ヨルムンガンドはミズガルズ蛇。北欧神話に登場する、世界をぐるりと取り巻いている巨大な蛇です。
ロキの三人の子供の一人で、ほかの二人(人じゃないけど)はフェンリル狼と冥府の女王ヘル。
蛇といえば、オーラヴ・トリュグヴァソン王(オーラヴ1世)の軍船の名がまさに長蛇号 (Ormrinn Langi)でした。
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オーラヴ王の長蛇号に乗り移るエイリーク侯の戦士たち
オルム(Ormr)は「蛇」 を意味する古ノルド語で、男性名によく使われています。
余談ですが、日本でも昔は男子の名に強い動物名が多かったですね。
熊之助とか、虎太郎とか。
北欧も同様で、ビョルン(熊)、ウールヴ(狼)、オルン(鷲)などあり、今もポピュラーな名前です。
ところで、ヴァイキング船のことを竜頭船とも言いますが、舳先の飾りだけ観ると竜なのか、蛇なのかわかりません。
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ですが、サガで好まれるのはドラゴンではなく長蛇。
ルーン石碑に彫られているのもそれです。
![](https://assets.st-note.com/img/1682836806826-7Owv6PqXfi.jpg?width=1200)
やたら胴体が長い蛇。
ヨルムンガンドを表わしているのだと思います。
イングランドやウェールズの竜といえば、翼のあるドラゴンですね。
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ヴァイキング時代の北欧には一般的な西洋竜の概念はなく、竜といえば長蛇ヨルムンガンドを指していたのかもしれません。