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新スースクのプレミアでエアーカットへの愛を叫ぶ(インタビューまとめ)

エアーカットのことを喋らせたいレポーターと、(おそらくスタジオから発言を控えるように指示されていて)なかなか口を割らないキャスト&クルー陣の「こうどなじょうほうせん」をお楽しみください!(笑)

▼日本語訳と解説:

バラエティ公式ツイッターを転載。

やあバラエティのマーク・マーキンだよ!今日はジェームズ・ガンのザ・スーサイド・スクワッドのレッドカーペットプレミアにきたよ。これからマーゴット・ロビー、ジョエル・キナマン、ジェイ・コートニー、その他にもじゃんじゃんインタビューしていくから絶対に観てくれよな!

まずはプロデューサーのチャールズ・ローヴェンから。

ご存知ない方ために補足すると、ローヴェン氏はDCEUのザック・スナイダー作品の全てで筆頭プロデューサーを務めた重要人物です。

チャールズ・ローヴェンが筆頭プロデューサーのDC映画
Batman Begins
Man of Steel
Batman v Superman: Dawn of Justice
Suicide Squad (2016)
Wonder Woman
Justice League
Wonder Woman 1984
Zack Snyder's Justice League
The Suicide Squad (2021)

チャールズ・ローヴェンがプロデューサーのDC映画(※筆頭ではない)
The Dark Knight
The Dark Knight Rises

チャールズ・ローヴェンが参加しなかったDC映画
Aquaman
Shazam!
Joker
Birds of Prey

大作映画のプロデューサーは複数人いるのが基本ですが、DCEUに限定すれば参加作品の全てで「筆頭」なので、かなりの重要人物と言えます。メイキング映像やスチール写真にもしばしば顔を出すので見覚えがある方もおられるのではないでしょうか。たとえば近年のDC映画では彼が参加した作品と参加してない作品では、関わっている人の顔ぶれや作品全体のテイストが大きく異なることがお分かりいただけると思います。

ではジャブがてら最初の質問から。

スースクと新スースクの違いを教えてちょ。

草。スースクはトーンも監督も別の作品だよ。そこで初めて映画化されたキャラがいたよね。
新スースクはジェームズ・ガンが監督してて彼のユニークなバージョンだ。それが頭にTheがついてる理由だよ(笑)。ジェームズの最高なところは物語がどこに行くのか予想もできないところだね。彼は常にトンデモない変化球を投げるんだ。誰だって次の展開を予想すると思うけど、何かしらの点で裏切られることになるだろうね。

先行試写で観た人がみんなジェームズは天才だのクレイジーだのって大騒ぎしてるよ。

スローガンになってると思うけど「素晴らしくクレイジーなマインド」の通り、彼は誰も想像しないような手段でキャラクターを解放することをやり遂げたと思うよ。これは「犯罪者たち」の物語だけど、彼ら全員が生まれながらの悪だったとは限らない。だから彼らのリダンプション(贖罪・罪滅ぼし・更生・社会復帰)の可能性をジェームズは独自の切り口で描くんだ。時には笑えるし、時にはショッキングな方法でね。

ローヴェン氏は「Wonderfully Crazy Mind(素晴らしくクレイジーなマインド)」って本音を言っちゃってるのが面白い。実はインターナショナル版の予告編で表記されたスローガンでは"Crazy"ではなく"Beautiful"が使われて「Horribly Beautiful Mind」と表記されていたからだ。

この"Beautiful"というのは"Crazy"の隠語(または悪い冗談)だろうなーと私は思ってたし、直後に発表された日本版の予告編ではちゃんと「素晴らしくクレイジー」と意訳されていたので「今回ばかりはジャパン公式さんナイス翻訳やんけ」と思っていたのだが、 このローヴェン氏の発言から推測するに「Crazyが本来のキャッチコピーで広告準備が進んでいたが、後からポリコレ的な配慮でBeautifulに修正された」しかし「ジャパン法人には修正が上手く伝わっていなかったか、もしくは日本だとクレイジーがそこまで暴力的な言葉ではないのでそのまま残された」というのが実態なのかな。彼は優秀なプロデューサーなのでキャッチコピーの決定には絶対に噛んでいたはずだ。

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ちなみにBeautifulをもう少し深掘りすると、この予告編では星条旗をバックにBeautiful Mindって文字が出るんだけど、これを見せられたらちょっとした映画通ならすぐに『アメリカン・ビューティー』のことを連想するだろう。こちらは1999年の映画で、主演はケビン・スペイシー、物語の内容としては「古き良きアメリカのような核家族に愛情を持てなくなった主人公のオッサン(42歳)が、一人娘の同級生の少女(16歳)とのセックスを目指してハッスルする」という社会風刺の問題作で、翌年のアカデミー賞で作品賞を獲得して当時は結構話題になった。つまりタイトルは「美しきアメリカは消えた」という皮肉になっていて、しかも2018年になって現実のスペイシー本人がショタコンセクハラが発覚して社会的に抹殺されたという壮大なオチまでついている作品だ。

一方でジェームズ・ガンは2008〜2012年頃にTwitterに投稿していた不謹慎なジョーク(小児性愛、レイプ、人種差別、ホロコースト、エイズなど多数)を理由として2018年にマーベルを解雇された監督である。これは日本に置き換えると、小林賢太郎がラーメンズのコントで「ホロコーストごっこをやろうとしたら怒られた」という台詞を入れていたのが20年後に発掘されてオリンピック開会式の演出担当から下ろされた事案とよく似ている。

ガン監督のマーベル解雇の件は当時SNSでは結構な炎上になったが、そんな小児性愛を連想させる過去を持つ人物に対して、同じく小児性愛でこちらは実際にスキャンダルを起こした俳優スペイシーの代表作を想起させるイメージを使うのは、実は相当に攻めていて意地悪な演出なのである。(アメリカンビューティーにピンと来る人限定ではあるが)

ここまで理解すると、ローヴェンがCrazyというキツイ言葉を使ったのは、逆にBeautifulという意地悪な隠語を使わないで済ませるための優しい気遣いだった可能性さえ出てくるのである。なんて深い話だろう。

以上、アメリカとビューティーを並べると危険、という話でした。

さて、バラエティ記者はいよいよ切り込んだ質問に入る。

知らない人のためにもう一度書いておくが、ローヴェン氏はDCEUのザック・スナイダー作品の全てで筆頭プロデューサーを務めている重要な人物である。

ぶっちゃけ、エアーカットってあると思う?

そうだなあ。デヴィド・エアーは才能に溢れた男だ。ワーナー・ブラザースはスナイダーカットができてハッピーだったと思う。これからデヴィッドがスタジオと話し合いをするか次第じゃないかな。

この肯定も否定もしない好々爺たる受け答え。さすがですな。(笑)

続いてレスリー・アン・ブラント。

ルシファーの最終シーズンってどうなるの?3語で教えて

わくわくする。サスペンス。ハッピーエンド!

ハッピーエンド?

6年かけてこんな素晴らしい物語とキャラクターを作り上げてきた。これってすごく誇れることでしょ。こうやって終わるのはちょっぴり寂しいけど、でも盛り上がってるうちに終われたのは良かったと思うわ!

スースクにまったく関係ない!笑

誰と一番多く共演したの?

みんなだよ。マジで。スクワッドの全員と共演した。今をときめく最高クラスの俳優たちとこんなに共演できて、とてもラッキーだったよ。毎日がとても勉強になった。

ミルトン!俺は君の名前を忘れないよ!(涙)

続いてモンガルを演じたメイリン・ウン。

WBはエアーカットをリリースするべきだと思う?

やるべきよ。なんで?そうでしょ?みんなWIN-WINじゃん。デヴィッド・エアーは彼のビジョンを世に出すことができるし、ワーナー・ブラザースは1本の映画で2倍のお金を作れるのよ。私って天才でしょ!これが中国のやり方よ!世界に名だたるチャイニーズビジネス!(笑)

特に他意はないと思うが、功罪ひっくるめて中国人らしい考え方と言われれば、その通りですな。(本人が言ってるんですからね!笑)

スーサイドスクワッドの家族に加わった気分はどう?

夢が叶ったわ!モンガルになるということ。ジェームズ・ガンと仕事をすること。スーサイド・スクワッドに入るということ。この会場を見てよ!

オファーの電話がかかってきたときどんな気持ちだった?

ちょうど運転してたんだけど、頭が爆発して自動車事故ね!首のここに入ってるの。

映画のままじゃん!(笑)

そうよ。爆発したわ。エージェントから電話がかかってきて社内で大騒ぎしちゃったわ。最初はジェームズ・ガンの極秘プロジェクトとだけ聞いてオーディションを受けて、それで決まったからエージェントから作品名と役柄が送られてきたの。モンガルって初めて知ったけど、彼女って強い女なの。魅力的よね。こんなに強いキャラクターを演じることは滅多にないわ。

モンガル!俺は君の名前を忘れないよ!(涙)

能力の強さと、身体の耐久力のバランスおかしいやろ。(笑)

正直映画館で観たときは投手メイクのせいで人種が分からなかったけど、こうやって普通に話す声を聞くとすごくアジア人っぽい声してるのね。

次は音楽担当の人。

どうしてこの映画に参加することになったの?

彼がジェームズ・ガンとTwitterでころりんころらんしたからよ。

Twitterで繋がったの?(笑)

最初は僕が自粛期間に作った曲をジェームズが気に入ってくれて、Twitterでサポートしてくれてたから、DMで「あなたの作品のファンだから何か仕事があったらやらせて」って送ったら、この映画の企画が舞い込んできたんだよ!

「ころりんころらん」ってするときの手の動きが可愛い。(笑)

クリエイター同士の繋がりって点では、ガン監督は上田慎一郎監督(カメラを止めるな!)とも仲良くしてるよね。SNSを通じてキャッキャするおじさん監督、それがジェームズ・ガンである。(笑)

ケイト・ベッキンセールが真っ赤なドレスを着て歩いている。

え い が と な ん の 関 係 が ? ! (・ω・)

さて、ここでガン監督の盟友マイケル・ルーカーの登場。

スーサイドスクワッドに加わってどんな気持ち?

ビューティフルだね

ビューティフル…というと?

ビューティ(笑)ごめんごめん。一緒に仕事をしたぜ、クレイジー・アメイジング・ジーニアス・ジェームズ・ガンとね!もう何回目だろう。

悪の天才だよね。

悪の天才か。(笑)そうか、そうだな、そうに違いない!

良い意味で、だよね?(笑)

そうさ!でもアイツは俺にヒドイことばかりしやがるんだ。俺はイイヤツなのに…(ぴえん)

だってあなたの顔は怖いもん。(笑)

ちょっと何を言ってるのか分からない。(笑)

だって前に見たときに、あなた顔がブルー1色だったよ。怖いよ。

別に怖くないだろ、ブルーはビューティフルだ。空と同じだよ!

ゴキゲンだな。(笑)

「ヒドイこと」っていうのは映画を観た人には分かるけど、たぶん開始すぐに●●されてしまうことだろうね。ネタバレを気にして分からないように言ってるけど。(笑)

2016年版と今回のスースクはどう違うの?

観てないから分かりまへんな!

マジで?観てないの?興味わかないの?(笑)

う〜ん、全然!俺って好奇心がないんだわ。

(またまた〜)

俺にインタビューする前に知っておいて欲しいことがあって。

オーケー聞かせて?

俺にはユーモアが無い!そして好奇心も無い!

マジなのかギャグなのか分からない。(笑)

興味がないってのはある程度マジかなと思えて、なぜなら現代って、自分が関わる作品や昔から好きなもの以外は観なくたってどうにかなる時代だしね。好きなものだけ追いかけるっていうのは精神衛生上よいことだと思うし。もういい年齢なんだし宮崎駿みたいにガンコなクソジジイになるのもありでしょ。

撮影で一番クレイジーだったことは?

俺が配役で指名されたことかな!(笑)でもそれって撮影前の話だよな、ええと、撮影中で一番クレイジーだったのは、ええと、待って。ええと、俺って撮影してたと言うよりは、ええと、俺はただセットに行って遊んでただけみたいな気分だ。

何一つまともに答えようとしていない。(笑)

スーサイドスクワッド3があるとしたら出演する?

続編があるの?

いや知らないけど。あなたに聞いてるのよ。(笑)

あるなら言えよ!

こっちは興味あるんだ?(笑)

金さえ払ってくるなら!俺はなんだってするぜい!(笑)

簡単な男だね(笑)

そうだよ!(笑)俺は本当に本当に小物だぜ!お前さんは知らないかもしれないけどな、金さえ払えば、俺はハックルベリーベイブ(何だって言いなり)だぜ!(笑)

ルーカーは最後に「ハックルベリーベイブ」って言ってて、基本的には「言いなり」で良さそうだけど、もしかしたらエロい意味もありそう。(What is the meaning of my huckleberry friend? - Huckleberry is a wild berry but it is also a 19th century expression that means I am the right person for the job or in this case 'my perfect friend')

全然関係なくてただの思いつきだけど、携帯電話のブラックベリーも「なんでもできる」っていう感じを出すためにベリーで終わる言葉を選んだのかなあ。

とはいえ全体的にマイケル・ルーカーは酔っ払ってるかクスリでラリってるだけのジジイの戯言って感じで、私は真剣に聞いて損した気分だ。(苦笑)

さて気を取り直してネイサン・フィリオンに行ってみよう。

この仕事を受けたときどんな感じだったの?

こんな感じだよ。ジェームズから電話がかかってきて「ねえ、今度やろうと思って…」「イエス!やります!」最後まで聞かなくてイエスって答えるんだ。いつもそうだよ。それで後から何に契約したのかちゃんと見るんだ。

信頼関係ってやつだね。

演じた役柄のどこがおかしいのか教えて。

私が演じたのはTDKだ。最初に聞いたときはバットマン(The Dark Knight)だと思ったよ。わお、最高じゃん!ベン・アフレック、ごめんね!

ロバート・パティンソンには言わなくていいの?(笑)

え?もう一人いるの?もうメチャクチャだな!(笑)…とにかく、私の演じるTDKっていうのは、ええと、能力の話をしよう。例えば、あるキャラクターは「ただクレイジーであること」っていう能力を持ってる。まあそれが能力って呼べるのかよく分からないけど。とにかく、TDKには魔法のような能力がある。彼の腕は体から外れて空中を浮かぶんだ。誰しもができることじゃないよね。じゃあ彼がそれで突入部隊に所属できるかって?無理だよ!せいぜい子供のバースデーパーティーがお似合いだ。ラスベガスで働くのも良いかも。

でも結局スクワッドに入るんだよね?

そこが問題なんだよ。彼は自分の『能力』が突入部隊に向いてると思ったんだ。それが間違い、そう、それが間違いなんだよ!

TDKはどんな罪で捕まってベル・リーヴに送られたのか気になるわ。(笑)

フィリオンは以前のインタビューでもDCファンのことを気にかけた発言をしていて、そこはやっぱりルーカーと違って若いから頭も柔らかいし、いろんな意味で今風のマインドを持っているんだろうね。私は昔からDCが好きだからどうしてもDC贔屓になるんだけど、フィリオンはナイスガイだから好きだね!

次は、禁断の質問。

撮影でガン監督ってクレイジーなの?

いつもメガホンで喚いてるよ。(迫真のモノマネが続く)

スラングっぽいけど「窓に近寄って!望遠鏡を掴め!腰をグラインドさせろ!もっともっと!よし泣き喚け!」と言ってるように聞こえた。望遠鏡というのは伸び縮みする筒で、きっと下品なことを言っている。(笑)

こんにちは私はマークです。イカした格好だね!

マークか。私はクリストファー・スミスでありピースメイカーでありジョン・シナだ。まあその中のどれでもいいんだけどね。

どうしてプレミアにこの格好で来ようと思ったの?

スーサイド・スクワッドがSNSでバズってるだろ。みんながどんな映画になるか話してるんだ。そこでウェストコートの正装でおめかしした私が出てきたら映画に間違った印象を与えるかもしれないだろ。だからコスチュームを着ることに決めたのさ!

めちゃオモロイやん。(笑)

ジェームズから電話が来たんでしょ?どうしてこの仕事を受けようと思ったの?

彼はいつも自分でキャスティングしてると思うんだけど、彼のキャスティングはよく練られている。私はこの役でファーストコールでは無かったようだけど、少なくとも候補者リストには最初から入ってたらしい。決定の前に一度ミーティングをしたんだ。映画について話して、彼のオフィスの壁にはストーリーボードが全て貼り付けてあった。私は彼と一緒に仕事がしたいという意向を伝えて、幸運なことに彼が私を選んでくれたのさ!

撮影で一番クレイジーだったことは?

ジェームズが実写にこだわった点だね。でもこの作品は戦争やらホラーやらの要素でR指定になってるくらいだから、撮影のテイクを重ねるたびにセットを綺麗に掃除して作り直してもう一回やり直すんだ。やばいよね。あとは、キャストの結束がだんだん強くなっていくのも良かったよ。撮影を通してみんながだんだん役を成熟させていったんだ。私には身に余るほど素晴らしい経験だった。

確かにイドリス・エルバとの掛け合いとか良かった。(小並感)

第一作のスーサイドスクワッドとの違いを教えて?

いい質問だね!この質問をしたのはあなたが最初じゃないし、僕も同じことを質問するだろうし、他のみんなも同じだろう。だからこそみんなには自分の目で観てもらいたいんだ。もしここで私が「この2作の違いはね」って言ってしまったら、それが先入観になるだろ?そんなの嫌だよ。だからこの質問があることが一番クールなんだ!それに、みんなが話せばバズりに繋がるしね。(笑)

なんかクレバーでマジメすぎて笑えてくる。このかしこさはロック様と相性が良いだろうし、ワイスピ関連で共演が続いたらやがてヴィン・ディーゼルと不仲になりそう。(笑)

WBはエアーカットをリリースするべきだと思う?

企業にとって一番の関心ごとは顧客の声を聞くことだろ?そして「あるもの」が求められていて、もし企業が「それ」を持っているのだとしたら、なぜ提供しないの?WBはジェームズに創作の自由を与えた。ジェームズとスタッフは観客の声を聞いて最高の仕事をした。これはとてもインタラクティブ(相互に影響を与える関係)なもので、WBは最高の人物を選んだと思うね。私はこのプロジェクトの一端を担えて本当に幸せだよ。

特に前半部分だけど、直接的な言及にならないように、うまく一般化して話している。これは相当言葉を選んでいるぞ。(笑)

ピースメイカーのテレビシリーズが楽しみです。

まずはスーサイドスクワッドを観てくれ!話はそれからだ。この映画が売れたらテレビができるんだ。頼むよ。

もう撮影はしてるの?

クランクアップしたよ!

本当に?

もうテープは撮影済みさ!へへーん!

(マーゴットが肩を叩きながら)素敵な服ね。(そして去る)

え?あ、ありがとう。あ、あなたもね!

君も白いドレスを着てくれば良かったのに!(笑)

試したよ。でもこっちの方が似合ってたからさ。

暑い中、こんな衣装でご苦労様でした!

あなたが出演するから私はこの映画を観ました!(笑)

(どのクチが言うか。笑)(バシッ!)

完成してどんな気持ちですか?

超興奮してるよ!2ヶ月前に婚約者とプライベートシアターで観たんだけど…

泣いた?(笑)

そ、そりゃ、感情的にはなったよ!感情的にはね!この18ヶ月の集大成なんだから。皆で一緒に笑うことって大事だろ。この映画はそれを可能にする。この作品は壮大でスリリングな体験だ。最初から最後までテンポが上がりっぱなしの傑作だよ。

明らかにレポーターにイジられているんだが、過去に何かあったのだろうか?キナマンってメディアの前でよく泣くのか?(笑)

18ヶ月というのはロックダウンが始まった時期にほぼ合致してて、アメリカではワクチン接種が進んで自粛の終わりが見えつつあるので感慨もひとしおなのだろうな。

過去に一作目のスーサイドスクワッドはあまり好きになれなかったと私に話してくれましたよね。WBはエアーカットをリリースするべきだと思う?

そりゃそうでしょ。誰だって監督のビジョンが観たいと思うものさ。

あなたはエアーカットを観たの?

観てないよ。

本当に?あなたは観るべきだ。

そうだね。それは良いアイディアだと思う。

キナマン過去にそんなカミングアウトをしてたのか。

は!だから今回の新スースクでキナマンは???(冗談です)

いよいよレッドカーペットですね。オーケー。それじゃあスーサイドスクワッド1とスーサイドスクワッド2の最大の違いを教えて。

ええと、完全に別物よ。どの作品も違う監督と作ったから、全く違う経験だったし、撮影セットに入ってしまうと、そこに生まれる命も別物になるし、一緒に仕事をする人も違うし、だからあらゆるものが違うの。ただある意味では、『スーサイドスクワッド』から『ザ・スーサイドスクワッド』に人物がクロスオーバーしてるのから、既存の関係性を引き継ぎつつも新しい関係性を構築するというのは良いことだと思うわ。思いも寄らないキャラクターが創造できることに繋がるから。

インタビュアーはわざと1と2という言い間違いをしてるね。疑って見ると、インタビュアーはロビーを感情的に揺さぶる意図があるのかもしれない。これに対してロビーは「『スーサイドスクワッド』から『ザ・スーサイドスクワッド』に」とわざわざ正しい名前で言い換えている。

あと彼女は口に出してないけどBOP(バーズオブプレイ)のことも意識して話してるね。「both(どちらの作品も)」と言わずに「everytime(どの作品も)」と言ってるので3つ以上あるときの話し方だと思う。

マーゴット・ロビーが一番意欲的だったのはSSでもTSSでもなくBOPである。BOPは彼女が唯一プロデューサーとして入った作品だ。彼女にとってみればTSSはハーレイの3つ目の作品なので、本音ではスーサイドスクワッド3と呼びたいのかもしれない。

ロビーはオーストラリアからアメリカに出てきて最初はディカプリオとの共演作でおっぱい丸出しとアドリブビンタという過激なトピックで注目を集め、人気が出てくるにつれてセクシーを売り物にしない役にも挑み始め、最近ではオリンピック選手やイギリス女王など「強い女性」をテーマとした作品に積極的に取り組んできた。

そんなロビーの次なる挑戦がBOPだった。SSで人気爆発したハーレイ・クインのエロさを封印して、キャストはもちろん監督・脚本・衣装まで女性で固めて、悪役はゲイ設定にしてマッチョイズムを極力排除し、男性目線ではない全く新しい切り口のアメコミ映画を作ろうとした。

しかし大規模予算にモノを言わせて大迫力VFXで脳汁ブシャーの快感を提供して人気を博してきたアメコミ映画の流れにおいて、このアート路線に攻めた演出は「期待していたものとは違う」という感想と不満を生んでしまった。考えてみてほしい、BOPの最後にブラックマスクが死ぬ時、どんなシーンだったか覚えている人がどのくらいいるだろうか。予告編や本編で展開されていた極彩色の爆発やチームプレイから一転して、霧深い暗闇の中でたった一発の銃弾でケリを付ける。意外性とリアリズムをねらった演出(転落した死体を確認しなかったのは続編への含みを持たせるためだった可能性もある)だと言えるが、逆に消化不良になってしまったファンも少なくないだろう。

またキャラクターの多くが原作アメコミで知名度が低かったのでアメコミファンの心を掴めず、超ビッグスターに頼らない配役で臨んだことでミーハー層の関心を惹けず、筋肉とスプラッターを封印したことでスナイダー原理主義者の眼鏡にかなわず、エロさを封印したことで男子中学生(と一部の大きなおともだち)のちんこを握ることもできず、別に媚びてるとかじゃなくて女性から見てもあの「セクシーを武器に世のバカな男共をすべて手玉に取る感じ」が好きだったんだよという女性ファンのアンテナにも掛からず、総じて大半の観客からは不評を買い興行成績は不振に終わった。もちろんBOPを観て素晴らしいと言ってくれる人(=私のような教養人のことだよw)も沢山いたけれど、心ないバッシングも多い(特に海外のTwitterは酷い傾向がある)作品だった。彼女は悔しかったに違いない。

こうした想いを全部飲み込んだ上での、先のインタビューの回答になってるんだと思うと。。。

完全に別物(=続編じゃない)よ。どの作品(=3つある)も違う監督と作ったから、全く違う経験だったし、撮影セットに入ってしまうと、そこに生まれる命も別物になるし、一緒に仕事をする人も違うし、だからあらゆるものが違うの(=アート面を強調する作品があってもいいよね)。

既存の関係性を引き継ぎつつも新しい関係性を構築する(=すでにBOPでやってたこと)というのは良いことだと思うわ。思いも寄らないキャラクターが創造できることに繋がるから。

BOPはあまりにも不遇な扱いを受けているので、私は改めてnoteに書こうと思っている(撮影と衣装と美術はダントツで素晴らしいと私は評価している)が、先日の「しばらくハーレイ・クインを演じる予定はない」とロビーが発言した真意は、彼女はBOPの結果に落胆した(もしくはアメコミ映画のファンの嗜好性に自分が制作したい方向性との差分を感じた)からなのではないか、とさえ私は考えている。

だからエアーカットって言われても、彼女はそこまで個人的な思い入れは乗らないだろうね。ちなみにBOPのキャシー・ヤン監督も「思い通りにできない部分があって悔しい思いをした」という発言を残していたと私は記憶しているので、そういう意味でもますます気持ちは乗りにくいでしょう。

ただし「フィルムメイカーのビジョンの通りの作品を出そう」という風潮は、巡り巡ってヤン監督やBOP、もっと言えばこれから先の未来に制作される作品に良い影響を与えるかもしれないので、彼女が反対する理由はないのも事実だ。(もっとシンプルに冷酷に考えると、ヤン監督の知名度や実績がスナイダー監督やエアー監督のそれに比べたら低いため、騒いでくれるファンの数に差があるのは仕方がないとも言えるので)

WBはエアーカットをリリースするべきだと思う?

これってすっごく複雑な状況よね。うーんと…

エアーカットを観たいと思う?

本当なら私は参加した映画の全部のカットを観たいと思うわ!ただ、これは俳優としての意見なんだけど、プロデューサーとしてではなくてね。私が俳優として関わった作品の中には、劇場公開されるまで観なかったものも幾つかあるの。何百万人が観てるのにまだ観てないのかって言われたこともあったわ。でもプロデューサーにならない限り完成までの制作過程を何度もチェックする必要はないでしょ。だから、スーサイドスクワッドは劇場で観たのが最初ね。

彼女がBOPのプロデューサーだったことを知ってると、言葉の行間が見えてきて興味深いね。

ジェームズ・ガンのハーレイの演出で一番感銘を受けたのは?

彼は確固たる「内なる声」を持ってて、ハーレイを徹底的に予測不可能のキャラとして描いたことね。彼はR指定にすることでこの映画の様々な要素のギアを上げたわ、コメディもそうだし暴力もそう。彼の前にはハーレイも負けを認めると思うわ

「ガン監督の脳みそはハーレイ・クインよりもぶっ飛んでる」というのは最大の賛辞だと思う。

はい、チーズ!

▼まとめ:

はい。バラエティのツイートはこれで全部ですね。

ということで、エアーカットの是非を巡っては、いかに直接言及しないで肯定も否定もせずに回避するか、というテキストブックみたいな事例が集まった記事になった。(笑)

WBはエアーカットを公開するべきか?への回答
ローヴェン:今後の話し合い次第ではないか。
メイリン・ウン:儲かるんならやりゃいいじゃん!
ルーカー:観てないから分かりません。
シナ:顧客の声を聞けば自ずから決まるのではないか。
キナマン:誰だって監督のビジョンが観たいと思うものだ。
ロビー:事情が複雑になってるからね〜。

この中でまだ立場が大きくないメイリン・ウンの発言は一番自由だ。そして、それを「チャイニーズスタイルだぜ!」と豪語してるのが、現在世界中でメチャクチャやって特にアメリカでひんしゅくを買っている中国を揶揄しているようにも見えて、味わい深い。(笑)

また他の話題についてもよく見ていくことで

ローヴェン:まさに大物プロデューサー
ジュリオ・シーザー・ルイーズ:ミルトぉぉぉンっっ!(笑)
メイリン・ウン:THIS IS CHINA!(笑)
音楽担当:Twitterでコロリンコロラン(かわいい)
ルーカー:酔った老人=それすなわち老害でしかない
フィリオン:SNS時代の模範解答
シナ:SNS時代の模範解答(その2)
キナマン:誠実な青年
ロビー:ハーレイはジェームズに降参した

・美しきアメリカ(Beautiful America)という皮肉
・BOPの不振に見るアメコミ映画における女性躍進の難しさ

という興味深い側面が見えてきて楽しかった。

了。

(訂正:2021.08.26:Charles Roven氏の日本語表記をルーヴェンと記載していたが、ローヴェンに修正した)


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