イシヤカフェとドヤリング
スタバやマクドで「ドヤリング」している人を見る度に思い出すことがある。
何年経っても忘れられない、私の頭の片隅にこびりついている衝撃の出来事。それは札幌の大通地下歩道にある、石屋製菓が運営するカフェで起きた。
カフェは分厚いホットケーキが有名でいつも混んでいた。
その日は珍しく空いていたので入り口近くの席を取り、カウンターでホットケーキとドリンクを注文。同行者と二人で待っていたら、横の席にスーツを着た若ぶった男性が腰を下ろしおもむろにノートPCを広げた。
スーツは着ているもののサラリーマンには程遠い服装。シューズは素足履き、ネクタイは緩め、髪の毛はプリン。自由な会社に勤めてられるんだなぁ、と少々羨ましくも思える。
男性はノートPCを広げスマホを置いたまま、注文カウンターに向かっていく。勿論ほかの荷物も置いたままだ。
まて、セキュリティはどうした?
というかスマホ置いてくとかどんだけチャレンジャーなんだ?
彼の席は店の入り口のすぐそば。
カウンターから一番離れているため、機器を盗まれても気づかないだろう。何か盗難防止装置を施してる様子もない。
色々とガバガバだよ。
注文を終えて戻ってきた男性はノートPCを弄って作業を始めた。盗まれなくて良かったねホント。
だが、作業している間ずっと貧乏ゆすりをして見た目にうるさい。落ち着け。
それにしてもWi-Fi環境のないこのカフェでドヤリングとは、自前の環境でも持ってるのかな。
あーもう鬱陶しい。
ふとノートPCの画面が目に入り、とてつもない衝撃を受ける。こ、これは…
ホットケーキを食べ終えた私たちは、早々にカフェを後にした。あまりにも落ち着かないし、何より笑いを堪える自信が無い。
店から離れて私は同行者に衝撃の事実を伝える。
「あの人YouTube観てた」
「観てただけ? 配信とかじゃなくて」
「観てただけ」
同行者は大爆笑。私も大爆笑。
二人の間で長いこと「イシヤカフェでドヤリングの男」として語られることに成った。
そう、彼はノートPCでYouTubeを観ていた。
ただそれだけ。
なのに何でこんなにおかしいのだろう。
のちにそのおかしさの根元にあるものを映像化した作品が現れた。「おそ松さん」である。
おそ松さん第19話「自意識ライジング」。
チョロ松が「自意識ビックバン」を起こして、スタバァ(スタバではない)で段ボールで出来たIT機器を弄りビジネスマンに成り切った話がある。
ニートだけど自意識だけは高く、実際には何も行動を起こしていないチョロ松。その行き着く果てが無意味で空虚な行動。
このエピソードを観た時、あの時のあいつだ! と確信した。
なぜ今になってこの事を思い出したかというと、隣の席のサラリーマンがノートPCを広げて何か動画を観ていたからだ。
残念なことに彼はまじめに仕事関連の勉強をしているようだったが、マクドは勉強向きの環境ではないと思う。もしかして、ほかにやる場所が無いのかなど色々思考が巡る。
もしかしたらスマホでこれを打ち込んでいた自分も、似たように思われているのかもしれないけどね。
何やらサポートをすると私の体重が増える仕組みになっているようです