海外ドラマ『ブレイキング・バッド』で学ぶ英語セリフ解説
『ブレイキング・バッド』(Breaking Bad, 2008–2013)のセリフをピックアップして、英語の意味やニュアンスを解説します。
1. "I am the danger. A guy opens his door and gets shot, and you think that of me? No. I am the one who knocks!"
➡ 「俺が“危険”だ。ドアを開けた男が撃たれる。お前はそれを俺の仕業だと思ったのか? 違う。俺が“ノックする側”なんだ!」
解説
I am the danger.
I am ~ というシンプルな表現で「俺こそが“危険”だ」と強調している。
普通は「危険にさらされる側」だが、ここでは「危険そのもの」であると主張している。
A guy opens his door and gets shot
これはマフィアや犯罪の世界でよくあるシチュエーション。
「ドアを開けた瞬間に撃たれる(=被害者になる)」というイメージ。
I am the one who knocks!
I am the one who ~ = 「〜するのは俺だ」
「ドアを開ける側(犠牲者)」ではなく、「ノックする側(加害者)」であるという意味。
→ これは、ウォルター・ホワイト(ハイゼンベルク)がスカイラーに対して、自分が単なる犠牲者ではなく 「支配する側」 になったことを宣言する名セリフ。
→ 「ウォルターが完全に悪へと変貌した瞬間」として有名。
2. "Say my name."
➡ 「俺の名前を言え。」
解説
Say my name.
say は「言う」という動詞で、命令形になっている。
「俺の名前を言え」というシンプルな言葉だが、「俺の力を認めろ」という意味が込められている。
→ 相手が「ハイゼンベルク」と答えると、ウォルターは満足げに「You're goddamn right.(その通りだ)」と返す。
→ 「自分が業界で恐れられる存在になった」ことを証明するシーン。
→ シンプルなフレーズながら、ウォルターの圧倒的な支配力を示している。
3. "I did it for me. I liked it. I was good at it. And I was really... I was alive."
➡ 「俺は自分のためにやった。楽しかった。才能もあった。そして…生きている実感があったんだ。」
解説
I did it for me.
for me(自分のために)という部分が重要。
以前は「家族のため」と言い訳していたが、ここで初めて「自分の欲望のためだった」と認める。
I liked it.
like は「好き」という意味で、「俺はこの仕事が好きだった」と言い切っている。
I was good at it.
good at ~ =「〜が得意」。
自分が「麻薬ビジネスに向いていた」と認めている。
And I was really... I was alive.
alive = 「生きている実感がある」という意味。
退屈な化学教師としての人生ではなく、ハイゼンベルクとしての人生こそが「本当に生きている」と感じたということ。
→ これは最終話でスカイラーに向けて言う言葉。
→ 「家族のため」という言い訳を捨て、本心をさらけ出した瞬間。
→ 「ウォルター・ホワイトは悪人だったのか?」というテーマに対する答えのようなセリフ。
4. "You clearly don't know who you're talking to, so let me clue you in. I am not in danger, Skyler. I am the danger!"
➡ 「お前は今、誰と話しているのか分かっていないようだな。教えてやろう。俺は危険にさらされる側じゃない。俺が“危険”なんだ!」
解説
You clearly don’t know who you’re talking to.
clearly は「明らかに」という意味で、「お前はまったく分かっていない」と強調している。
who you’re talking to(お前が誰と話しているのか) → 「俺が何者なのか分かっていない」というニュアンス。
Let me clue you in.
clue someone in は「(重要な情報を)教える」というスラング。
「教えてやろう」という威圧的な言い方。
I am not in danger, Skyler. I am the danger!
not in danger(危険にさらされているのではない)
I am the danger!(俺こそが危険そのもの)
→ 「ウォルターがただの被害者ではなく、犯罪の世界で恐れられる存在になった」ことを表している。
→ スカイラーに「自分が普通の人間ではなくなった」ことを見せつける重要なシーン。
5. "Jesse, you asked me if I was in the meth business or the money business. Neither. I’m in the empire business."
➡ 「ジェシー、お前は俺に聞いたな。“お前は麻薬ビジネスをしてるのか、それとも金のためか”ってな。どっちでもない。俺は“帝国”を築いているんだ。」
解説
You asked me if I was in the meth business or the money business.
meth business(メスビジネス=麻薬製造業)
money business(金儲けのためのビジネス)
以前ジェシーに「どっちのためにやっているんだ?」と聞かれたことを思い出している。
Neither.
「どちらでもない」と断言。
I’m in the empire business.
empire business(帝国ビジネス) → 「俺は“王”になろうとしている」という意味。
ただ金を稼ぐのではなく、「自分の支配する巨大な組織」を作ることが目的になっている。
→ これは「ウォルターが完全に傲慢になり、金や家族ではなく“権力”を求め始めた」ことを示す重要なセリフ。
→ 普通の教師だった男が「帝国を築く男」になってしまった瞬間。