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【MONDO 映画ポスターアートの最前線】アフター6ジャンクションで紹介されたオルタナティブポスターをまとめて紹介

みなさんはオルタナティブポスターという言葉を耳にしたことはありますか?
映画公開時に一般の観客に向けて製作されるポスターとは別に作られる、アート志向のポスターをオルタナティブムービーポスター(Altanative movie poster)や映画アートポスターと呼びます。
※日本では省略された「オルタナティブポスター(Altanative poster)」を用いることが多いため、この投稿でもオルタナティブポスターで表記を統一します。

さて、オルタナティブポスターというアートのカテゴリーを生み出したのが、テキサスのアートハウス・MONDO(モンド)です。
2004年にテキサス州、オースティンの新興映画館チェーンAlamo Drafthouse Cinemaの一角でオリジナルのTシャツを販売する店からスタートしました。
その後、Alamo Drafthouse Cinemaが企画した映画祭や上映イベントに合わせ、スクリーン印刷による限定版ポスターの販売を行うようになります。

多彩なアーチストを起用した、MONDOの斬新なポスターはアートとしての評価が高まり、2008年ごろからは映画会社、製作会社といった権利元の許諾を得た、オフィシャル商品としてオルタナティブポスターの制作・販売に乗り出します。さらにはサウンドトラック盤レコードの販売やフィギュアの製造販売もスタートし、多角化を進めていきました。
※MONDOは2004~2008年頃までは「イベント上映の宣伝、並びに記念のポスター制作」という建前で権利元の承認がないポスターを制作していましたが、以降は権利元の許諾を得て販売しています。
アメリカなど「フェアユース」の概念が優先される国では芸術的表現の名の下に、権利元に許諾を得ないアート作品を販売するアートハウスがいくつもありますが、MONDOはオフィシャルライセンスと質の高いアートにこだわることで、ブランディングに成功します。
ここが一般的に「ファンアート」と呼ばれるものと異なる部分です。

2010年代のアートシーンでひとつの流れを生み出したMONDOでしたが、Alamo Drafthouse CInemaがコロナ禍によるロックダウンと経営環境悪化に伴い、2021年3月に破産申請。
経営再建の一環として、2022年6月にMONDOはフィギュアの製造・販売を中核とするアメリカ企業・FUNKO(ファンコ)に売却されます。
FUNKOが持つ版権ルートとMONDOのアートディレクションの融合でさらなる発展が期待されましたが、FUNKOはMONDOをコレクタブルトイとレコード販売に注力すべきとの経営判断をし、2023年3月にポスター事業の縮小、従業員の解雇を行いました。
解雇された従業員には共同創業者のMitch Putnam氏や主要なアートディレクターも含まれており、この時点でアートハウス MONDOは事実上の終焉を迎えました。
その後、MONDOは独自のポスター事業構築を目指していますが、柱となるアートディレクターの不在、多数のアーチストがMONDOの路線変更による離脱をしており、迷走していることは否めません。

そして、2024年1月、MONDOを解雇された主要スタッフが新たなアートハウス『Mutant(ミュータント)』を始動しました。
Mutantのアートディレクター陣の中にMitch Putnam氏の名もあることから、
MONDOのハートの部分はMutantに継承されたと考えてよいでしょう。

ここからは、2023年2月16日のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の冒頭で、ライムスター宇多丸氏が東京・国立映画アーカイブで開催されたMONDO展こと『MONDO 映画ポスターアートの最前線』を紹介した際に言及されていた、オルタナティブポスターのまとめて紹介したいと思います。
※以下の投稿内容は私が管理しているブログmondo maniac』の投稿を推敲したものです。
Mutantがスタートしたことで、これからオルタナティブポスターの存在を知る方も増えると思い、noteにまとめました。

MONDOが販売したオルタナティブポスターについては、2次流通(ebayなどのオークションサイト)で購入が可能です。
直近では2月18日までemoviepostersというサイトで約400点のポスターが出品されています。円安かつ送料+手数料が高額なサイトですが、商品や梱包についてebayよりも信頼できると思います。
※購入する枚数によりますが、24x36インチのポスターを購入した場合、保険を入れると1万円程度の送料+手数料がかかります。

クリックするとemoviepostersのMONDO検索結果に遷移します。
一部MONDO製ではないポスターも表示されますので、あらかじめご了承ください。

Olly Moss氏による『ブルース・ブラザーズ』

『ブルース・ブラザース』
The Blues Brothers
by Olly Moss
2010年
18″ x 24″ 75枚

初期のMONDOに数多くの名作を残しているアーチストOlly Moss氏の伝説的な作品です。
2010年8月13日 シカゴのジョリエット刑務所にて開催された、Alamo Drafthouse主催の上映イベントRolling Road Show Tourために作られたポスターです。
※映画本編のロケ地でもある、ジョリエット刑務所で『ブルース・ブラザース』を上映するという粋なイベントでした。

Todd Slater氏による『未知との遭遇』

『未知との遭遇』
Close Encounters of the Third Kind
by Todd Slater
2011年
24″ x 36″ 300枚

日本映画アーカイブの展示で実物を初めて見ましたが、Todd Slater氏渾身のドットで描かれたマザーシップの美しさ、アート全体を締める青いメタリックインクの渋い使い方に驚きました。
やっぱり実物見た方がいいですね。

Marc Aspinall氏による『グッドフェローズ』

『グッドフェローズ』
Goodfellas
by Marc Aspinall
2017年
24″ x 36″ 225枚

宇多丸氏は「なぜこのシーンが……」とおっしゃっていた、Marc Aspinall氏による『グッドフェローズ』。
分かりやすさを優先する、配給会社制作の宣伝用ポスターとは異なり、大胆な構図やモチーフをアーチストのセンスでまとめることが出来るのが、オルタナティブポスターとも言われる所以です。素晴らしい。
2017年にMONDO主催のアートコンベンション『MONDO-CON4』でリリースされました。

Martin Ansin氏による『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』フォイルバリアント
GHOST IN THE SHELL Foil Variant
by Martin Ansin
2014年
24″ x 36″ 325枚

2014年に開催された最初の『MONDO-CON』にて、映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』がイベント上映された際に販売されたポスターです。
国立映画アーカイブに飾られたものは超レアなフォイルバリアント(フォイル紙にスクリーン印刷したバージョン)でした。
Martin Ansin氏による、密度の濃いアートの構成はもちろん、メタリックかつ複雑な色の変化を魅せるフォイル部分(上の画像の主に白い部分)の美しさは特筆すべきものがあります。
2014年当時のMONDOのCEO、Justin Ishmael氏が同年のNO.1ポスターに選んだ作品です。

フォイルバリアントは『MONDO-CON』の会場で即ソールドアウトし、プレミア化。
ebayでは20~25万円程度で取引されています。
オンラインではこちらのレギュラーが少数販売されました。
バリアントのような華やかさは控えめですが、自分のコレクションの中でもお気に入りの1枚です。

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』レギュラー
GHOST IN THE SHELL Regular
by Martin Ansin
2014年
24″ x 36″ 325枚

Jay Shaw氏による『ロッキー3』

『ロッキー3』
Rocky III
by Jay Shaw
2012年
18″ x 24″ 75枚

虎の口から飛び出た腕が強烈な印象を残す『ロッキー3』はMONDOのグラフィックデザイン番長こと、Jay Shaw氏の作品です。
(一時期はMONDOのブランドディレクターを務めた方でもあります)
同氏が手がけるユニークなデザインの数々はリンク先のサイトでご覧ください。
写真、イラスト、タイポグラフィーなど、作品ごとに異なる素材を中心に据えたグラフィックデザインはどれも素晴らしいものばかりです。

この作品は、Alamo Drafthouseが2012年に企画した特集上映”Summer of ‘82″に組み込まれた『ロッキー3』のために制作されました。
※ちなみに他の上映作品は『遊星からの物体X』『ポルターガイスト』『マッドマックス2』と1982年を彩った作品たちでした。

Laurent Durieux氏による『パルプ・フィクション』

『パルプ・フィクション』
Pulp Fiction
by Laurent Durieux
2014年
36″ x 24″ 2566枚

2566枚と他のMONDOポスターとは一線を画す印刷枚数の『パルプ・フィクション』。
この作品は受注生産でした。
2014年のブラックフライデーセールの目玉としてリリースされ、72時間以内に注文すれば購入できた作品です。
映画本編のモチーフをあちこちに詰め込んだ構成も面白いのですが、
Laurent Durieux氏の作風の一つである「ハッチングによる色調表現」にも注目していただきたいです。
このイラストレーションの空や建物、車、路面、人物に至るまで、グラデーションは線の積み重ねで描かれています。
その細やかな仕事の素晴らしさは、実物を見ないと理解したとは言えません。
自宅に飾っていますが、見るたびに発見がある作品です。

Laurent Durieux氏による『鳥』

『鳥』
The Birds (Here Comes Trouble)
by Laurent Durieux
2014年
24″ x 36″ 375枚

『パルプ・フィクション』に続いて、Laurent Durieux氏の作品です。
まぁ、この荒い画像では何とも表現しづらいですが、このポスターもハッチングが全面に使われており、独特の雰囲気を醸し出しています。
宇多丸氏も触れてましたが、影にさりげなく(とはいえ、わかりやすく)映画本編のモチーフである鳥のシルエットを組み込むデザインの美しさ……。
ぜひ、会場でご覧ください。

宇多丸氏 お気に入りの『グランド・ブダペスト・ホテル』

『グランド・ブダペスト・ホテル』
THE GRAND BUDAPEST HOTEL
by Murugiah
2022年
24″ x 36″ 270枚

こちらは番組放送前週にリリースされた作品です。
紹介についてはこちらをご覧ください。

宇多丸氏が購入した『スーパー』と『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』


『スーパー!』
SUPER
by Leslie Herman
18″ x 24″ , 150部
『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』
BERBERIAN SOUND STUDIO
by Aaron Denton
18″ x 24″ , 145部

両作品の紹介はこちらをご覧ください。
どちらもIFCフィルムズ20周年記念プロジェクトで制作された作品です。

はい、長くなりましたが、「アフター6ジャンクション」で紹介されたオルタナティブポスターのまとめでした。
MONDOのポスターの魅力は色々ありますが、権利元が承認したオフィシャルアイテムでありながら、アートとしての冒険を常に続けているところだと、個人的には思います。
そしてのハートはMutantに受け継がれました。
興味がある方はぜひ1枚、オルタナティブポスターを手にしてみてください。

MONDOのオフィシャルサイトはこちらから。


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