宇宙の観測はどこまで可能なのか?
天候が悪くなければ、昼、空を見上げれば太陽があり、また夜、空を見上げると星々ともに月を見ることができます。太陽と月は、地球からとても観測しやすい天体。とりわけ月は、その表面が肉眼で観察できる唯一の天体です。
言うまでもありませんが、月は地球の衛星で、地球に最も近い天体です。その距離は36万〜40万キロメートル。地球の直径が約1万2700キロメートルなので、地球30個分も離れている計算になります。それでもあれだけ大きく見えるのは月自体が大きいため。月の直径は約3500キロメートルで地球の約4分の1ほどの大きさがあるのです。太陽系には多くの惑星が有りそれぞれ衛星を持ちますが、それら全体の中でも5番目に大きいとされ、惑星の大きさに比較して4分の1もの大きさを持つ惑星となると月だけです。
では逆に遠くはどこまで可能なのでしょうか?
現在の宇宙物理学では、可視可能な宇宙の距離は約14ギガパーセク(465億光年)と言われていてこれは宇宙の大きさにほぼ同じです。言い換えれば、宇宙の端まで見通せるということなのですが、これはもちろん理論上の話。
天体を観測するためには様々な方法があります。たとえば宇宙線を検出し分析するなどもありますが、やはり可視光による方法が欠かせません。
可視光というとなにやら難しいですが、これは噛み砕くと「目に見える波長」ということ。つまり月を肉眼で見るのも望遠鏡で覗くのも、どちらも可視光による観測といえます。
とはいえ可視光の観測は、大気や天候の影響などによりその精度に限界がありました。そこで地上ではなく、大気の影響の少ない衛星軌道上から観測できないだろうかという発想から、1990年4月にスペースシャトル・ディスカバリー号によって宇宙望遠鏡「ハッブル」が打ち上げられました。
このハッブル宇宙望遠鏡は、打ち上げ直後はミラーの不具合によって期待される性能の極わずかしか発揮できない状態でしたが、ソフトウェアの改良やスペースシャトルなどを使って宇宙空間で修理を行ったことでその性能を回復。はるか宇宙の彼方の銀河やその深淵の超精細な撮影に成功しました。銀河の中心にブラックホールがあることや、宇宙空間に多くを占めるダークマターの存在、宇宙が膨張しているという仮説などを裏付ける観測を行いました。単体の星としては、90億光年離れた銀河に青色の巨星「イカロス」を発見していて、可視光による観測としては最長距離。そんなハッブル望遠鏡が撮影した極めてきれいな銀河や星雲の映像は、今やテレビやネットなどでも多数目にすることができます。
ちなみに可視光に限らず、人類が発見したもっとも遠い天体は、おおぐま座方向にある高赤方偏移銀河「GN-z11」で320億光年離れているそうです。
そんなハッブル望遠鏡ですが、その役目を終えるときが近づいているといいます。ハッブル望遠鏡に代わって、人類の目を務めることになるとされているのがジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡です。ノースロップ・グラマン社ほかの共同開発によるこの新しい望遠鏡はすでに製造は完成していて、打ち上げは2021年の3月31日の予定となっています(2020年1月時)。打ち上げは再三延期されているので更に先になる可能性もありますが、新たなる発見をもたらしてくれるものと期待したいですね。
(写真)ハッブル宇宙望遠鏡。1997年2月スペースシャトル ディスカバリー号より撮影