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バットマンとキャットウーマンがオーラルセックスするイラストをTwitterに投稿したザック・スナイダーの本心を探る

6月18日金曜日は朝からTwitterのタイムラインが荒れていた。ザック・スナイダーがトンデモなイラストを投稿したせいだ。まあ米国ではほぼ14時間の時差があるので向こうは夜中だったのではあるが。スナイダーは少し頭がおかしい所はあるが、行動には理由があるので整理した。

■スナイダーが投稿したイラスト

6月18日の日本時間で午前10時ごろ。

最初にVeroに、約1時間後にTwitterに投稿された。

サムネの大きさなどを考慮してここではVeroを貼る。

閲覧注意。笑

バットマンが、

キャットウーマンを、

口で?!

私はこれ思い出したよ。笑

■バットマンは口でやるのか

時を少し遡る。

6月14日月曜日に大手情報誌VARIETYのインタビューでジャスティン・ハルパーンとパトリック・シューマッカーの二人によって、ある興味深いことが明かされた。

アニメ版『ハーレイ』の中でバットマンがキャットウーマンをオーラルセックスするシーンを入れようとしたら、ワーナー・ブラザースから「ヒーローはそんなことしないから絶対に許可しない」と言われた。

バットマンが、
キャットウーマンを、
口で?!(再掲)

実は記事が全体で伝えようとしているポイントは異なっていた。日本でも話題になった『ワンダビジョン』を筆頭に『アンブレラ・アカデミー』や『ハーレイ』など複数の作品を取り上げて、「いわゆるヒーロー物が非常に増えてすっかり定着した昨今では、個性的な作品が出てくるようになった」というのが記事全体の主旨である。

先に引用した箇所でも『ハーレイ』の制作者は「ヴィランを主人公にするからひどく暴力的なユーモアが成立する」ということを示すために、同じ作品の中でもバットマンの行為にはスタジオ側の規制がかかった件を取り上げたという形だった。

しかしながら、むしろファンダムは「バットマンは口でするのか」という議論で盛り上がってしまった。笑

「いかにして『ワンダビジョン』『アンブレラ・アカデミー』『ハーレイ』はスーパーヒーローのジャンルの壁を打ち砕いていくか」というのが原題だったが、世間がどこに食い付くかはコントロールできないものである。笑

■そりゃバットマンも口でするでしょ

そして6月18日金曜日。

冒頭に掲げたスナイダーによるアンサーがこれだ。笑

完全にキャットウーマンの目が逝ってしまっている。笑

キャットウーマンは殴られて鼻血が出ているようにも見える。

イラストのタッチはスナイダーが敬愛するフランク・ミラー風である。笑

一体、誰が描いたんだよ。笑

スナイダーでもギリギリ描けそうな気がするが、背景のスクリーントーンなどがプロの仕業のように見えるので、続報を待つか。

「ザック・スナイダーがバットマンはキャットウーマンに対してオーラルセックスをするのかという論争に終止符を打った」というアホなタイトルの記事も出ていた。笑

私が気になったのはスナイダーのコメントだ。

スナイダーのVeroとTwitterには、どちらもコメントにはたった一言だけ「Canon」と添えられていた。

■カノンとは?

カノンとは何か。最近、ちょくちょく聞くようになった言葉(少なくとも海外勢のタイムラインを見ていると)だがちゃんと調べたことがなかったので確認した。こういうカタカナで浸透してしまった語句を調べるときは下手に和英辞典に当たらずに英英辞典を見るのに限る。

canon:
1. a general law, rule, principle, or criterion by which something is judged
拙訳)常識、規範、原則、何らかの判断基準

2. a collection or list of sacred books accepted as genuine
拙訳)本物と認められた神聖な書物を集めたもの(聖典)

以前からジャスティスリーグやスターウォーズなどで「どちらが正史か」という文脈でcanonはよく出てくるので、私も「正史」だろうくらいには考えていたが、そもそも「一般常識」くらいに使える語句であるのと、同じ正史といっても例えばキリスト教ならローマ法王のような「その宗教の最も権威のある人や団体から正式なものとして認められた聖典」としての色合いが強い語句だったことが分かった。

ちなみに楽器をやっていた人ならカノン進行という言葉で聞き馴染みの深い言葉で、こちらの4番が該当する。もともと聖典という意味があるなら、キリスト教の音楽と相性が良い(有名な例がある)のも納得できる。

4. [Music] a piece in which the same melody is begun in different parts successively, so that the imitations overlap
ウィキペディア)複数の声部が同じ旋律を異なる時点からそれぞれ開始して演奏する様式の曲

話を戻そう。

ここでスナイダーが述べているカノンは2番の「聖典であり正史」を踏まえつつ、1番の「そんなの当たり前だろ」と表明していることになる。このように宗教的なモチーフを、最も人間の業の深い部分に引っ張ってくる所に私はある強烈なアーティストを想起せずにはいられなかった。

それは、ジョン・レノンだ。

■レノン=スナイダーは真の意味でロックだ

1966年にビートルズのジョン・レノンは新聞のインタビューに「僕たちはキリストより人気がある」という発言をして、世界中で議論を巻き起こしたことがある。米国を含む多くのキリスト教国のラジオ局ではビートルズの曲が放送禁止となり、南アフリカ政府やスペインは公式に抗議声明を発表したそうだ。

当時、ビートルズがやっているような音楽は若者が熱狂と喧騒のままにかき鳴らす雑音であり道徳上不衛生なものであるという認識が社会通念として非常に強く、そんなみっともないものの急先鋒が事もあろうに神聖なるイエスを取り上げて比較した点に当時の大人達は憤怒したのだ。

さすがに今回の件がそこまでの大事件に発展するとは思わないが、人間の性(さが)に最も踏み込んだ話題で「canon」という神聖なものを指す言葉を遣ってしまうあたり、今回のスナイダーの投稿にはレノンのキリスト発言に近いものを感じる。

もともとロックは「従来のしきたりや規範をぶち破る反骨精神」の表現手法として生まれてきた背景がある。ここで考えてほしいのだが、お堅い世間に対してビートルズがそれまでに存在しない革新的な音楽とロン毛男子という常識を覆すファッションで殴り込みをかけたのと、ワーナーブラザースが強制しようとする倫理的な圧力をギリギリアウトなイラストで颯爽とぶち壊すスナイダーの行為は本質的に同じではないか。つまり、スナイダーは真の意味でロックなのである。

■個人的な感想

最後にイラストについて少しだけ私見を述べよう。

私はバットマンの中の人とキャットウーマンの中の人がセックスをするのは一向に構わないと思う。ただし、コスチュームを着たままで、建物の屋上でするのはちょっと頭がおかしい人達だなとは思う。笑。

ただし一枚のイラストで何が起きているかを示すためにはこのくらいシンプルな描き方しなくちゃ伝わらないのは押さえておきたい。例えば「ベッドで裸でクンニリングスをしている男女が居て手前にはバットカウルとキャットウーマンの服が脱ぎ捨てられている」くらいのイラストでは、もはやインパクトに欠けるのだ。つまりスナイダーにはこのくらい直接的な表現手法以外には取れる選択肢があまりなかったのではないかという話である。

あとは、まあ、DCEUの元総監督であるスナイダーが投稿したから、なんかまた論争を呼びそうなことをして、という感じにはなるが、例えば『ウォッチメン』原作に出てくるシルクスペクターのエロ本みたいな感じに私は捉えている。少なくとも彼はこの画をジャスティスリーグの続編で撮りたいとは考えてない(なかった)と思われる。

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「ちょっとやだ!これって、お母さん、気持ち悪い!こんなのを送りつけてくる奴がいるの?」
「そうよ。まあ聞きなさい。そういうものにも価値があるのよ。骨董品みたいなものね。今なら1万円くらいするんじゃないかしら。まあ人気者の証拠ってところよ」

スナイダーの落書きが果たして骨董品になるのかは別として、彼らが人気者の証拠であることには間違いないと私も同意する。笑

了。

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しかし、つい先日にジョーゼフ・キャンベルの崇高な言葉を引用していたのと同じ人物かと疑うくらいの落差があるな。笑。


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まいるず
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