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娯楽と芸術の結晶クリストファー・ノーラン

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考察するのも楽しい映画作家ですよね。
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#アインシュタイン

スナイダーカットはテネットである

断言します。2作は酷似しています。 証明するために両者の特徴を書き出します。 ⚠️ネタバレ注意:この記事は映画『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』と『TENET テネット』の結末に言及しますのでご注意ください。 ▼比較:ほら。なんと、完全に一致するではありませんか。 舞台や映像的な特徴だけでなく、音楽まで!笑 ▼舞台と仕掛け:それまでアメリカが舞台だったスナイダーカットも、世界を股にかけていたテネットも、最後はロシアの荒廃した原子力村に行きます。まるで

【オッペンハイマー】日本語字幕批評:ラストのセリフ

#ネタバレ オッペンハイマーの最後のセリフに関して、石田泰子氏の日本語字幕を批評します。 ネタバレになるので映画を観てない人は読まないでください。 ▼文脈からのアプローチ:セリフ原文:I believe we did. 直訳:私達はそれをした、と私は信じています。 字幕:我々は破壊した。 まず字幕では「I believe」の部分をゴッソリ削除していますが、これは「私は〜だと信じている」という、言っても言わなくても意味が変わらない部分(脚注*1)なので、削除してOKだ

【オッペンハイマー】もう観た人のためのあらすじ解説【復習用】

#ネタバレ 映画の内容をほぼ書き起こしているので、復習にどうぞ。 ▼はじめに:本作の映画としての特徴として、主人公だけではなくて、その対極となる人物としてストローズの視点も加えていることが挙げられます。 この映画はカラーとモノクロの《二部構成》です。 カラーがオッペンハイマー(演キリアン・マーフィー)の裁判です。 モノクロがストローズ(演ロバート・ダウニー・Jr)の裁判です。 ある些細な行き違いを発端に関係が崩壊する二人の男を、カラーとモノクロを使い分けることで、

【オッペンハイマー】徹底解説:アインシュタインとの会話

#ネタバレ 映画の核心部分ですが、あまり語られてないので、解説してみます。 映画の中でアインシュタインが出てくるシーンは4箇所ありますが、この記事ではあくまで時系列に沿って3つに分けて記載します。 ▼1943年:核の連鎖反応についてニューメキシコ州のロスアラモスのオフィスが準備できるまでカリフォルニア州バークレーのオッペンハイマーの研究室で、マンハッタン計画は進んでいました。そこでテラーが核連鎖反応理論を提唱します。すぐに数学者たちで理論が正しいのか計算に取り組みますが

【文字起こし】アメリカで大学教授に昇り詰めた日本人から見たオッペンハイマー

昨年ぐらいからネットで売れっ子になった理論物理学者・野村泰紀(カリフォルニア大学バークレー校教授)が出演しているYouTube番組(相対性理論!6歳にわかるように説明してみよう!【ReHacQvsUCバークレー】)で、映画オッペンハイマーへの言及があったので抜粋して書き起こしました。 39分ごろE=mc^2の話題から少し脱線して核分裂と核融合の解説に移り、そこから映画オッペンハイマーにつながります。 以下、書き起こし。 野村泰紀:最初は残念なことに、ポジティブなものじゃ